最近のトピック |
発売されたのは随分昔の気がしますがようやく読破。というかなかなか暇がないっす;。そんなわけで軽くインプレ。
「どうしてなんだろう。私は、別に同情なんかで渡したわけじゃないのに。」
あの時、本心から瞳子ちゃんを妹にしたいと思った。
なぜ、そう思ったのか。瞳子ちゃんのどこが気に入ったのか。うまく口にできないけれど。でも、それは確信だった。
志摩子さん流に言うなら。―――「何となく」。
何となく、瞳子ちゃんが妹なんだって、そう感じたのだ。
けれど、それは伝わらなかった。
祐巳の独りよがりでしかなかった。
久しく消化試合の強い感の多かったマリみてですが、ようやく話が動きましたね。いやはや、上記のラストシーンには思いっきりノックアウトされたり。めちゃめちゃいいシーンじゃないですか。久しぶりにマリみての本領を見た感が。
このストーリーの鍵になっている点は 3 つあって、プライド、感性、そして姉としての祥子の存在ですね。
まずプライドについて。マリみてに出てくるキャラって、良くも悪くもみんなプライドが高いんですよね。プライドといっても、それは見栄のことじゃなくて、誇りのこと。どのキャラもきちんと通すべき筋を通していて、どんな結末になっても、絶対に曲げてはいけないところを曲げない『誇り高さ』を持っている。例えば前半で、祐巳は乃梨子に瞳子を誘って欲しいとお願いするわけですが、乃梨子はそれをきっぱりと拒絶する。そしてラストでは、自分の弱みを見せてしまったことで妹にと言い出した祐巳に対して、瞳子はこれをきっぱりと拒絶する。どちらも、『流されてしまえばラクなのに、そのまま突き進んでいたら絶対に後で後悔する』ようなことをきっぱりと拒絶する誇り高さを持ってるんですよね。
次に感性について。先に引用したセリフの「何となく」という言葉が象徴的ですが、これ、めっちゃいいセリフですよねぇ。なぜ祐巳が瞳子を妹にしたいと思ったのか。それは後から第三者が見ればあれこれ理由をつけることは出来るかもしれないものですが、それは理屈の世界でしかない。一般に、男性作家が書いた恋愛ものって、誰かが誰かを好きになるのに、明確ではっきりと言語化できる『理由』が用意されるものですが、女性って、理屈ではなく『感性』(直感と言ってもいい)で恋愛するんですよね。これが下手な作家だと、「どうしてこいつを好きになったのか全く分からない;」という話になりかねないんですが、一流の女性作家になると、感覚的な説得力があるんですよ。つまり、(うまく言葉では言えないけれど)これ以外にはあり得ないんだ、という確信にも似た説得力がある。もちろん作品の作りという意味では、それなりの理由があって、その理由を言葉ではなくシチュエーションで作り上げているだけなんですが、読者の中に湧き上がる「感情」を作り上げることに関してはこの作品は超一流で、それを見事にやって見せたのがあのシーンだったと思うんですよ。
そしてそれに続く最後のシーンが素晴らしい。全体を通してみれば、瞳子がなんとなく祐巳に惹かれて家にやってきて、その後、逆に祐巳が瞳子のことをなんとなく意識して妹にしたいと言ったにもかかわらず、瞳子はそれをきっぱりと拒絶する。その一連の流れは不幸なボタンの掛け違いとしか言いようがない。けれども、少なくとも祐巳は瞳子に全力で『ふられた』。……こういうシチュエーションに陥ったとき、おそらく無関係な第三者だったら、祐巳に対して「一度振られたら諦めろ」と言うのが普通だと思うんですよ。ところが、祐巳の姉である祥子はそうは言わない。祐巳の心の内を完全に理解した上で、涙を流しながら、瞳子のことを諦めるな、って言うんですよね。それは単に、祥子自身の過去の経験から言ってるわけではなく、祐巳の本当の気持ちを察した上での言葉。涙を流しながら気持ちを共有する二人の姿が、切ないけれど非常に温かい素晴らしいシーンですねぇ、これ。
それにしても、いったんハードルを上げる展開にしてきたのは凄いとしか言いようが。確かにひと波乱なければこの二人は決して姉妹になることはないでしょうが、意地っ張りで見栄っ張りな瞳子がいったん拒否した相手をどう受け入れる展開にしてくるのか。祐巳の場合と同じく、瞳子の側から妹にしてくれと申し込んでくるシナリオが濃厚とはいえ、そこに至る過程でどういうマジックを見せてくれるのか。伏線を張りまくっていることからももうストーリーラインは完成してるんでしょうが、いやはやめっちゃ楽しみですねぇ、これは^^。
……で、それはともかく、次の巻はいつ発売なんですか;。いつも忘れた頃に発売になるんですよねぇ;;。
このエントリーのトラックバックURL:
http://pasteltown.sakura.ne.jp/akane/games/blog/tt_tb.cgi/484