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ゲームタイトル | メーカ | ハード | インプレ | お気に入り度 |
Phantom of Inferno | NitroPlus | Windows | ★★★★★ | |
月姫 | TYPE-MOON | Windows | ネタバレなし | ★★★★★★ |
同窓会again | F&C FC01 | Windows | ネタバレなし | ★★★ |
誰彼 | Leaf | Windows | ネタバレなし | ★ |
鬼武者 | CAPCOM | PS2 | ネタバレなし | ★ |
とらいあんぐるハート3 | JANIS | Windows | ネタバレなし | ★★★ |
吸血殲鬼ヴェドゴニア | NitroPlus | Windows | ネタバレなし | ★★★ |
書淫、或いは失われた夢の物語。 | Force | Windows | ネタバレなし | ★★ |
るな・シーズン〜150分の1の恋人〜 | EMU | Windows | ネタバレなし | ★ |
魔法のパレット | JANIS | Windows | ネタバレなし | (なし) |
flutter of birds 〜鳥達の羽ばたき〜 | Silkys | Windows | ネタバレなし | ★★★★ |
GRAN TURISMO3 A-spec | SCE | PS2 | ネタバレなし | ★★★ |
とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱 | JANIS | Windows | ネタバレなし | ★★★★ |
カルドセプトセカンド | 大宮ソフト | DC | ★★★ | |
DOUBLE | ちぇりーそふと | Windows | ★★ | |
Only you -リ・クルス- | AliceSoft | Windows | ネタバレなし | ★★★★★ |
君が望む永遠 | Age | Windows | ネタバレなし / あり | ★★★★ |
水夏 | CIRCUS | Windows | ネタバレなし / あり | ★★★★★ |
銀色 完全版 | ねこねこソフト | Windows | ネタバレなし | ★★★ |
歌月十夜 | TYPE-MOON | Windows | ★★★ | |
ACE COMBAT 04 | NAMCO | PS2 | ネタバレなし | ★★★★ |
未来にキスを | otherwise | Windows | ネタバレなし / あり / 後日談 | ★★★★ |
ぷちチェリー | 戯画 | Windows | (なし) | |
家族計画 | DO | Windows | ネタバレあり | ★★★★★ |
Piaキャロットへようこそ!!3 | F&C FC02 | Windows | ネタバレなし | ★★★★ |
大悪司 | Alice Soft | Windows | ★★★ | |
二重箱 | ケロQ | Windows | ネタバレなし | ★★ |
Metal Gear Solid 2 | コナミ | PS2 | ネタバレなし | ★★★ |
アルキメデスのわすれもの | サーカス | Windows | ネタバレなし | ★★ |
子供の頃の事故の後遺症で、モノの壊れやすい線が見えてしまうようになった遠野志貴は、一族の当主の死去により8年間預けられた家から実家へと戻される。しかしその新しい生活で彼を待ち受けていたのは過酷な運命だった……。
脅威の同人ゲーム。というより、もはやこれは同人ゲームとはいえないでしょう。
圧倒的なボリューム(おそらくAIRと同程度かそれ以上)、重厚なシナリオ、緻密に練り上げられた設定、魅せるテキスト、無理のないキャラの立ち回り。およそこれだけのシナリオを書ける人は、ゲーム業界においても数えるほどしかおらず、同人ゲームでこれほどのものが出てくるとは脅威としか言いようがありません。
その本質的な素晴らしさは、ある種、Phantom of Infernoに通じるところもあります。昨今の、キャラクター符号化(例えば萌え要素、妹要素など)による魅力の演出ではなく、思考・行動そのものによる魅力の演出。その一つ一つの行動にそれぞれ各人の想いがある、だからこそ染み出てくるセリフの重み、そしてその魅力。生と死とが表裏一体、紙一重の世界の中で、悩み、思い、傷つけあう。
それはまさしく人間ドラマ。なにか仰々しい「これ」というテーマを語りかけてくるわけではない。それでもプレイし終わったプレイヤーの中には何かが残る……それはこのゲームの中に生きた人々の生き様から染み出て、プレイヤーへと伝わったもの。明確な言葉にすることは出来ないけれど、感覚的な何か……人の想いが残るのです。
技巧的な側面から言っても、これほどの長いシナリオを中だるみなく進めるシナリオ構成技術、これだけの分量の設定を分かりやすい言葉で説明出来るという基本的な文章力の高さ。これだけ取ってもまず最近のゲームではお目にかかれません。脚本家を名乗るのもおこがましい昨今の大甘シナリオライターさん達にはこのテキストを読んでもらって、大反省してもらいたいと思ってしまうほどのもの。キャラクターへの感情移入すら「萌え」要素に強く依存している、小手先のテクニック依存な昨今のゲームと比べると、その根本的な技術レベルに違いがある、と感じさせられます。
全体構造として素晴らしいのは、なによりも脚本に『逃げ』がない、という点。次々と発生する事件や問題、特に人間模様に関しては、撒いた種について納得できる形できっちりとケリをつけていく。最近のゲームの多くには「甘美な幻想の世界」の妄想がある……都合の悪い問題にはフタをして、本人は都合のよいことだけ悩む、そんないい加減なシナリオが蔓延しています。月姫のような「ホンモノ」志向の脚本は、読んでいて思わず熱が入る。だからこそ、これだけの長編ゲーム(だいたい1キャラあたり5〜8時間程度、これが5本)を飽きずにプレイできるのでしょう。
恐ろしく長いシナリオを中だるみなく最後までプレイさせるに足る密度の濃い内容がそこにはあるのです。
音楽のセンスの良さも光っています。決して重厚な音楽とはいえず、むしろ質素、簡素な、手作りを強く思わせるBGM、そして効果音。しかしピアノをベースとしたBGMはこのゲームに見事にマッチしており、そして効果音はゲームの異質な空気を煽り、プレイヤーを狂気の世界へと誘います。このゲームはこのBGMなしでは成り立ち得ないでしょう。
