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や、今日は溜まった本をぼちぼち消化してたら、ちょっと昔の日経ビジネスで、行き過ぎた社内管理の話が載ってて非常に面白かったり。どんな話かというと、最近、日本版 SOX 法やら個人情報保護法やらで、とにかく企業内の管理体制の強化が問われるようになってきたんですけど、さすがにこれはやりすぎだろみたいなものが横行してる、という話。
・会社内への USB メモリの持込禁止(機密情報の持ち出し禁止のため)
・私物 PC の利用禁止(Winny などによる情報漏えい防止のため)
・会社のメールの検閲(機密情報の漏洩防止のため)
まあこの辺はよく分かるわけですが、
・トイレに離席する前には必ず机の上を整頓
・空港よろしく金属探知ゲートを通ってから会社のフロア入り
・施錠できるケースにノート PC を入れて、それを施錠できるロッカーに収納
いやそこまでするのか状態なわけですが、さらに行き過ぎるとこんなのまであるらしい。
・(本人の不注意で)ある社員が転倒骨折したら、正しい歩き方に関する指導があった
さすがにこれはネタじゃないかと思ったんですが、昨今の過剰な管理主義を鑑みるとあながちネタとも言い切れないところが怖い。いや事実だったらどこの笑い話ですかと言いたくなるような話ですが、ここまで行かなくても名刺などの個人情報の取り扱いについては多少うるさいルールがどこの会社にでもあるでしょう。
なぜこうも管理主義がエスカレートしてしまうのか? 日経ビジネスでは、それはルール作りが目的化してしまうからだ、と説明していましたが、この説明だけだとちょっと粗っぽくて、もう少し突っ込んで考える必要があるんじゃないかと思うんですよね。
ちょっと話が逸れますが、その昔、吉野家の社長さんがアメリカ産牛肉の輸入に関して、こんな名言を言ってた記憶があります。
「安全と安心は違う」
(とりあえず例えの良し悪しは横に置いておきますが)アメリカの牛肉だって、大半は大丈夫なんですよ。問題なのは、だからといって全部が全部大丈夫なわけではない、ということ。食品を食べる以上ある程度のリスクはつきものですが、そのリスクと検査コストのトレードオフによって、『このぐらいの確率で大丈夫』という妥当な落としどころを決め、それをもって安全とするんですよね。本来、安全というのはなにもかも全部が大丈夫、という意味ではなくて、ある一定の確率以下にリスクが押さえ込まれている状態のことを言うんですよね。
これに対して消費者が感じる「安心」というのは心理的なものだから、(それが天文学的な低確率であったとしても)大丈夫じゃないものがひとつでもあると簡単に損なわれてしまう。けれども、それはコストに見合わない過剰品質である、ということも忘れちゃいけないんですよ。食べ物を食べる以上リスクはあるわけで、取り立てて狂牛病だけバカみたいに騒ぎ立てるのは、心理的には分かるけれども理論的には正しくないんですよね。
で、振り返って考えてみると、組織においてトラブルがない、ミスがないというのは、実はめちゃめちゃリスキーな状態なはずなんですよ。なぜって、そんなことあり得ないから。ルールを増やしたところで現場の人間がそんなものを全部覚えていられるはずもない。実際、ルールはたくさんあるけれども現場では USB メモリは持ち込み放題、個人情報も逃げ道ばっかりで、実態として全然ルールが守られてない、なんてことはよくある話。実際には、ミスゼロ = ミスがあっても隠蔽されている状態、と考えるのが適切なんですよね。
本来、人間はミスを犯すものだし、大人数の企業であればどうしても「ろくでもない輩」が紛れ込んでしまうもの。そうした回避が難しいミスや、ごく一部の人たちがしでかすトラブルを、ルールや規則によって 100 % 回避することは原理的にできないんですよ。にもかかわらずそれをゼロに押さえ込もうとすると、非現実的なルールが大量に積み上げられてしまうことになる。さらに悪いことに、こういう状況になると現場の人間も罰則を恐れてミスを隠蔽しようとしてしまう。
思うに、こういうときに現場で運用できないようなルールを作った人が罰せられないことが結構大問題じゃないかと思うんですよね。実際にこうしたルールがあったにもかかわらず情報漏えいが起きた、というときに罰せられるのは、おそらくルールを作った人ではない。ルールを作った人は、「こういうルールがあったにもかかわらず、守らなかったヤツが悪い」と言う。でもそもそも現場が守れないようなルールを作ったのが悪いんじゃないか? というツッコミは、本来当然あってしかるべきなんじゃないか、と。
こうしたことを鑑みれば、本来はこういうアプローチが正しいはず。
