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書評:年収 300 万円時代を生き抜く経済学

 というわけで今日はこんな本の書評を書いてみたり。



 いや私も今でこそ給料はかなりもらってますが、正直なところ将来に渡って今の給与水準が続くとは全く思えない上に医者なんかと違って安定してるわけでもなし、10 年後とか 20 年後とかにいったいどうなっているのかと考えるとめっちゃ不安になるんですよね。や、もちろん今でも赤字になるわけでは全くないのですが、一人暮らしって何もしてなくても生活費が固定的にぼろぼろ出ていくわけで(← 当たり前;)、やっぱり生活するのは何かと物入りだなぁと思う今日この頃。半年ぐらいで引越し出費前の貯蓄水準まで巻き戻せたものの、「このペースの貯蓄で将来的に果たしていいのか?」とか考え出すとキリがない;。結局のところ、一番大切なのは『身の丈にあった生活をする』(=支出が膨らまない生活をする)ことなのは間違いないわけで、その辺で何かヒントが得られるかな? と思って本屋で手に取ってみた本だったり。

 この本、書いてあることはものすごく明瞭。まず、世界全体を見たときの平均世帯年収は 300〜400 万円。つまり、今の日本人の給与水準は高すぎる。小泉内閣がやったことはアメリカ型社会への構造転換だから、おそらく今後の日本の給与水準は以下の 3 つに階層化する(しかも各層は固定化して階層間の移動はますます難しくなる)、というんですね。

 @ 1 億円以上稼ぐような一部の大金持ち
 A 年収 300 万円前後の世界標準の所得層
 B 100 万円台のフリーター層

 で、さすがにBだと生活できないからAになろうよ、と言ってるわけですが、この中で@の人たちしか幸せになれないのかというとそんなことはなくて、実際、ヨーロッパなどではAの人たちが悠々自適に幸せに生きているし、江戸時代などを振り返れば多くの人たちは幸せだった。にもかかわらず、今の時代になぜAの人たちが幸せになれないのかというと、一つは身の丈にあった生活をしていないこと、そしてもう一つが、人生で楽しめる「自分にとっての何か」を見つけていないことだ、っていうんですよね。

 特に前者の指摘は非常に興味深くて、日本は物価が高いから、給与が高くても豊かさはないんだという言論に対して、それは違う、とはっきり書いている点。日本の物価が高いのは、たいていの場合は高いモノを消費しているから(=ぜいたく品を当たり前のように享受しているから)だ、というんですよ。日本であっても、中国製の衣服を着て、アジアの野菜とオーストラリアの牛肉を食べてれば生活費なんてそれほどかからない。世の中にある「モノ」には大きな価格差があるけれど、安い方を買っても価格差ほどの品質差はない、というんですね。(グローバル化というのは全世界で同一のものが同一コストで入手できるようになることだ、という指摘は目から鱗。なるほど。)

 ではなぜこれが出来ないのかというと、それは要するに生活に対するつまらないプライド(見栄)があるから。それを気にしなくなるために最も良い方法はなにかというと、自分が本当に楽しめる(打ち込める)何かを作ることだ、というんですね。実際、何かを目指して頑張ってる人は、毎日カップラーメンでも文句なんか言わないじゃないか、と。そういうものがない人は、つまらないところで張り合って、それが無意味なプライドになっちゃうんだ、と。

 いやー、これ、すごいよく分かる感覚ですね。だってこれ、アニヲタグッズを買うために食費や生活費を切り詰めるという感覚そのものじゃないですか(爆)。豪勢な家に住む、カッコいい車に乗る、おしゃれな服を着る、おいしいものを食べる。これらは多くの人にとっては当たり前の欲だと思うんですが、こういうのってエスカレートしだすと本気でキリがない。あんまり切り詰めすぎるのもまた問題でしょうが、どっかで妥協しないといくらでも欲が膨らんでしまい、そして一度欲が膨らんでしまうと、それを戻すのがとてつもなく難しくなる。収入が増えたのに合わせて支出を増やすことって、非常に危険なことなんですよね。(概してそういうことをやってしまう人は多いですが;。) だから、生活水準を上げすぎないようにする(身の丈にあったものにする、場合によっては下げる)ことがものすごく重要だ、というんですよ。