またCGも、塗りがやや簡素なものが多いながらも十二分な枚数と内容があります。さすがに潤沢な資金をふんだんにCGに投資するF&Cのような一般メーカーのようにはいかないものの(というより昨今のメーカーはそこでしか自社のソフトを差別化出来ていないところにタチの悪さがありますが)、十分に惹かれる絵であることに違いはありません。
このゲームをプレイして感じたのは、『志の高さ』がこれほどまでに高いクォリティの作品を生み出すに至ったのであろう、ということ。会社維持のために定常的に作品を出していかねばならないメーカーは、「ほどほど妥協できる」品質のゲームを出すための歯車を作っている。その結果、最初の数作品に見られた志の高さを除々に失い、瑣末な「萌え」などの小手先テクニックに依存したゲームを出すようになり、差別化は音声とCGに傾倒する。ギャルゲー業界全体が、生き残るためにその悪循環にハマりかけているのが現状とも言えます。だからこそ、Phantom
of Infernoや月姫といった、新参の、志のあるメーカーから予想もしない名作がぽんと現れるのでしょう。
この「月姫」に関しては、制作スタッフ陣の基本的な能力・実力の高さもさることながら、それを支える根本的な「志の高さ」の部分を高く評価したいです。志の高さと能力の高さ、この二つがあわさってこそ、真に名作と呼ぶに相応しい作品が生まれる。それはプロでもアマでも同じこと。
「同人ゲームの限界」に挑戦し、その結果として市販ゲームも含めたギャルゲーのトップに立ってしまった作品。それがこの『月姫』というゲームです。
まだプレイされていない方は、是非ともプレイしてみてください。
まんだらけやあきばおー、とらのあななどでも取り扱われている他、通販も可能のようです。
前作『同窓会』のBAD ENDから数年、忘年会で大晦日に再会したテニスサークルのメンバーたち。付かず離れずの微妙な関係、そして胸に秘めた想い。静かに降る雪の中で、今再び時が動き出す……。
同窓会といえば、16色からフルカラーへの移行期にある初期のWindows 95系の代表作、そして学園もの恋愛修羅場ゲームという一つのパターンを作り出した、懐かしい思い出のある作品。清楚で可憐なお嬢様タイプの瑞穂、気軽な友達のみどり、後輩のかわいい夏奈子、幼なじみの鮎など、今ではもはや常套手段とも言えるキャラクター配置、もちろんそれまでの作品でも個々の要素はあったのですが、一つの作品として初めて具体的に定式化した作品はこの同窓会が初めてだったのではないかと思われる、そんな作品でした。当時としても非常にキャラクターがよく立っていたことや、序盤のフラグ立てが極めて困難であるということも手伝ってか、一時期は大きなブームにもなっており、当時プレイした人たちにとっては懐かしく思い出される作品であることには違いないでしょう。
ある意味、そんな作品を今さらリメイクして続編として出すこと自体、よくある二番煎じの感を拭えず、果たしてどうなるものかと心配しましたが、前作には遥かに及ばないものの、なかなか良く出来ていました。昨今のF&Cの水準を考えると最高傑作と言っても差し支えないかもしれません。
セリフとキャラデザによる差別化と萌えというのは、F&Cがこの業界に導入し、さらにそれを強化していって現在のキャラクターグッズブームにつなげていったと考えているのですが、F&Cの場合は、本来そうしたセリフやキャラデザによる差別化を根底で支えるべき「行動の差別化」というものが、初代の同窓会以降、本当に弱くなりました。もともと初代の同窓会も、確かに今から考えれば萌えに依存はしていたものの、もともと「萌え」という概念自体も弱く、各キャラクターは「符号化されていない、自立した思考体」として存在していました。中学の頃から胸の底に溜めていた思いが吐き出される瞬間、時としてプレイヤーの方がぎょっとするようなセリフと行動を起こすぐらいの衝撃。それが初代の同窓会の各キャラクターの魅力でもあったと思うのですが、今回の同窓会againはそれを良い形で踏襲しています。前作と違い、年齢が上がったこともあって、「若さ」は多少押さえ気味に、しかし思いはそのままに、という形でうまくまとめており、各女性キャラクターが唯一無二の存在として輝いている、そんな魅力が今回の作品にもありました。
ただ、もともと同窓会が素晴らしい作品であった理由の一つには、男性陣の魅力というものもありました。洋介、進、不二夫、竜介、そして主人公。この5人と女性陣6キャラとのバランス、そしてそれらが生み出す空間こそが「同窓会」の空間でもあり、魅力でもあったのです。しかし今回のagainの最大の問題は、この男性キャラたちの魅力がほとほと薄くて弱い。シナリオの焦点は女性キャラの内面的葛藤に注がれており、それが故に女性キャラの良さは引き立っているものの、男性キャラが人形と化しています。前作では、「うむむ、こいつなら彼女を任せられる」とか、「くそぉ、なんでこんなやつに瑞穂を取られなきゃならんのだ、理不尽だぁぁぁ」と叫んだものですが(笑)、そうした男気を見せる男性キャラが全くいなくなってしまったのが残念。
前作同窓会にあった、いわば若さゆえの愚直さとでも言うべき思い、そしてそのぶつかり合いがほほ笑ましくもあり、また魅力でもあったのですが、それが失われてしまったのは正直残念なところ。確かにこの同窓会again、全般して良く出来たシナリオ、良く出来たゲームなのですが、それでもなお辛口の評価をつけてしまうのは、やはり前作『同窓会』というゲームに酔いしれた、各キャラへ並ならぬ思い入れがあるから、なのかもしれません。
あの避暑地に漂っていた空気そのものが、『同窓会』の魅力だったのですから。
太平洋戦争時に強化兵として改造を受けた主人公蝉丸。しかし何者かによりその封印は解かれ、現代に再び姿を現す。蝉丸の封印を解いた者の正体は誰か、そして驚異的な肉体をもたらす仙命樹の秘密とは一体何か……。
Leafの新作ビジュアルノベル。今回も新人脚本家を起用しており、果たしてどの程度の出来か気になるところでしたが、結果たるや散々なものだったと言わざるを得ませんでした。
掴みとしての設定はそれほど悪いものではありません。一覧にも記述しましたが、太平洋戦争時代から眠りつづけていた主人公、昭和時代を思わせる古風な街並み、そしてそこで繰り広げられる戦い。豊富なアニメーション、ムービー、質の高い音楽などによりそれらはさらにワンランク上の作品へと昇華されている。作品全体の雰囲気には『その辺の他作品とは違うぞ』と主張するような、なかなか素晴らしいものがありました。
