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書評:ディズニーの魔法(★×2)

 そんなわけで今日は会社でお仕事してたわけですが、なんで土曜日にこんなにたくさんの人がいるんだよ状態;。や、みんな仕事好きだなぁ 確かに例年この時期は年度末進行で仕事が忙しくなるんですが、それにしたって多すぎなんですが(苦笑)。まあ 3 月いっぱいが終わればラクになるはず……と思いたい……;

 とゆーわけで、今日は先日買った本の書評を一つ。先日、ふらっと立ち寄った本屋でつい手が伸びてしまった一冊。ホントは別の本を買うつもりだったんですが;。



 これ、ディズニー映画とその元になっている童話や寓話の設定を比較しよう、という本。ご存知の方は多いと思いますが、今日、我々がよく目にしている童話やおとぎ話の類は、元となっている原典をずいぶん書き換えたものになっていることが多いんですよね。

 例えば『赤ずきん』といえば有名な童話ではありますが、もともとの原典では、赤ずきんちゃんが騙されて、おばあさんの血と肉をワインと干し肉にして食べるシーンまである。しかし時代と共に少しずつ物語は書きかえられていき、赤ずきんはオオカミのお腹から生きたまま救出されるようになり、ついに現在ではこんな姿になっちゃうほどに原典が歪められてしまっている;。その昔、ちょっと興味があってグリム童話の原典なんかを調べてみたことがあるのですが、カニバリズム(人間の肉を食べること)などの結構キツい描写がたくさん出てくるなど、とてもファンタジーとは言いがたい内容のものが多くてびっくりした記憶があります。

 でもって掲題の本は、ディズニーがいったい中世の童話にどのような改変を加えて映画を作り出していったのかを明らかにしよう、というもの。久しぶりにこの手の童話関連の本を読みましたが、いやー、なるほどそういうことなのか、と。や、つまりディズニー映画って一言で言えば、要するにディズニーによる壮大な二次創作、もっと単純に言えばアニパロなんですよ。

 本書の序章に書かれていることですが、もともとディズニーが、古典童話をリメイクすることで長編アニメーション映画を作ったのは、観客がこれらの古典童話に慣れ親しんでいたから。つまり、古典童話のネームバリューを借りている。しかし、そこに『あっと驚くような』二次創作的なアレンジを加えることによって、親子が安心して見られるアニメーション映画を作り上げている。実際、本書では原典との相違点が細かく解説されているのですが、モノによっては 180 度違うような方向転換がされているものもたくさんあるんですよね。

 例えば有名な話ですが、白雪姫の王子様は、困ったことに原典では死体愛好家。つまり、すでに死体となっている白雪姫をひと目見て惚れ込んで、それを飾っておきたいとばかりに小人たちから買い上げようとする;。あるいは白雪姫自身も、最後に后に復讐し、真っ赤に焼けた鉄の靴を履かせて処刑してしまうとかなりキツい。しかしこれではとてもファンタジーにはならないわけで、白雪姫を王子に一目ぼれさせてしまうような容姿に変え、毒リンゴを食べる前に王子を白雪姫に逢わせていたりする。そのような変更を加えていくことで、いつの間にかお話をラブロマンスに変えてしまっている。

 あるいはシンデレラの場合、原典のシンデレラは気弱で引っ込み思案で目立たない少女。要するに、継母と連れ子たちにいいようにいじめられても仕方のないような性格設定だったりする。ところがこれがディズニーだと、実は連れ子の部屋の頭上遥か高くの塔の一室に閉じ込められている。しかも彼女はこの家唯一の正当な血筋の人間、つまり不運のために不遇にあるお姫様、というのがディズニー版の設定になっている。原典では王子様の后になった後、連れ子たちが徹底的な復讐を受けてしまうけれども、ディズニー版ではなんのおとがめもなしという太っ腹仕様。

 加えて人魚姫に至ってはラストがまるっきり違う。や、なにしろディズニー版ではアリエルの恋が実ってしまって王子様と結ばれるわけですが、原典では海の泡となって消えてしまう。こうなってしまうともはや原典の影も形もないとしか言いようが;。

 けれども興味深いのは、前述したような変更には、すべてに時代背景的な理由がある、という点。そもそも昔は現代における恋愛のような感情が存在しなかったので、王子が白雪姫を『モノ』のように欲しがったのも無茶というわけではない。あるいは人魚姫にしても、人魚姫が海の泡となってしまうのは神が創ったヒエラルキーを越える禁忌(人間になりたい)を犯そうとしたからだという中世ならではの理由があるし、最後にはちゃんとオチも付いている。けれどもそうした前時代的な童話を、近代的な感性に併せて、精巧に書き換えているのがディズニー映画なんですね。

 そしてその書き換えの際に根底で一貫しているのが "dreams come true"、つまり、愛や夢がすべてに打ち勝つ、という分かりやすいテーマ。なるほど原典との比較をしてみると、それぞれの設定やストーリー展開がどのような意図を持って変更されているのかというのが非常によく分かるんですよ。本書の帯に書かれているセリフですが、結局ディズニーって、中世の古典童話をアメリカの民話にリライトしたんですね。ファンタジックに言えば「古典童話にディズニーという名の魔法をかけた」とでも言うところでしょうが、いやなるほどこれは確かに凄いなぁ、という感じ。

 今やペローやグリムの原典ではなく、ディズニー映画を下敷きにした絵本などが原作であるかのごとく世の中では扱われているわけですが、こういう研究本はなかなか面白いです。一部にちょっと無粋な憶測なんかがあって惜しい部分もあったんですが、いやはや、ついつい一気に読んじゃいましたよw。なかなか楽しかった一冊です。

投稿者 まちばりあかね☆ : 2006/3/5 01:04 | 5.DLR & WDW

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コメント

匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_^;)ありがとう。。。

投稿者 グッチ コート : 2012年11月10日 05:52

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