 や、この blog を見てれば明らかなように私は結構な浪費家ですが、そうはいってもヲタクって実にお金がかからない趣味でもあるんですよね;。いやもちろんヲタクだって DVD とかを買い漁ればそれなりにお金かかるんでしょうけど、でも、車、ゴルフ、習い事、アウトドア、インテリアなどの一般的なハイソな大人の趣味に比べたら圧倒的に低コスト。だって日帰りスキーに一回行くお金で、コミックスなら数十冊は軽く買えてしまう。たまに会社の同僚とかに、数十万円のソファーを買ったとかいう話を聞きますが、正直言って絶対額の高さに本気でぎょっとしてしまうんですよ。だってそんなの 5000 円のチーデークッションでいいじゃん、みたいな(違)。でもおそらく一般の人は、そんな安っぽい生活には耐えられないんじゃないか、ヲタでもない限りそういう生活には苦痛を覚えるんじゃないか、とも思うんですよね。

 ……と、そんなことを思って読んでたら、ちょっとマテ、この人も十分なヲタじゃないか、と;。や、実はこの著者の人、ミニカーや食玩のコレクターらしくて、こんなことを書いてるんですよ。

 もちろん、集めているのは B 級品ばかりだから、コレクター仲間にまず金持ちはいない。
 そして、私が「友情」を感じるのは、そうした人たちなのである。


 思わず苦笑。実はこの著者の人ってかなりのお金持ちで、年収だけ見たらとんでもない勝ち組高給取りの一人なんですが、にもかかわらず生活費が全くかさまないのは要するにヲタだからじゃないのか、と;。いやー……なんかこれ読んで妙に安心しちゃったり。ヲタはどこまで行ってもヲタなのだ、みたいな(ぉ)。(← すいません、めっちゃ失礼な発言ではありますが^^。でもこの人が言うように、いわゆる勝ち組お金持ちの人との会話が噛み合わない、というのはものすごくよく分かる感覚;。)

 確かにお金って天下のまわりもので、「ないと困るもの」で「いくらあっても困らないもの」の類ではある。けれども仮にお金があったとしても、生き方と合わせて考えないと、ホントに無用の長物になっちゃうものだよなぁ、とは思います。行き着くところ、生き方の話そのものと言えばそのとおりですけど、身の丈に合った生活、っていうのはものすごく重要なこと。正直、今は身の丈以上だと思ってるだけに、生活感覚が緩まないようにしなくちゃなぁ、と再実感させてくれる一冊ですね。

 しかしその昔、一生を終えるにはどのぐらいのコストが必要になるのか(=どれぐらいの貯蓄が必要になるのか)と計算してみようかと思ったんですが、結局ライフプランがないとまるで算出できないことに気付いて諦めたんですよね。普段の日常生活では、

 @ 無駄な出費は避ける(=積みゲーは避ける)
 A 大きな支出は避ける(=セレブな趣味は持たない)
 B 勉強のための支出は惜しまない(=自分への投資は別枠扱い)
 C 出費はランニングコストベースで考える(=単価が安くても利用頻度が低いものは割高とみなす)

 あたりには注意してるんですが、じゃあそういう生活で貯蓄は十分なのか? というところになるとさっぱり見当がつかない、というのが正直なところ。まあ幸い実家がごく普通の家だったのでセレブな趣味は一切ないし(やりたいとも思わない;)、一人身ならどうにでも収支は合わせられるんじゃないか? と思ったりもしますが、でも実際問題としてせめて路頭には迷わずに済ませたいものです;。

# お金の計算が苦手な人って、どこまで行っても苦手なのかもしれない、と思う今日この頃;。

投稿者 まちばりあかね☆ : 2006/5/17 01:49 | 4.雑学&雑感

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