ところがプレイを進めるにつれ、それは徐々に落胆へと変わっていきます。作品中のトリック、謎、伏線自体の甘さも当然あるのですが、根本的な原因は、脚本家自身がテーマ自体を消化しきれていないことに起因していたと思います。このゲーム、太平洋戦争時代から眠りつづけていたということから分かるように不老不死というのが作品のテーマの一つになっているのですが、不老不死が何を意味しているのかなど、それこそ世間の汎百の作品で語られていること。仮にそれ以上のことを語れないにしても、それを作品設定と融合わせて新しい知見、意味を与えるべきではないかと私は考えているのですが、この部分に関して誰彼は、脚本家自身がno ideaであったと言わざるを得ないように思います。「語り得ぬことは語れない」のではなく、単に「語れるほど考えていないから語らない」。それはキャラクター達の行動に厚みがないところにも現れており、通り一遍の動き方しかしていないところにも現れています。
確かにLeafとしては初めて、高度なグラフィック技術を使って、ビジュアルノベルをさらにワンランク上の形態に押し上げた(他のメーカーではこれに近いものはいくらでもあるのですが)とも言え、Leafの演出チーム(グラフィッカ、プログラマなど)にも確かに前進は見られるのですが、根幹となるシナリオの不出来を補えるものではありません。グラフィックなどにいくら工数をかけても、すなわち視覚や聴覚にいくら凝ったとしても、本質的なシナリオの浅さを隠せるわけではないのです。
後ろに進めば進むほど選択肢が増加する痕方式を取っているにもかかわらず、後ろに進むほどシナリオが浅くなっていくのには閉口せざるを得ず、結論を言えば、「Leafもここまで地に落ちてしまったか」といわざるを得ないほどの駄作であったと思います。
この誰彼の発売と前後して、Leafスタッフの内部文書と思われる怪文書が2chで流出するなどの事件もあり、また加えてLeafのOfficialホームページでもかなり露骨とも言える書き込み規制が行われるなど(若干でも不穏な動きはすぐに削除される)、Leaf自身も火消しに躍起になっている印象を受けます。かたやKEYのOfficialホームページが、致命的な書き込み(例えば18歳未満の書き込みなど)でもない限りは滅多に削除することがないのに比べると、昔のLeafの威厳はどこに行ったのやら、といわざるを得ない状況になりつつあります。
各方面の批評・論評を見ても高評価を受けているわけではなく、Leafもそろそろ沈没気味なのか、という気がします。そもそも「人」に強く依存せざるを得ないこの業界において、きっちりと人を囲い込み、人を育てながら回転率を上げていくメーカーと、毎回外部から優れていると思われる脚本家を探してそれにブランド名をつけて売るメーカー、果たしてどちらが強いのか。一概にどちらと結論を出せるものではないのでしょうが、Leafのように、砂漠の中から宝石の原石を見つけ出そうとするアプローチも、そろそろ限界に来ているのかもしれません。
時は永禄、織田信長は幻魔と呼ばれる魔物と手を組み、日本の征服を企む。主人公・明智左馬介は信長によりさらわれた雪姫を救うべく敵地へと乗り込むが、そこに待っていたのは幻魔による暗黒儀式であった……。
素晴らしく美しい3DグラフィックスとOPムービーによって、店頭デモには食い入るように見入る人が多発したこのゲーム、私もご多分に漏れずにとりあえず話題作ということで購入してきました。
確かに恐ろしく美しく、そしてアクションも派手でなかなかにかっこいい。にもかかわらず、このゲームには足りないものがありました。それはボリューム。なにしろ、プレイし始めてたったの3時間程度で最後まで終わってしまうのです。PS2としては珍しくかなりの大ヒット作となったそうですが、果たしてこのゲームがそれほど好評を博するゲームと言えるのか、正直なところ疑問です。
ガンパレードマーチを作られた、Alfa Systemさんへの以下のインタビュー記事はこの問題を非常に的確に捉えています。まずはこのインタビュー記事を読んでみてください。
http://www.mainichi.co.jp/life/hobby/game/interview/2000/05.html
ここに書かれている、「数のスケールアップが通用しない」というのはまさしくこの鬼武者が陥っている失敗そのものと言えます。もともとゲームというのは嗜好品である以上、7000円前後という価格が適正かどうかを決める指標は実はないのではないかとは思いますが、そうはいっても、決して安いとは言えない値段であり、プレイし終わった後に「面白かった」という感慨すら覚えられないこのようなゲームが多発することは、業界としてのモラルハザードであることには違いないでしょう。
それにしても、ゲーム業界もアニメ業界もそうなんでしょうが、どこもかしこも目先の売上確保のために混沌としているように思います。バブル崩壊以降、なかなかせちがらい世の中になっているのは事実ですが、次の時代へとつなげることが出来る、新しい形の「モノ」の出現が、ぼちぼち出てきてもいい頃かなと思っています。って、全然、鬼武者とは関係ない話になっちゃいましたが。(^^;)
守りたいもの、ありますか−−−−−
とらいあんぐるハートシリーズは、昔から名前は聞いていたものの世間での評判が真っ二つに分かれているようで、大っ嫌いという人もいればイチオシという人もいる、そんな作品のようでした。それが意味することは、おそらく『このゲームは腐りきった萌えゲーである』ということ。そんな思いからなかなか食指を伸ばさずにいたのですが、やはり自分でプレイせずに風評をアテにするのも問題だろう、ということでプレイしてみました。
結論を先に書くと、「良く出来た萌え系エンターテイメント作品」であったと思います。嫌悪感はほとんどなく、気軽に楽しめた(萌えられた)作品だったかな、という気がします。萌え自体がちょっと、という方にはお奨めできませんが。(^^;)
