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AIR #9 つき -moon-

 ……えーと、一言で言うと、激しく微妙(^^;)。やはり summer 編を 2 話で駆け抜けることにはさすがに無茶でしたね。あと 30 分あれば全く違う構成に出来ただろうにと思うと、13 話構成じゃないのが本気で悔やまれます。

 以下、ネタバレにつき文字反転。

 あいかわらず映像面は perfect としか言いようのない出来で、今回、夜空を背景にした神奈だとか、翼人の力の描写などは映像化の威力というものを思い知らされた感があります。原作テキストもかなり頑張っていましたが、こういうのは百聞は一見にしかず。よくぞここまで見事に映像化してくれた、と関心しました。

 が、問題なのは脚本面。

 もともと先週分からの流れで、旅路の長さや神奈の母への思いの強さという要素がバサっと切り落とされてるんで、A パートの八百比丘尼のシーンがあまり印象的でなくなってしまっているんですよね。加えて B パートも限界までセリフを削ってるから、翼人の設定とか、あれでは全然分からないでしょう。

 でも、今回の場合、そこは本質的な問題じゃない。最大の問題は、summer 編のラストシーンのニュアンスが変わっちゃってる、ということ。

 summer 編のラストシーンって、空に囚われた神奈を解放するためだけに生きてきたはずの柳也が、最後の最後で自分の本当の連れ添いが裏葉だったことに気付く、というシーンなんですよね。ところが、TV 版ではそのニュアンスがごっそりと抜け落ちてしまっている。しかも、この削り方が実は確信犯的なんですよ。原作テキストをちょっと見てみると、これがよく分かります。

 まず、神奈が空に囚われた後で悪鬼となった柳也を裏葉が止めるシーンでは、

  「お誓いくださいませ。そのお生命、決して無駄には散らさぬと。
   お生命の最後の最後まで、神奈さまのためにつくす、と。」


と言って、裏葉は『神奈のことを想っている』柳也を止めるんですよね。そして知徳の元に身を寄せた柳也も、神奈のためにすべての時を使う。だから、子を遺せばいいと言う裏葉に対しても、柳也はすぐにその提案を受け入れることができず、裏葉があの手この手で(^^;)柳也のことを口説き落として、初めて柳也はそれを受け入れる。そして、柳也が想う神奈のために、裏葉との間に子を遺す、その自分の行為に対する柳也の誠意が、

  「ただし、ひとつだけ条件がある。
   裏葉。俺は残りの時のすべてを、おまえのために使う。
   それでいいな?」


なんですよね。そして柳也は、『神奈のために』すべてをやり終えて、最期の今際の際になって、初めて裏葉が自分の連れ添いだったこと(=自分の本当の幸せが裏葉にあったこと)に気付くんですよね。(だからこそラストシーンでは、柳也と裏葉が連れ添ってあの世へと旅立っていく、というカットになっている)

   指先から伝わってくるもの。溢れるほどの想い。
   だから、俺は己に問う。
   俺は頑張れただろうか?
   俺は幸せに暮らせただろうか?
   そして、気づいた。
   その答えは初めから、ここにあったのだ、と。
   「…そう…か…
    それでこそ…俺の…連れ添い…だ…」
   「はいっ…」


   もう一度、空を見上げる。高く、晴れ渡った空。
   光に満ちた空。それなのに、大粒の雨がぽとぽとと頬に降ってくる。
   「りゅうやさま…」
   温かい夏の雨。
   「りゅうやさま…りゅうやさま…」
   だれかの涙のような雨…
   「…あり…がとう…」
   「…う…ら……は………」

   「りゅうや…さま………」


 だぁぁぁぁっ、ラストのセリフの順番違うだろ〜〜〜っ(T_T)。>TV 版 このカットは原作でも屈指の名シーンだったので、その改変はあんまりだよ……と思わず泣きそうになったり。

 原作と比較してみるとよく分かるのですが、ただでさえ話が複雑な summer 編を無理矢理 2 週間に詰め込んでいるので、こうせざるを得ないという判断を下したのかもしれません。……がしかし、AIR は「本当の幸せ」がどこにあるか、がサブテーマの一つなので、ここを正しく作り込めなかったのは致命的でもあります。表面的に形だけ真似たラストシーンを作ってもダメなんですよぅ、このシーンは。(涙)

 美凪編もかなりの詰め込みだったとはいえ、テーマ的な本質は全く変わっていなかった。けれども、summer 編に関してはこの点はかなり致命的。もうちょっとなんとかならなかったのか、と思うと非常に残念。

 ……とケチをつけてみましたが、総じて言えば AIR 編のしわ寄せで summer 編を犠牲にした、という印象。ここまで神アニメとしか言い様のない、申し分のない出来だったので、ちょっと今回のミスはもったいなかったですねぇ。これでシリーズ通しての満点をつけることは出来なくなってしまった、という印象。

 とかいう話を Messenger で従弟君と話してたんですが……。

従弟君 「つーか、ずいぶん贅沢になったな。冷静に考えると(^^;」
まちばり「まったくだよなぁ。劇場版見て頭冷やしてこい、と。(笑)」


 しかし来週からはついに AIR 編。summer 編で無理繰りで作ったこの時間を全力で活用して欲しい、というかそうじゃなきゃ許されませんっ。ここまで来て裏切らないでくださいよ〜、京アニ様(祈)。

 この AIR アニメ版がアニメ史上の伝説に残る作品になるかどうか、楽しみです。……いやもう十分伝説に残る作品になってる気もしますけどね。(^^;)

投稿者 まちばりあかね☆ : 2005/3/4 02:26 | 3.アニメ&コミックス

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コメント

お久しぶりです。
ご指摘の点ですが、
TV版は映像のマジックで明かに裏葉=母(妻)、柳也=父、神奈=子
のイメージが原作より強く出ているので、柳也の神奈への想いが子を想う父の気持ちのようなものであることが映像的に分かる
作りになっているからではないでしょうか…。
原作だと、男・女の愛情の側面が強い感じですからね…。

…然し…AIRとクラナドって、本質的に完全に同一だったんですね…

第9話を見て今頃気がついた私は、実に唸らされました…。

投稿者 kagami : 2005年3月5日 01:05

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