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そんなわけでいよいよ大詰めの姉妹攻略。や、ホントはショートケーキのイチゴは後に残しておきたい人なんですが、おそらく設定関連は音姉の方にまとまってる雰囲気なので由夢の方から攻略。で、プレイしてみたわけですが……
や、やられた……;
くっ、こんなミエミエのシナリオなのに撃沈させられてしまうとは;;。> エピローグ
というかですね、もう今までに何百回この手のシナリオをプレイしたか分からないのに、結局いっつもこの手のシナリオに毎回毎回やられてるような気がするワナ;。……まあもういいんですけどね、どーせ私はこういう少女趣味丸出しなシナリオ大好きですから;。(← 開き直り)
や、以前のエントリにも書きましたが、由夢って音夢の後継キャラで、要するに「意地っ張りで素直になれない」タイプのベタな妹キャラ。外では清楚な女の子、けれども自宅というナワバリに帰ってきたとたんに黒ぶちメガネにジャージというヲタ少女ルックスに大変身;という、まあよくあるタイプのキャラ造詣。
# もっとも元々の作りがかわいいのでジャージ姿すらもかわいく見えるのはご愛嬌;。
# や、かわいい子は何着せてもかわいいのですよ;;。(← 暴言)
けれどもこのシナリオの一番の魅力は、頭(理性)で理解していても、感情がついていかない由夢の様子がこれでもかというぐらい描き込まれているところ、でしょうね。や、他のシナリオでもななかや小恋など断片的にはそういう姿が描かれていたのですが、このシナリオはその部分にきっちりと焦点を当てて描き込んでいるので、由夢の感情や心の動きがものすごく細やかに伝わってくるんですよ。
以下、思いっきりネタバレなので、プレイする気がある人は読まない方がいいです。
というかこのシナリオ、ネタが分かってしまうと魅力が半減するし、一番おいしいルートなわけですし;。
このシナリオの上手かったところは、由夢の魔法使いとしての能力(予知夢)の使い方。普通、予知夢というのは見えない未来に対する漠然とした不安感を描写するのに使われるものですが、この作品の場合には、見えてしまっている未来に対する絶望として描かれている。それだけに痛さが倍増して伝わってくるんですよ。
いずれ義之が(桜の魔法の消滅によって)消え去ってしまう未来を夢として見てしまったが故に、義之と恋人になることを避けようとする由夢。不幸な未来、それは彼女にとって予感ではなく確信。けれども、頭でわかっていても、心と気持ちはそう動いてくれない。由夢は、音姉やクラスメイトの少女たちに対して強烈なコンプレックスや嫉妬を抱いてしまう。
「……また、お姉ちゃん、か。いつも、そうやってお姉ちゃんばっかり……」
「もういいよ。結局兄さんはわたしよりもお姉ちゃんが大切だってことじゃない。」
「わかってるよ。そんなの、わたしだってわかってる。
兄さんが間違ってないって、そんなのわかるもん!」
普通、こういう意地っ張りな嫉妬系の妹キャラって、天邪鬼な様子が萌え要素(かわいらしさ)として描かれるものですが、このシナリオの場合は違う。むしろ由夢の場合には、その天邪鬼な様子やちょっとしたセリフの節々から、彼女の想いの深さゆえの苦しみや辛さが伝わってきてしまうんですよね。
「兄さんには、頼りたくないんです。だから、兄さんはだめ。」
「喧嘩……はしてないですよ。
ただ、そろそろわたしも兄離れをしないとって、ちょっとそう思って。
いつまでも兄さんと一緒に居れるわけじゃないので。
兄さんに頼るのはもうやめよう。そう決めたんです。」
天邪鬼な言葉を言ってみたり、あるいは自分の心に反する言葉を敢えて口にしてみたり、由夢はあの手この手で自分を誤魔化して、義之への思いを断ち切ろうとする。けれども、義之の方が由夢に歩み寄ってしまうことで、二人は後戻りできなくなってしまう。
「でも、一箇所だけ訂正したいところがあるんだよな。」
言葉を発する。今までの関係と決別するための言葉を。
「先に起こることなんてわからないし、今から心配しててもしょうがないから。
俺にできることは、そんな状況になった場合、負けないように頑張ることだけだよ。」
後戻りできなくなった以上、この二人に出来ることはただ一つ、覚悟を決めて幸せになるように頑張ることだけ。けれども、桜の木の魔法が失われていくにつれ、義之は人々の記憶と認識から消滅していくことになる。残された時間はせいぜい数日。覚悟の度合いという意味で言えば、義之に比べて圧倒的に由夢の方が覚悟を決めていて、義之の前では絶対に泣かない覚悟を決めている。
俺の表情からなにか感じ取るものがあったのか、由夢が寂しそうな笑みを浮かべた。
「兄さん、笑顔だよ。」
「え?」
「恋人同士でいるときは笑顔じゃなきゃ。幸せなんだから。楽しい日常なんだから。
だから、笑顔でいないとダメだよ。」
にへりと笑顔をつくる由夢。
「幸せな時間を過ごす為に、わたしは兄さんと付き合うことにしたんだから。