このゲーム、ノリといい作りといい展開といい、完全にひと昔前の王道パターンの作品でした。素直に驚いたのは、見事に洗練されたキャラ配置と役割分担。マンガ作品でいうとラブひながまさにこのパターンに該当しますが、お姉さん系、妹系、ロリ系、彼女系など各キャラクターの役割が綺麗に分かれており、なおかつバランスが取れている。このキャラがこういうと、このキャラがこう突っ込む。ラブひなでは比較的希薄な(仮想の)『家族』という概念も恋愛と矛盾しない程度にうまく取り込まれており、そのバランス感覚には舌を巻きます。世間一般では「ほのぼののとらハ3」と言われるらしいですが、なぜ「ほのぼの」なのか。それは展開のほのぼのさというより、むしろこのとらハ3の世界を構成している世界の「ほのぼの」さを無意識に感じ取っているためのように思います。ラブひなを思い出して頂ければ分かりやすいでしょうが、この世界は多少の起伏があっても基本的にはどこまでも続く桃源郷。一人称の主人公の視点を通して描かれながらも、その背後では確かに『家族』と『街』が根付いている。この距離感とスケール感、それらをまとめるバランス感覚がこの作品の一つの醍醐味とも言えるでしょう。
バランス感覚としてもう一点挙げたいのは、(いい意味での)シナリオの突っ込みの『甘さ』があります。設定的にはかなり重たいものもいくつかあるのですが、にもかかわらずシナリオとしての踏み込みを確信犯的に留めている部分があります(例外もありますが)。テーマ性を持たせないが故に煮え切らないという不満も残らず、ラストもむやみに盛り上げていないため、KEYなどの泣きゲーなどとは違って感動が残る作品では全くありませんが、かといって盛り下がった印象もなくきれいに「萌えられる」という、いわば萌えゲーのお手本とも言うべき形がここにはあると言えるでしょう。
また「萌え」に関しても、セリフの符号化による萌えを基本的には排除してキャラクターの行動そのものに可愛さを持たせてあり、、昨今のF&Cの安易な萌え路線とは決定的に異なります。確かに、中身もなければ志もなく、非常に卑怯な作品と言えるかもしれません。しかしそれでもこの作品はこれはこれで一つの「出来の良い形の作品」といわざるを得ないように思います。
ただむろん、上述したような点は「一過性の高いエンターテイメント」として見た場合の話であって、例えばこれが10年、20年のレンジで見た場合に心に残る作品であるかという話になると、それはなかなかに難しいと言わざるを得ないでしょう。また上述したようなプラスの点に関しても、すべてのシナリオに一貫して当てはまるとも言い切れない部分があります。一部のキャラについては一線を超えて踏み込んでしまっているが故にボロが出まくってしまっており、私自身、致命的な嫌悪感を覚えたシナリオもあります。手っ取り早く言えば、上述したような好評も極めて危険なバランスの上に成り立っているということであり、これらは果たして確信犯的に作られたものなのかどうか疑問が残ります。一番最初に書いた「守りたいもの、ありますか」というのはJANISがとらハ3につけたキャッチコピーなのですが、このキャッチコピーを感じ取ることの出来たシナリオが果たしてどれだけあったのか。私が上手いな、と思った部分はむしろ、物語に意味を持たせない部分にあったわけで、そう考えると私が上述した好評というのは多少穿った見方なのかもしれません。
脈絡のないベッドイン、延々と続く描写に辟易した方も多いかもしれませんし、キャラクター命なファンの方々に閉口して嫌いになったという方も多いかもしれません。しかしゲーム単体を取ってみれば、素直な桃源郷がそこにはある。一過性の高いエンターテイメントとして、そして一時的な現実逃避として(^^;)、気持ちよく「萌えたい」という方には間違いなくお奨めできるゲームでしょう。
※とらいあんぐるハートについてはその後に発売された DVD Edition のインプレもご参照ください。
吸血鬼……その不死の肉体を求めて策謀をめぐらせる邪悪の信徒達の前に闇の仕置人、吸血鬼ハンターたちが立ちふさがる。現代に蘇る聖戦に、運命の悪戯で巻き込まれていく主人公と、彼を取り巻く少女たち。彼らに、生きて再び夜明けを迎えることはできるのか?
2000年の18禁ゲーム市場に新星のごとく現れ、大ヒットとなったPhantom of Infernoを生み出したメーカ、ニトロプラスの第2作目。2000年にも渡る永きを生きてきたロードヴァンパイアに血を吸われ、一週間も経てばヴァンパイア化してしまう主人公、そしてそれを取り巻く少女たちがヴァンパイアたちの戦いに巻き込まれていく、というシナリオ。
我々が日常を過ごす昼間の表の世界に対して、夜の裏の世界は全く異なるルールで動く世界。ごく平凡に暮らす一人の学生がそれに否応なく巻き込まれていく、という構図はPhantom of Infernoと同様。ですが、13章(各20分〜30分程度)構成という1クールアニメを思わせるシナリオの作り方など、Phantomのような圧倒的な重厚さを持つ物語というよりは比較的エンターテイメント性の高いプレイしやすいゲームを目指したと言えそうです。
中身が薄いかというとそんなことはないのですが、Phantomに比べて軽めに感じられるのは、孤独感や絶望感が薄いせいでしょう。しかしそうした甘えが事態をどんどん悪化させていき、結果としてその蹉跌を踏んで主人公が最後の決断をするという筋書きは非常に素性の良いもので、違和感なくスッと楽しめるエンターテイメント作品と言えるのではないでしょうか。
ところで今さらこのゲームのレビューを書くというのも随分マヌケな話に思われることかと思いますが、これは発売日に購入して1シナリオ(モーラルート)だけクリアしたのち放置してしまったため。久しぶりに新発売ゲームが一段落したためプレイしたのですが、やはり最後まで今ひとつ盛り上がりませんでした。
このゲーム、確かに素性は良いものの「食い入るようにプレイする」ほどのゲームでもなかったと思うのです。戦闘シーンのかったるさといったシステムの作りの悪さも一因としてありますが、なにより「夜」の世界を描きながらその「怖さ」が描き切れていないことがその原因かと思います。おそらくはもとより描くつもりがなかったのでしょうが、「怖いもの見たさ」という言葉があるように、人間は「死」などが怖くてもそれに近付きたがる性質があります。Phantom of Infernoはそうした人間のサガを使って作品に引きずり込む作りをしているのですが、本作にはそれがない。筋書きは良いので、頭で理解する分には決して悪い話ではないのですが、心を強く揺さぶるものがなかった、それが残念なところです。
ニトロプラスは少し毛色の違う第3作目「Hello, World.」を開発中ですが、そののち再びPhantomなどの方向性の作品を作るとか。また次作以降に期待したいところです。
蜘蛛の糸を伝って。
いつかキミに、
抱かれる日が訪れるまで。
