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書評:絶対可憐チルドレン

 何が悲しくて日曜日にお仕事……;。おかげでまだ 4 月 2 週目だというのにアニメ消化がまるで追いつかないワナ;。多重消化にも限度があるし、果たしてどうしたものやらなわけですが、とりあえず今日は先日読んだコミックスの書評を一つ。



 これ、こたつさんのお薦めで読んでみたりしたわけですが、2 巻目後半あたりからはテンションが上がって一気読み。いや〜、見た目のダメっぷりとは裏腹になかなかの良作じゃないですか。

 ざっとストーリーを紹介すると、レベル 7 の最強の力を持つ 10 歳の三人の超能力少女と、それを率いる、超能力を持たない二十歳の若きエリート学者・皆本光一。彼のミッションは、三人の少女を正しい方向に導いてその才能を開花させること。傍若無人でマセガキで超ワガママな三人娘。普段は背伸びしてマセガキっぷりを発揮しつつも、時おり見せる、歳相応の少女としての一面。超カタブツ青年の主人公はそんな彼女たちに振り回されつつも、その絆を深めていく……と、まあそんな感じの物語。

 最初に読んだときにはちょっとハートウォーミングな萌えマンガかと思ったんですが、少し読み進めてみると、見かけのダメっぷりとは裏腹に、ものすごく重たいテーマを扱ってることが見えてくる。ひと言でそのテーマを言うのなら、この作品は『許し』の物語なんですね。

 国家レベルで重宝されているヒロインの少女たちは、端的に言えば「規格外」の子供たち。その桁外れの能力ゆえに普通の小学校にも通うことはできず、家族からも疎外され、腫れ物に触るかのごとく常に接せられてきた少女たち。人間って、暗黙的に「普通であること」=「みんなと同じであること」が求められていて、それに収まらないハミ出た部分を持っている子供たちは、『規格外』の子供として、のけものにされたり、いじめられたり、問題を起こしてしまったりする。

 そうした個性や才能は、大人になればそれを活かして生きていく道も開けてくるかもしれないし、それを受け止めてくれる人が現れるかもしれない。けれども、そこに至るまでの長い道のりにおいて、家族にすら疎外されてしまう彼女たちはいったいどこに救いを求めれば良いのか?

 本作に出てくる少女たちは、一見すると傍若無人なマセガキながらも、心のどこかでは本気で叱られることを望んでいたりする。それは、彼女たちが心の奥底で『許し』、つまり「あなたはここにいてもいいんだよ」という実感を求めているから。主人公である皆本は、持ち前の性格も相まって、決して三人娘を特別扱いしたりなんてしない。そういうふうに真摯に彼女たちに向き合うからこそ、彼女たちは、皆本のそばに自分の居場所を見出すんですよね。

「怒ってるのは……君が自分の命を危険にさらしたから……それだけだ。
 今回の件は、僕の責任だよ。検査が完了してないのに出動させるべきじゃなかったんだ。
 君の能力も、君自身も、迷惑なんかであるもんか……
 君は、ここにいていいんだ。」

 ああ、そうか、僕は―――
 このクソガキたちに、ずっとそれを言いたかったのかもしれない―――


 三人娘の影に隠れてしまって見えにくいですが、主人公の皆本もまた、超能力を持たないながらも『規格外』としか言いようのない超天才の超エリート。そんな彼が、幼い頃に周囲からどのような仕打ちを受けたのかは想像に難くないでしょう。彼は、本能的に『規格外』の三人の少女たちに共感するものを覚えた……立場や能力の種類は違えど、本質的に通じるものがあったのかもしれません。

 ともあれ、本作に出てくる主人公や少女たちは極端すぎる例としても、似たような『世の中からの疎外感』は、多くの人間が多かれ少なかれ味わっているんじゃないかと思うんですよ。子供の頃はともかくも、大人になればなるほど人間関係は疎になっていき、体面を取り繕うが故に、悩みや苦しみを一人で抱え込むようになってしまう。そうした状況下では、他人の痛みや悩み、苦しみを分かってあげることはものすごく難しいことだし、それを受け止める勇気を持つことも大変。そしてまた逆に、自分のそうした悩みや痛みや傷を他人に打ち明けることだって、ものすごく勇気がいることだし、さらにはそうした悩みを打ち明けられる相手を見つけることもなかなか難しいでしょう。この作品を読んでいて救われたような感覚に陥るのは、そういう、『許し』が持っている、本質的な癒しの力ゆえのものなんじゃないかな、と思うんですよ。

 もちろん、皆本が三人の少女たちの痛みや苦しみを受け止めたところで、三人の少女たちに向ける世間の目が変わるわけではないし、問題が解決されるわけではない。けれども、三人の少女たちにとって、その痛みや苦しみを共有してくれる人がいることが、どれほどの心の支えになることか。生きることに絶望せずにいられる理由の一つとして、こういう『許し』、つまり許されているという実感、ベタな言葉で言えば「愛されている」という実感はものすごく大切なものなんじゃないかと思うんですよね。本作では、10 年後の未来に、薫が、世の中から疎外されているエスパーを先導して反乱を起こすという予知夢が提示されているのですが、これは『許し』をテーマとした作品ならではの重たい設定。最終的な結末をどうつけていくのかは非常に興味深いです。

 やー、こういうのを読んでるとさすがはベテラン作家、という感がありますね。> 椎名 高志氏
 なかなかいい作品でした。続巻が楽しみです。

投稿者 まちばりあかね☆ : 2006/4/17 00:15 | 3.アニメ&コミックス

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コメント

おお、書評が。気に入ってもらったようで推薦したかいがあった。

作品の構図はかなり初期から明らかになってましたね。
最初の頃、テロ犯がチルドレンに懇願するシーンは印象的でした。
「好きでやってるわけじゃない、お前たちなら分かるだろ、
たまたま拾ってくれたのがお前らはバベルで、こっちはがヤクザだったんだ。」

一瞬躊躇するチルドレン、それを一喝する皆本。
「お前がそれを選んだからだ。何にでもなれたしどこにでも行けた。
この子達の未来をお前と一緒にするな!」

価値観としては非常に愚直で、古風な感じすらします。
しかし軽妙なギャグの合間にポジティブな考え方が全編に渡って
貫かれており、普遍的ともいえるメッセージの良質さを持っています。
私は椎名ファンということで読み始めたのですが、過去の作品より万人に推薦できそうです。

投稿者 夏のこたつ : 2006年4月17日 01:49

や、いい作品を紹介してもらってありがとうございました。
こっち系統は完全にノーチェックだったので助かります。

> 一瞬躊躇するチルドレン、それを一喝する皆本。
> 「お前がそれを選んだからだ。何にでもなれたしどこにでも行けた。
> この子達の未来をお前と一緒にするな!」

これはいいシーンでしたね。コメディ部分と真面目な部分との構成がうまい。
エロよりもロリ、というのは最近の少年漫画の傾向……かどうか不明ですが、
GS 美神よりも作品が普遍的なので薦めやすいですね。

投稿者 まちばりあかね☆ : 2006年4月24日 10:04

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