そんなわけでかなり時間かかってしまったけど、ようやく全話鑑賞終わり。第 4 クールに入ってからはたまに泣きのツボをぷちっと押されてしまうので外出先ではとても見られず。ただでさえ挙動不審者なのにこれ以上不審な挙動してどうするよ? 状態;。
そんなわけで、ざっと感想をまとめてみたり。以下ネタバレありですが、ちょい長いし今さらなので反転なしで。
「フルムーンは、わたしとタクトが一緒じゃなきゃ見られない夢。
フルムーンのライブは、わたしたちが生きようって思ってなくちゃライブじゃないよ。」
「タクト、一緒に生きよう。明日を、新しいわたしたちの最初の日にしよう。」
作品構造はギャルゲによくある死にゲーそのまんまなんですが、第 3 クールに入ってから完全な詰め将棋状態で、ラスト 3 話は久しぶりに神降臨な出来の作品を見た、という印象。TV 版 AIR #11 以来は今ひとつヒットがなかったんですが、いやはやこれはとんでもなくよく出来てますねぇ。原作なんか遥かに超えた素晴らしい出来で、終幕の美しさは神がかって見えるほど。#50〜#52 は泣きツボ押されっぱなし;。上のセリフには思いっきりノックアウトされてしまったり。
まだ感動覚めやらぬ状態なのでどうまとめてよいのか分からない、というのが正直なとこなんですが、少なくとも言えることは、原作者である種村さん自身がまとめきれなかった、「生きる」というテーマにひとつの解を見つけてますね。究極的には CLANNAD なんかのテーマとも完全に重なってるんですが、この作品の肝、それは一言で言えば『無私の愛』。自分を捨てても相手のことを想い、相手のために一番のことをしてあげること、それがこの作品の最後まで貫かれてますね。タクトにしろめろこにしろ、自分のことよりも相手のことを常に先に考えている。だから各キャラが輝いて見える。
ただ、無私の愛といっても、なぜ相手に対してそこまでのことができるのか?
もちろん「好きだから」、と言ってしまえばその通りなんですが、それに加えて、相手と共有した記憶、思い出があるから。共に過ごし、いろんなものを経験し、記憶や思い出を共有し、積み重ねていくこと。端的に言えば『二人の絆を作り上げていく』ことが、『一緒に生きていく』ということに他ならないんですよね。
「それはね……英知君のことを忘れちゃうということじゃ、ぜんぜんないんだよ。
生きてるんだもん。新しい恋だって始まる。それが、生きるってこと。
満月が今しなくちゃいけないことは、本当の気持ちを伝えること。
満月が本当のことを言えば、タクトだってきっと分かってくれるよ。」
この作品では、英知君のことを大好きだった満月が、いつの間にかタクトのことを好きになっていくわけですが、それは決して浮気でもなければ、英知のことを忘れるということでもない。生きて共に歩んでいくことで、新しい思い出が作られていき、そこに二人の絆ができていく。だから満月は言うんですよね。フルムーンは、自分とタクトが一緒じゃなきゃ見られなかった夢だ、と。端的に言えば、フルムーンというのは、二人がこの一年間で積み上げてきた『絆』そのものなんですね。
原作ではここのところがテーマ的に消化しきれていなかった上に、満月がかなり頭の回る悪女設定になっているおかげで、ともすると単に満月が「いなくなった英知くんよりも、隣の生きてるタクトくんに都合良く乗り換えた」とすら取れる展開になっちゃってる。そこには自省もなければ、自分なりにそのことを消化している様子も伺えなくて、この辺がいかにも女性らしい「going my way」(=私が女王様(^^;))な作りで気持ち悪かったんですよ。でも、このアニメ版ではここがきっちり消化できている。しかもこの作品で最も重要な鍵である、「生きる」というテーマと、それを支える「思い出」という要素を絡めた形で。そのポイントをきっちり押さえているからこそ、このセリフが非常に輝いて聞こえるんですよね。
「オレは……オレは……誰なんだ?」
「あなたはね……タクトって言うのよ……」
「タクト……なんで……ここにいるんだ?」
「……それはね……新しい思い出を……作るためにいるんだよ……」
「新しい……思い出……」
ラストですべてのキャラにちゃんと見せ場を作ってくれるあたりはさすがでしたが、中でもめろこがキャラとしてめちゃめちゃ輝いてましたね。彼女は結局天使になったわけですが、でもそれはもしかしたら死神でいるよりも辛いことかもしれない。なぜかというと、めろこは最後に満月とタクトの恋の後押しをするわけですが、それはめろこにとっての最大のやせ我慢と言えるんじゃないか、と。自分が悲しみに落ちても、なお優しさを知り、相手の幸せを願う天使。ややきれいごとすぎる感もありますが、この作品のテーマを最もよく消化していたサブキャラだったように思いますし、この辺のビターさがあるからこそ、この最終回はなお一層輝いて見えるんでしょうね。(そういやぴたテンも似たようなビターエンドが GJ! でした。)
最後まで通して見てみると、原作の大局観のなさを引きずってしまった面もあるとはいえ、終盤は見事な出来。加えて、満月よりもむしろ周辺キャラの方が光輝いていたように思える作品でした。タクトもそうですが、まどかやめろこ、お婆ちゃんなどにもそれぞれのドラマがある。月は光を受けて輝くとは言うけれど、図らずもそんな作品になっていた気がします。
それにしても第 1, 2 クールを見てるときは本気でつらかったんですが、第 3 クール以降の巻き返しぶりはホントに見事。CD でも買って来ようかなぁ……。今さらだけど;。
でもって、そんな話をでじくま氏にしてみたら、どうも彼はかつて本放送時に一度見たことがあるらしい。
「あー、それ一度見たことがあるんですよね。結構良かった記憶があるんですよ。
確か土曜日の朝にやってた番組で、変身して歌を歌って戦うやつですよね?」
……いやそれは ぴちぴちぴっち だろ、間違いなく;。