最近見かけなくなった、本格派のノベルタイプアドベンチャーゲーム。痕と同様の選択肢増加型ゲームですが、ゲームが陵辱パートと純愛パートの2つから構成され、陵辱パートの攻略で純愛パートの選択肢が増加し、純愛パートの攻略で陵辱パートの選択肢が増えるという、一風変わったシステムを採用。ゲームシステムそのものの見直しからシナリオを練りこんであるという、最近では珍しい凝った作りの一作です。シナリオに幾重にも散りばめられた謎、そしてキャラクターたちの想い。誰が、なぜ、どうして−−−明確には語られないテキストの裏側に隠された謎を解くために、まさに『書淫』の名の通り、そのテキストを読みふける。最近の、脳髄反射型お気楽ゲームとは一線を画した、濃厚なテキストで綴られた世界がそこには待っています。
萌えゲーもなければ泣きゲーでもない、最近では本当に珍しい、本格派アドベンチャーゲーム。ゲーム自体の難易度も高い上に、ヒントも少なく、さらにはそこに隠された真実を見抜くのは相当に難しいゲームです。ゲームシステム自体にも謎かけが含まれているなど、どこまでも『油断がならない』ゲームだけに、謎解きが好きな方にはたまらない一作と言えるでしょう。ただしかし、難しすぎる、というのが本音な印象でもあります。選択肢増加型ではあるものの増加したことが分かりづらかったり、文章そのものが難しかったり、選択条件の幅が比較的狭いなど、大昔の、本当に難しい&不親切なアドベンチャーゲームを思い起こさせる面もあります。このため、ゲームの本質に辿り着く前に挫折してしまう方も多いかもしれません。また、納期的な問題から文章の練り込み、チェックが甘かったためか、意味が曖昧に取れてしまうテキストや誤植も一部あり、せっかくの良さが台無しになっている面もあります。ゲーム制作に対する志の高さ、企画としての構想の面白さがあるだけに、もう少しハードルが低ければより多くの方々にお奨めできるのですが……。
とはいえ、これをプレイしてみていろいろ興味が広がったのも確かで、今、自宅には何冊かの心理学の書籍が(^^;)。自己完結型のゲームが多い中、知的好奇心を刺激してくれるゲームというのはいいですね。
萌えも泣きもないけれど十分に一本立ち出来るという、最近では珍しい本格派のゲームではあるものの、難しすぎるが故にあまり他人にお奨めできないというのが多少もったいないところではありました。次回作に期待したいです。
不細工でも性悪でもないのに女運に恵まれない主人公、朝宮祥介。149人の彼女と長続きせず、150人目の可愛い彼女とは奇跡的に1ヶ月も長続き。しかしどうしようもない衝動に駆られ、彼女をレイプしてしまう。当然のように彼女にも振られるが、果たして彼の運命やいかに……?
新宿のヨドバシで\3980だったのと、I'veが主題歌やってるのと、イラストがとにかくかわいいのと、あるサイトで一箇所だけ結構高評価を出してるところがあった……という極めて不純な理由で購入したゲームの一つ。スカならそれでもいーや、ということで買ってきてみました。
149人の女の子にフラれ、ようやく150人目にして掴みかけた女の子を、何を血迷ったかレイプしちゃうという、とんでもない設定から始まるゲーム。リンクしているWebサイトでの紹介も見てみて頂きたいのですが、これだけ見るとなんともとんでもない軽めのゲームに見えるでしょう。が、その中身は実は全然違っていて、Kanonなどの系譜を引くトラウマ克服ゲームです。
約1ヶ月間の交際期間パート(飛ばせば約20分)+各キャラの専用パート(約20分ぐらい)、という構成で、攻略可能キャラは5人、というようにボリューム的にはかなり軽め。Hシーンを増やすためでしょうがメインストーリーとは全く関係のない鬼畜ルートがあり、シナリオ的にははっきり言って邪魔。(^^;)
というわけでメインルートについてのみ話を絞っておきますが、予想外に非常に素性の良いゲームでした。キャラクターによりテーマが少しずつ違ってくるのですが、150人にフられるという「不運」について、ストレートに持論を展開しています。シナリオが短い分、論理展開もダイレクトで、(要するに骨格が剥き出しになっているということなのでしょうが)セリフがダイレクトに刺さってくるゲームです。
もちろん、ボリュームがない、日常描写が限りなくつまらない、前半部が非常にうざったい、など、ゲームとしては荒削りどころかかなりひどい部類に入り、佳作とも言えないというのが本音。私は特価で購入したのですが、通常価格で購入すると割高感は否めないでしょう。しかし美優シナリオなどではラストの部分は逃げずに直球勝負で挑んでいるにもかかわらず、ハズしてないのは見事。ラスト部分だけ取り出すと、この系統のゲームとしては上位作品に食い込める素質があり、今後の成長に期待したいところです。
ちなみにシナリオとしては美優、あやな、真希子あたりがGood。真希子は最後に残しておくと良いでしょう。
親父の描いた一枚の絵を頼りに、魔女の存在を信じてエベンブルグの街にやってきた絵描きの主人公。そして実際に出会った魔法を使える少女たちと共に、主人公は魔法の力を強める魔石・月のしずくを探し始める。彼女たちとの触れ合いを通して、主人公は本当に描きたいものを見つけていく……。
「魔女っ子」というキーワードは魔法少女好きであればどーにも外せないもの。いやきっとクソゲーなんではなかろうか、と思いながらも、とらハに味を占めた人間としてはJANISの他の作品も買ってみるかな、ということでとりあえず買ってみました。……が、予想以上のクソゲーでした。しくしく。(^^;)
舞台設定とキャラクター設定はなかなか良く、中世ヨーロッパの石畳の街並みの中で、夜に限って5人の魔法少女たちが空を駆け回る。かわいいお隣さん、勝気で強気なウェイター、抱擁系のおねーさま、綾波系の女の子、元気で明るいおだんご少女。さらには気立ての良いとても優しいケーキ屋のおばさん。作品全体に漂う柔らかく、それでいて楽しい空気、それを盛り立てる軽快なBGM。いわゆる外見的な部分だけ取るとこれはいやはやなかなか良く出来ている。
……のですが、いかんせんゲームシステム自体の出来とシナリオが悪い(^^;)。詳しくはオフィシャルページの紹介を見て頂きたいのですが、「属性システム」と呼ばれる、要するに「目に見て分かる好感度パラメータシステム」を導入しているのですが、これが全く機能していない。好感度を敢えて導入するほど混み入ったシナリオでもなければ、好感度を導入しなければならないほどボリュームのあるシナリオでもない。シナリオがとにかく安全指向で、無理のない無難な作りになってしまっており、あまりにもお約束かつありきたりな展開に閉口。どうしてもうちょっとチャレンジしようという精神がないのか……設定部には力をいれているだけに残念なところです。リベルテなんか、かなりいい線行ってるんですけどね。声優さんもなかなか上手いし。