後悔しない時間を過ごす為に、わたしは兄さんのそばにいることにしたんだから。
だから、笑顔でいてよ。今までどおり、普通でいてよ。兄さんが消えてしまう、そのときまで……
わたしはそれだけで十分に幸せだから。」
このシナリオでノックアウトされてしまったのは、この辺のシーンなんですよね。本人が消え去ってしまうという設定は、古くは ONE の時代からいくらでもある。けれどもこの由夢シナリオで抜群に上手かったのは、予知夢の使い方なんですよ。当然、このシナリオは主人公である義之が消滅するところでエンディングとなる。けれども、その後に延々と由夢が苦しむ姿を描くのはあまりに上手くない。そこで予知夢という形で、義之が消えてしまった後の由夢の苦しみの時間を先取りして描くことによって、エンディング後に彼女が味わうことになる由夢の辛さと、今現在彼女が味わっている未来への絶望感の両方を、見事に描いてるんですよ。
「なにしてるんだろ、わたし」
今にも泣き出しそうな声。
「こんなところで待ってたってしょうがないのに」
後者の方を見る目には涙が溜まっていく。
「もう、ここで待ってても会えるはずなんてないのに。もう、兄さんはいないのに。わかってたことなのに。
こうなること。必ず別れが来るってこと。ひとりぼっちになるってわかってた。なのに……」
嗚咽が零れそうになって、ぎゅっと唇をかみ締める。
喉を絞めるようにして、でも、鼻につんと痛みが走る。
涙を堪えることなんてできなかった。
他人の足音に期待してしまう。そこに兄さんの笑顔があることを期待してしまう。
お待たせって笑顔で駆けて来る。
わたしは遅いって文句を言って、
兄さんは困ったような、嬉しそうな微妙な表情でわたしに謝るのだ。
そんな光景を期待して、
裏切られて。
ひとりで。
それでも、なにかにすがりつきたくて、
こうやって待ち続けてしまう。
「……寂しいよ、兄さん……ひとりは嫌だよ……」
でも、こうしたシーンを単に積み重ねるだけでは由夢の辛さはまだ断片的にしか伝わってこない。実は私が完全にノックアウトされたのは、上のセリフじゃなくて、
「兄さんが食べてるペパーミントのやつも食べてみたい。」
というセリフだったんですよね。このシーンって、最初に見たときにはホントになんということのない、ベタないちゃつき予知夢のようにしか見えなかった。けれども、このシーンは義之が消えていく最後の一日デートのものなんですよ。この言葉をいったい由夢がどんな気持ちで語っていたのか。そのことに気付いた瞬間に、自分の考えの浅はかさを思い知らされることになるんですよ。どうしてあのとき、このシーンをただ二人がベタベタといちゃついている幸せ一色の未来だと思ったんだろうか、と。そしてなんでそんな単純なことに気付かなかったんだろうか、と……激しく後悔させられるんですよね;。(← これでノックアウトされた;)
義之が消えていく前に見せた、強烈なまでの由夢の強さ。そして、義之が消えていってしまった後に見せた、猛烈なまでの由夢の弱さ。それは由夢の二つの顔。恋する少女としての強さと、恋する少女としての弱さ。その両面をものすごくうまく描いているのが、このシナリオの最大の魅力だと思うんですよ。
「わたしはね、ずっと諦めてたの。
だって、わたしの望みは叶わないんだもん。
それがわかってたから、わたしは諦めるしかなかったの。
……兄さんのせいだよ?
せっかく我慢していたのに……ずっとウソついてきたのに……
幸せになったら後悔するってわかってたから。
そんなの……痛いから。」
だから……さよならだね、兄さん。」
最大のネタバレを避けるために敢えて書きませんが(といってもちょっと考えれば想像ついてしまいますが;)、エピローグも上手いとしか言いようがなくて、やってくれるじゃん曲芸団 としか言いようがなかったり。や、前作 D.C. では音夢の方が消えていったわけですが、今回は主人公の側が消え去っていく、その設定を見事に使った恋愛ドラマに仕上げてくれたなぁと思います。というか、素直に参りました;。決してシナリオ自体に目新しさがあるわけではないのに、ここまで見事に『魅せて』くれたことにはホントに驚きました。いやはや、凄いです。
まーそれにしてもなんというか、ベタベタな少女趣味の恋愛モノなシナリオというか;。や、由夢のキャラ造詣って典型的な妹キャラではありますが、ちょっと古いタイプ。自分はこの手の話はかなり好きですが、おそらく受け付けない人にはからっきし NG かもしれないんじゃないかと思います。前作以上に万人にはお薦めしにくい作品のような気もします。
ところで関係ないですが、前作から 53 年も経ってるのに全く変わっていないリビング & キッチンの朝倉家に笑いそうになったのは私だけですか^^。ここだけまるで昔と変わってないよ、みたいな^^。
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