今日は一日じゅう目がどぼどぼ。や、花粉でもなんでもなくて、睡眠不足と AIR のせい。(汗)
そんなわけで、昨日に引き続いて AIR のお話。……なんですが、ちょっと脇道に逸れてみたり。
おそらく日本人でディズニーランドを知らない人はいないでしょうが、ディズニーといえば世界でも数少ない超優良企業の一つ。顧客満足度は世界一と言われ、パークを訪れるほとんどのお客さんはリピータ。例えば日本のディズニーリゾートであれば、その 97% は国内からの来園者で、その 70%は大人、来場者総数はオープン以来で約 3 億人、つまり国民一人あたり 3 回行っている計算になるんだとか。
なぜディズニーランドがこれほどまでのリピータを獲得しているのか? もちろんそれはひと言で言えるものじゃないでしょうけど、ディズニーランドにまつわる逸話で、こんな面白い話を読んだことがあります。
- パークに流れている音楽は、朝はウキウキするような曲で、夕方には少ししっとりした曲になる。
- 一見ただ金色に塗られているようなメリーゴーランドには、本物の 23 金の金箔が使われている。
- ショーに使われてる昔の衣装は、すべて当時の生地や製法に則って作られている。だからミシンも一切使わず、すべて手縫い。
1 つ目はともかく、3 つ目ともなると、おそらくゲスト(お客さん)が気付くことなどまずあり得ないし、なにもそこまでこだわらなくてもいいんじゃないか、と思えるかもしれません。コスト効率を考えたら、確かに行き過ぎた細部へのこだわりと言えるかもしれません。けれどもここで重要なのは、
ゲストが気付かなくてもキャスト(従業員)は知っている、ということ。そういう「徹底的にこだわる」という文化がキャストの間にきちんと根付いているということが、決して妥協しない、満足度の高いパークを作り上げていくんだそうです。
先日の TV 版 AIR の第 11 話のスタッフインタビューに、
こんな記事 がアップされていました。(BS-i の
ホームページ より転載)
スケジュール的にはかなり厳しい話数だったんですがスタッフはやれるだけやってくれました。
特にラストの夕景シーンでは4〜5段階ほどで暮れていく様子を演出のワガママで背景、色指定の担当者に表現していただきました。
このような作業は普通のシリーズではありえません。労力に見合う効果が期待できないからです。
結果、色指定さんは「わかんねェ〜」と泣いていましたがAIRという作品はそれをやらせてしまうだけの力を持っているんですね。(第11話 演出担当:三好一郎氏)
このインタビュー記事って、TV 版 AIR がなぜ神なのか、という理由の一端を端的に言い表している気がするんですよ。細部への徹底的な作り込み、こだわりの重要性を理解していて、それを本当に実践している。それが TV 版 AIR をこれだけのクォリティに仕立て上げている源泉の一つになっていると思うんですよね。
AIR の作り込みの細かさは、本当に様々なサイトに書かれていますけれども、それでもなお見るたびに新しい発見がある。それだけのリピート観賞に耐え得るだけの素材であることも凄いことですが、しかし最も重要なことは、
我々が気付いている点だけですらこんなにもある、ということではないでしょうか? 我々が気付いていない点まで含めたら、いったいどれほどの作り込みをしているのか……本当に見当がつかない、というのが正直なところです。
しかし、プロフェッショナルとしてモノ作りに「こだわる」というのはそういうことだろうと思うし、なによりそれを実際に、アニメ作品でこれだけのレベルでやってのけて見せたこの TV 版 AIR。京都アニメーションのスタッフ陣は、やはり「神」と言われてしかるべきじゃないでしょうか?
脚本や演出、コンテ、作画といった目立つところだけでなく、音響や背景、特殊効果など、その制作スタッフすべての人にエールを送りたい、そういうプロフェッショナルな空気が感じられる作品はそうそうありません。しかし TV 版 AIR はそれに見合うだけの内容を持った作品じゃないか、そんなふうに思えます。