いやはや、やっぱりタイトル名とイラストとメーカ名だけでゲームは買うもんじゃない、というのを再び痛感させられた一本でした。(苦笑) やはりシナリオライターが誰か、で判断していかないとダメなんでしょうね。
医学生である主人公・松井裕作は夏休みを利用して叔父が経営する地方の診療所にボランティアへとやってくる。小さいとはいえ初めての仕事に悪戦苦闘しながらも、医療現場での痛みや悲しみを知り、少しずつ成長していく祐作。そしてやがて近づく夏の終わりの中、物語は時間は終焉へと向かっていく……
ざっくりとしたストーリー紹介としては、医学生である主人公が、夏休みの期間を利用した地方の診療所のボランティアを通じて、医療行為について深く考えていくというもの。基本的には現実指向のシナリオで、病気についても(いくつかの項目を除けば)かなりよく調査してテキストに練り込んであります。医学の現場で起こる現実を突きつけられ、主人公が戸惑い、成長していく様を描いていく、非常に真摯な一作と言えると思います。
このゲームは典型的な「死にゲー」であり、各所のレビューサイトでも「死にゲーはもううんざり」的な一刀両断の評価が下されているところが多かったのですが、このゲームを私が高く評価したいのは、通常Badルートとされる「死にED」を、きちんとホスピスルートという形に昇華させている点です。
一般的になぜ「死にED」がBadとされるのか。そのウラには「萌え」の中に含まれる絶対的支配の構図が見え隠れします。つまり、物言わぬ玩具としての少女が取り上げられてしまうということに対する強い抵抗。最後には女の子と共に幸せな結末を迎える萌えゲーの構図は、結局のところは自分の中のアニマに対する強烈な依存であり、それを壊されることに対する恐怖というのが存在しているのではないかと。
しかしこのゲームの場合は、innocentな少女と絶対的支配者としての主人公、引いてはプレイヤーとの関係がありません。たとえ少女が「おにいちゃん」と頼ってきたとしても、物言わぬ玩具としての少女像ではなく、あくまで自立した少女としての人間像がそこにあります。少女を独立した一人格として捉えて人間の尊厳を捉えていくのであれば当然ホスピスというものが考えられるはずですが、それがきちんとシナリオとして成立するためにはプレイヤーと少女が対等の関係でなければなりません。それをギャルゲーの形の中できちんと作りこみ、「相手を思いやる」という当たり前のことを、主人公と少女が同格の関係の中で描いたという点において、他の凡百のギャルゲーから一歩抜きん出たシナリオになったのではないでしょうか。
ただ、こうした点なら何も今さら持ち出さずとも加奈などでも実現できているのでは、という意見もあるでしょうが、このゲームは他のゲームに比べて完結にして要を得たテキストが多く、問題の本質を綺麗に捉えていく的確さがあります。ある意味、当たり前すぎることでありながらも的確なテキストをピンポイント的に打っていけるというのは、シナリオライターの基本的な実力の高さを表すもの。医療やホスピスの世界のことをよく調査した上での丁寧な作り込み。その辺の「なんちゃって」シナリオとはやはり違う。美化されている側面も確かにあるのですが、調査した上での美化と、はなから調査していない美化には、そこに含まれる意味合いに違いが出てくると思うのです。
人間の弱さと、そんな弱さの中でも踏み出される確かな一歩。この対の関係をうまく表現できているホスピスルートに対して、私は高評価を下したいです。多くのレビューサイトではプレイヤーを泣かせるためのホスピスルートだと思い込まれて低評価が下されているのが私としては残念なところです。
ただ、このゲームはなかなか一般的に高評価を得られるシナリオではないだろうと思う節もありました。典型的な「死にゲー」でありながら「萌えゲー」ではない点、そしてある意味中途半端な現実指向。後者に関しては難しいところで、(AIRなどにも当てはまりますが)こういう内容を皮膚感覚で理解できるかどうかという問題、そして皮膚感覚で仮に理解できたとしても、やはりフィクションが現実の持つ重みにはどうしても勝てないという問題。このゲームは、狙っているベクトルの方向性の中では最も洗練された形を取っているにもかかわらず、このベクトルの方向性を感受できるユーザ層が極めて少ないであろう、という、ターゲティング自体の失敗という問題を持っています。正直なところ、万人にお奨めできるゲームとは言い難いとは思います。ですが、例えば加奈のようなシナリオに涙した人であれば、多少なりとも感じ取ってもらえるところがあるのではないか、そう思います。
このゲーム、知人の医学生の間で評判になっていたことからプレイしたのですが、確かに医学生の琴線に触れる内容が数多く盛り込まれていたと思います。大きな革新性を持ったゲームとまではいかないし、全てのシナリオに対して高評価を下せるものではありませんが、今の時代の萌えの潮流に一石を投じた、丁寧に作られた良作、そう思わせる一作でした。
なおシナリオ評価とは別の話ですが、システムの出来の悪さ。これは群を抜いて酷かったです。音が鳴らなかったり、セーブポイントが少なかったり、セーブ個所も少なかったり。私の知人は「シナリオの出来の良さは5本の指に入るが、システムの出来の悪さも5本の指に入る」とか。フリーウェアの方がまだ出来がいいシステムがあるんじゃないかと思える節まであるあたり、終わってます。(^^;)
グランツーリスモといえば、車好きにはたまらない至高のゲーム……らしいんですが、もともと車好きなわけでもなく車免も持ってない私にとっては、むしろドライビング時の爽快感がドライブゲームの決め手。そんなこともあって、首都高バトル0やリッジレーサーVなんかが私的にはヒットのゲームです。
それに加えてPS版のGT1があまり好きになれなかったこともあって、リアルさを追求していこうというグランツーリスモの方向性はちょっと違うかな、という感じで今回の購入は見送ろうかと思ったのですが、店頭で東京246のコースを見かけて思わず購入決定。いや実は私、以前にこの近くに住んでたことがありまして(^^;)。
そんな感じで果たして今回のはどうだろうと思ってプレイしたのですが、これが予想に反して実に面白い。精密なドライビングを要求されるところが非常に面白いのです。
