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半分の月がのぼる空 ネタバレインプレ

 うわわ、あぶなかったでありますよ、隊長;。実は今日はスキーに行こうかどうしようか迷って結局やめたんですが、なんでも強風のせいでガーラ湯沢のゴンドラが止まってしまったんだとか。行ってたらなにげにえらい目に遭っていた可能性大だったかも。しかしガーラ湯沢のあのゴンドラでこんなことが起こるとはちょっと驚きだったり。まだ取り残されている方もいるようですが、早く帰れるといいですね。

 そんなわけで WOWOW で放映されてた「半分の月がのぼる空」、取りだめしておいた分を一気鑑賞。超ベタな作りではあるんですが予想外にいい出来で、素直に心に響く一作ですね、これ。

 ざっとあらすじをまとめると、突然の肝炎で入院することになった裕一が、東病棟に入院している心臓病を患う少女の里香と出会って恋に落ちていく、という典型的なボーイミーツガール話。作品の最初では生きる気力を失っているかのような二人が、恋愛を通して少しずつ強くなっていく様子が描かれている。手術を受けなければ回復の見込みはない里香、そして里香に惹かれて周りがどんどん見えなくなっていく裕一。裕一と共に歩んでいくために、里香はついに意を決して手術を受ける。しかし……というストーリーライン。

 最初の数話を見ているときには、やりすぎなほどの裕一の青さが鼻についたものですが、逆にそういう青くささこそがこの作品の魅力にもなってますね。以下、軽くネタバレで。(← Ctrl + A でまとめて反転)

 この作品の展開の軸になっているものは何かといわれたら、それはおそらく『生きる気力と心の支え』ではないかと。「命を懸けて、君のものになる。」というのは里香が物語に託して裕一に贈った言葉でしたが、なぜ彼女は命を懸けた手術に望む気になったのか。そばにいてくれる人のために頑張れる、頑張ろう。言葉にするとめちゃめちゃチープで陳腐。なのに、そういうベタな内容がよく描き込まれている作品だったと思います。

 でも、それだけで終わらなかったのがこの作品のいいところでしたね。結局、最終話では里香の手術は成功したけれども、その先行きは長くなかった。つまり、すぐさまバッドエンドというわけではないけれど、バッドエンドに至ることが確定したような状態。これこそが、この作品の一番の肝になっているんですよね。

 里香の主治医である夏目は、自らの奥さんを里香と同じような心臓病で亡くしているわけですが、そんな夏目が、元ヤンキーの看護婦の谷崎にグチるシーンが、この作品の全てを表している。

「出世の道を捨て、その子と生きる道を選んだが……結局なにもかも消えちまった……
 戎崎(裕一)もそっくり同じ目に遭うことになる。里香の病気に完治はない。
 どんな犠牲を払っても、いつかすべて消えちまうんだ……」
「ふっ……それがなんだよ?」
「?」
「祐一にとっちゃそうだろうけど、里香にとっては違うんだよ。
 いつか死んじゃうのかもしれない。
 だけど、ろくに笑わないまま死ぬのと、今みたいに笑いながら死ぬのと、どっちが幸せだと思う?
 女ってのは、例え短くても……いや、短いからこそ、
 思いっきり幸せで、思いっきり笑える瞬間があれば、それだけでなんか納得できるんだよ。
 里香は、今、幸せだよ。」

「……残される方はどうなるんだよ?」
「……耐えるんだね。」
「ちっ……あっさり言いやがって。」
「じゃあ、一番大切だったのは何? 自分の幸せ? それとも大切な人の幸せ?」

「ホント、男ってバカだよ。自分で気付かないうちに、すべてを手に入れてるのにさ……」

 結局、裕一は先行きが短いと知りながらも、彼女の幸せを願って、里香の元へと戻っていく。その裕一がいずれ辿り着く先は、『生きる気力と心の支え』である里香を失うことでしかない。それは絶望以外のなにものでもないけれども、それでも裕一はそこに戻っていく。

 傍から見ると、裕一の選択は賢いとは言い難いように思えるし、だからこそ周囲はそれを止めようとする。けれどもそれは違う、というのがこの作品の主張なんですよね。この作品では、たまたま里香が心臓病を患っているからこそ「短い」と考えてしまうけれども、どんな人間だって病に伏せるし、死から逃れることはできない。「長い」か「短い」かでは、人の幸せを測ることなんてできないんですよね。そうではなく、谷崎の言うように、たとえ一瞬であっても、二人の間に思いっきり幸せで、思いっきり笑える瞬間があったとしたら、それほど幸せなことはない。だから、そんな瞬間を作るために里香の元に戻った裕一がこれから紡ぐのは、きっと、儚いけれども幸せな、愛の物語そのものなんですよね。

 それを踏まえると、ラストのこの決めゼリフは実に見事。砲台山の頂上に登って、二人で空の半月を見上げて、裕一はこう語るんですよね。

 そのとき、空には半分の月が輝いていた。
 満月のように明るくはないし、世界は闇に溶けているけど、
 でも確実に、今を照らして、輝いていた。


 半分の月。それは端的に言えば、辛さも不幸もある現実の象徴。けれども、そんな現実にも確かに幸せがあり、輝きがある。砲台山の頂上の二人を照らすのが「半分の月」である、というのが、ものすごく象徴的なシーンなんですよね。

 このテーマ設定は某ゲームと思いっきり被ってるんですが、それをおしつけがましくなく、すっと描いてきたあたりは非常に上手かったです。

 12 話ぐらいはある 1 クールものの作品が多い中、なぜか 6 話しかない作品でしたが(……だから「半分の月」なのか?;)、テーマ的に重要なポイントをきっちり押さえつつも無駄のない作りになっていて、ちょうどよい尺だったように思います。原作は 6 巻あるそうですが、もし原作通りにやっていたら少し中だるみしちゃっていたかもしれないですね。いやはや、なかなか面白い作品でした。

投稿者 まちばりあかね☆ : 2006/2/26 02:20 | 3.アニメ&コミックス

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