・最小限のルールで最大の効果を上げるようなピンポイントのルールを作る。
・仮にミスが発覚しても、それがある一定以下(管理しきい値以下)の場合には評価上不問とする。
本来、こういうのはリスクとコストのトレードオフで、想定されるリスクによる損害の大きさに応じてかけられるコストなども変わってくる。けれどもいずれにせよ科学的(統計的)なアプローチは必須……なのですが、意外にこうした取り組みは工場の生産現場などにおける品質管理に比べるとかなり遅れている、という印象があります。もちろんそんなに話が単純でないことは私も百も承知しているのですが、少しでもそういう方向に近づけていかないと、現場が疲弊するだけなんじゃないかなぁと思う今日この頃。……や、うちの会社も最近うるさくて面倒になりつつ^^。
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※あくまでも個人意見です。特に、小さなお子様をお持ちの親御さんは気分を害する方がいらっしゃるかもしれませんが、ご容赦ください。
「安全と安心」の話は私のように小児救急医療に携わっている者にとって、常日頃から問題になっております。
@医療そのものに絶対安全がないこと、
A患者の症状は千差万別で医師はそれに対して経験則(自己体験および自己研鑽で蓄えた知識)で対応していること、
この認識は医療側と患者側で温度差があるようです。
何か事故(安全が損なわれること)が起こった場合、それが仮に稀な事態であってもマスコミがセンセーショナルに取り上げ患者(および保護者)の不安をかきたて、医療側に過度なプレッシャーを与えます。
これによって、小児救急医療が萎縮し、かえって家族に対する満足(安心)が提供できなくなるというジレンマに陥っています。
#ある市は事故がきっかけとなって夜間診療所が閉鎖されました。
もちろん、現在の小児救急医療存亡の危機はこれだけに起因するものではありませんが。
究極の安全と安心が要求される分野だけに、医療側だけでなくいろいろな方々にこの問題を認識していただけると幸いです。
医療側がさまざまな事例を吸収して少しでも親御さんに安心を提供するのが基本ではありますが。
ということで、長文失礼。
以上、救急当番勤務中の恥医者でした。幼女診に行って来よ。(ぉ
投稿者 恥めてのお医者さん : 2006年5月13日 10:21
んー、権利ばかり主張する世の中であればこそ発生する問題、なのだと思います。
本来、コストに対する正当な対価という経済原則があり、その上に思いやりや善意といった心理的要素がプラスされることによって初めて適切なサービスが提供されるものだと思うのですが、心理的要素を一切無視して自分の権利を過剰に要求するからこそこういう問題が発生するのではないか、と。
結局、そうなると『ドライにやるしかない』わけで、具体例として取り上げられている夜間診療所の閉鎖で不利益を被るとか、そういう状況になって初めて気付……けないんだろうな、こういう人たちは;。単に矛先が行政とかに変わるだけかもしれず;。
ただその一方で思うことですが、こうなってしまうのも世の中の流れ的にやむを得ないのだろう、とも思います。
日本のアメリカ化が進む、とはよく言われることですが、「ドライにならざるを得ない層」がこれから増えてくることはまず間違いないわけで。寂しい話ですが。
そういう状況下において、「みんなの意識を変える」という解決の選択肢はないんだろうなぁ、と私は思ってます。だって、それが一番現実的にあり得なさそうな解決策なわけですし;。
私は意識的に「相手が善意を尽くし、悪意がない限りは、問題が発生しても怒らない」ようにしてますが、なかなか難しい話ではあります。個々人はともかくも、マクロレベルだとこの問題って行き着くところ、経済原理を持ち出さない限り決着は付かないのかもしれません。
……まあ、そういう自分が最も『わがまま』(=自己中)なので、この問題に関して偉そうに言うなよ状態ではあるのですが;;。
投稿者 まちばりあかね☆ : 2006年5月14日 14:05
突然訪問します失礼しました。あなたのブログはとてもすばらしいです、本当に感心しました!
投稿者 グッチ バッグ アウトレット : 2012年11月10日 05:55
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投稿者 bad credit loans : 2013年4月7日 10:47
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投稿者 プラダ バッグ : 2013年7月7日 23:31