精密なドライビングは確かにGT1でも要求されていましたが、そもそも正確に走ろうにも30fpsでは限度がある。それがハードウェア性能の向上によって60fpsとなり、まさに手に吸い付くように車が動く。巷で言われるリアルさ、それを実感して走れる楽しさ、そして精密なドライビングへの追求の快感。目指すところはGT1もGT3も同じなのかもしれませんが、GT3で感じた面白さはGT1のそれとは全く異質なもののように思います。
マニュアルには、快楽性を追求するなどといってインチキゲームが横行してる、みたいな挑戦的なセリフが書かれてて思わず苦笑。まさにリッジや首都高バトルを指してのことでしょうが、精密なシミュレータはそれを支えるハードあってこそ成り立つ、という当たり前のことを今さらながらに感じさせられました。
私は車のことを全然分かりませんが、それでもそれなりに楽しめるように工夫してあるあたり、SCEの開発力には舌を巻きます。たいしたものです。
一点苦言を挙げるとするなら、アーケードモードのインチキぶりでしょうか。リアルさを追求する、というわりにはアーケードモードでの対抗車の挙動はあまりにおかしい。自分より前に出ると遅くなり、自分より後ろだととてつもなく速い。プレイしていてややシラけてしまった部分もあり、残念です。
とはいえコースも豊富、描画は丁寧、走っていて面白いコースも多い、などなど、やはり一流ソフトであることには変わりないです。ドライブゲームが好きな人なら、一度はプレイしてみて損はないソフトかと思います。
とらいあんぐるハートシリーズ最終作の3 Sweet Songs Foreverを題材にしたファンディスク。ところがファンディスクとしての出来は並大抵ではなく、その辺のゲームよりも遥かに良く出来た、実に見事な逸品です。まさにとらハシリーズの魅力が余すところなく集約された、一連のシリーズを締め括るに相応しい一作でした。
何が素晴らしいのか? 前作・とらハ3の感想でも書きましたが、とらハシリーズの良さはゲーム全体が作り出す世界観のバランスの良さにあります。その素晴らしさは3単体でも十二分に発揮されていたのですが、1+2+3の3作を合体させて作られた本作のバランスの良さはそれを上回っています。「海鳴横断ハイパークイズでPON」なるクイズゲームは各キャラクターの趣味や生い立ちを元に出題がされますが、にもかかわらずこれほどまでにバランスの良い出題になっているのは、キャラクターの多彩性と、それにいびつな偏りがないことを端的に物語っています。これが他のXゲームやギャルゲーだったらどうか?を少し想像してみれば、とらハシリーズのバランスの良さが如実に見えてくるかと思います。
たかがクイズゲームだというのにそのバランスの良さを強烈に見せ付けてくれた本作品ですが、しかしその真髄はサイドストーリー「魔法少女リリカルなのは」にあると言えるでしょう。軽めなタイトル、ポップなノリで展開するストーリーながらも、幼稚園児という年齢設定を活かして愚直とも言えるストレートな感情をうまく表現したシナリオ。その間を縫って挟まれる、とらハ3本編の行間を埋めるミニエピソードが非常に素晴らしい。特に、この世界を見事に丸い世界たらしめている桃子のエピソードは、恭也の視点(とらハ3本編)では描き得なかったものであり、まさに別側面からとらハ3の魅力を存分に見せつけてくれたミニエピソードと言えるでしょう。
加えて、このサイドストーリーのメインテーマは成長と別れ。なのはというキャラクターを使った、とらハシリーズを見事に締め括るエピソードだったと言えるでしょう。EDテーマ「君よ優しい風になれ」は昨今のI'veサウンドの中でも屈指の名曲です。
これほどまでに充実したファンディスクが\5,000を切って売られているというのが私にとっては脅威です。とらハシリーズをプレイした方には必須の一作と言えるでしょう。
少し熱の入った感想を書きましたが、とらハシリーズを総括してその魅力を語れば、各人に個性があり、各人が各様に輝ける世界。そんな世界を見守る温かい空気。日本人の持つ古き良き心の温かさというと言い過ぎかもしれませんが、それを行間から感じ取らせるのがこのゲームの魅力と思います。癒し・和みなどと言われる温かさ(アニメで言えば、マリーベルやCCさくらなどもこうした要素を持っている)こそがこのゲームの真髄です。キャラクター造形に見られる萌え要素だけでこの一連のとらハシリーズ作品の爆発的な人気の理由を語ることは出来ないでしょう。
とらハ3では、萌えゲーであるという認識の元に感想を書きましたが、実はその認識はこのゲームの骨格構造の表層しか見ていなかったのだということを、このリリカルおもちゃ箱でまざまざと見せ付けられた感があります。1+2+3で世界が完成してしまった感があるだけにこれ以上このシリーズで続けるのは難しいのかもしれませんが、これで終わりというのはやはり惜しい。都築さんの次回以降の新作が期待されるところです。
鳳凰学園で格闘部所属の魔神勇二。友と共に鍛錬に励む毎日を送っていたが、右腕に破滅の刻印が現れた途端、彼の日常は一変する。暗殺集団に命を狙われ、愛する者を失い、哀しみに慟哭する勇二……己が理不尽な運命と戦う決意をした彼は、その後8人の少女たちと運命を交錯することとなる……。
Only you 〜世紀末のジュリエットたち〜、それは1996年、アリスソフトの全盛時代とも言うべき時期に会員限定で販売されたソフトです。鬼畜王ランスや闘神都市IIなどと共に、アリスソフトの最高傑作の一つと呼ばれることも多かった作品で、今でもその強烈な個性的作風は多くのゲーマーによって語り継がれている伝説の一作といえるソフトでした。
前作をご存知ない方もいらっしゃるでしょうから前作のWebサイトを紹介しておきますが(http://www.alicesoft.co.jp/catalog/onlyyou/index.html)、どう見ても詩○やらプリ○ミやらタ○リンやらにしか見えないキャラクターたち。内容もまた無駄にまで熱すぎる『漢』のゲーム。FM音源全盛期の当時としては驚異的なまでにかっこいいMIDIによるCD-DA BGMなど、とにかく話題に事欠かない強烈な一作でした。
Only youという作品の良さはどこにあったのか。語ればキリがありませんが、それはコアコンセプトの良さがもたらしたものだと言えるでしょう。前作・本作に共通しますが、Only Youのコアコンセプトの上手さは、愚直なストーリーを熱気と笑いでうまくラッピングし、極度に道徳的な世界観を勇二とタイガージョーという二人のキャラの掛け合い漫才に落とし込んだところにあります。そしてさらに、プレイヤーの道徳観がうまくこの世界の道徳観に引きずり込まれるように作品が作られている。例えば選択肢一つ取って見ても、このゲームの道徳観に反する選択肢を選べば、地獄絵のようなバッドエンドが待つか、さもなくばタイガージョーに殴られるという『ギャグ』によってその価値観を軌道修正される。だからこそ、エンディングで現れる、安直とも言えるラストがすっと心に入ってくるし、アツくなり、そして泣ける。その心地良さがこの作品を伝説たらしめた原因と言えるでしょう。このコンセプトとゲーム内の仕掛けを作り出したイマーム氏とアリスソフトのスタッフ陣の頭脳の良さには頭が下がる思いです。
しかし前作は発売から時間が経ち、美化された思い出と化しているがために不適切なまでの高評価がされていると言えなくもありません。コアコンセプトが良いとはいえ、前作にも大きく分けて3つの問題点がありました。
このように、前作を総じればまさに『未完の大器』という言葉が相応しい一作だったと思いますが、翻って本作品「Only you −リ・クルス−」を見てみると、これらの難点を克服する見事なリメイクが行われています。
このリメイクは、外面においてポップな感じを持たせること、そして内面ではより重厚さを増すことという両側面から行われています。
まず外面においては、キャラクターデザインの幼児化、軽めな曲調へのBGMアレンジ。前作と一文字違わぬセリフを語っている場合であってもそのセリフに堅苦しさがなくなっています。一部のセリフ変更も合わせるとメインヒロインのまゆに至っては性格付けそのものが変わってしまったと言えますが、優等生で味気なさ過ぎた前作のまゆに比べると、人間的な魅力(まあ端的に言えば「萌え」ですが(^^;))は格段に増しています。
これらの修正は一部の旧作ファンには嫌われていますが、単に現在のユーザの嗜好に迎合した改悪だと決めつけてしまうのは早計でしょう。この修正により作品のカドが取れ、そのポップさがタイガージョーや勇二、鴉丸たちの暑苦しさや強烈な個性などをうまく緩和している点は見逃せません。作品全体のバランスは前作よりずっと良くなったと考えます。
一方内面においては、前作のコアコンセプトを踏襲しつつ、さらにより深みを増すように加筆修正が行われたシナリオテキストが見事。唯一、来夢シナリオだけは全くといっていいほど修正がありませんが、それ以外のシナリオでは後半部にかなりの手が加えられています。細かく語るとネタバレになるため割愛しますが、これらの修正は、5年間の間に積もったシナリオ面での後悔をすべて手直ししたという感じの内容でもあり、前作の不満点であったシナリオの厚みが補われています。
前作でも様々なところに見られた、問題の本質に切り込む鋭いテキストは加筆修正部にも見られ、シナリオライターのイマーム氏、ここに健在といえるでしょう。
また、細かいファインチューニングもなされています。昨今のアリスゲームはよくも悪くも時間つぶし的な軽めのタクティクスゲームが多かったと思いますが、同一のタイムテーブル内で何回も楽しく遊べる、シナリオ直結型の極めゲームになっています。前作に比べてイベントが増えている分、7キャラ同時攻略もよりシビアになり、さらには隠し要素も増えるなど、比較的長い時間遊べる工夫も様々です。
総じて言えば、本作品は、前作が持っていた強烈な個性はそのままに残した見事なリメイクであり、未完の大器を現代風に作り直した傑作と称して良いでしょう。こうして時を経て最高の一作にリメイクされたことを、とても嬉しく思います。新しいキャラデザにどうしてもなじめない人を除けば、前作をプレイした人にも、また未プレイの人にもお薦めしたい一作。バランスの取れた優秀な作品として、5つ星をつけたいと思います。
ただ、惜しむらくはやはり当時の冴え渡ったコアコンセプトを継承しているからこそ作り得た傑作なわけで、当時この作品に出会ったときの衝撃の再現には至っていないのも事実です。Web上で散見される酷評もまた、やはり当時の「出会いの衝撃」と比較してしまっているものが多いです。出会いの衝撃がないのはリメイクである以上仕方のないことではありますが、しかし昨今のAliceSoftのゲームをプレイする限り、コアコンセプトの良さを感じさせ、なおかつゲームとして面白い、バランスの取れた作品が少ないのは確かです。本作を見る限り、そうした作品を作れる優秀なスタッフがいなくなったわけではないと思うのです。最近のアリスソフトは、本気を出して勝負に出た作品が少なく、個性を押さえることで安定化を図っているような雰囲気も伺えるだけに、非常に惜しい。鬼畜王ランスやOnly you、闘神都市IIのような、優れたコアコンセプトを持ったアリスソフトの新作を再び見てみたい。そう思わせる一作でした。
白稜大付属高校に通うごく平凡な学生、鳴海孝之。男勝りの女友達・早瀬水月から紹介された涼宮遥と孝之は、紆余曲折を経ながらもお互いに惹かれ、相思相愛の仲になっていく。親友の平慎二も交えた4人は、掛け替えの無い友情で結ばれた者たち。しかしそれはもう戻れない、幼い日々の想い出……。
私は発売されて騒ぎになるまで全く知らなかったのですが、ゲーム雑誌に本編の約1/3にあたる第一章をまるごと収録してプレイさせるという前代未聞の暴挙(^^;)に出て、前評判の高かったのがこのゲーム。話題性も高く、知人からの話や掲示板などでも悪評を聞かなかったため、購入してプレイしてみました。
このゲーム、結論から言うとどう評価してよいのか、非常に悩むゲームではあります。話の大きさ、多面性、多様性などがあり、ゲームインプレッションを書こうすとすると捉えどころがないと痛感させられます。それでも敢えて無理を承知で一言で言うのなら、「テキスト化できない、理屈抜きの恋情と愛情を、ビジュアルノベル形式で表現しようとした野心作」とでも表現できるでしょうか。筆舌に尽くしがたい痛みと温もり、その両方を内包しているゲームです。
ただ、このゲームはプレイヤーの実体験や価値観に評価が大きく左右されるゲームでもあります。このゲームと似たようなシチュエーションを実体験した人や、さまざまな悩みに対して自分なりの結論を出したことのある人は、おそらくどうしてもその経験に考え方が引きずられてしまうのではないかと思います。人間は経験することで物事を分かるようになっていく半面、経験を元に物事を判断するようになるため物事が分からなくなるという面もあります。特にこのゲームは主人公のキャラクター造形がかなり特殊であり、主人公の持つ価値観、恋愛観、セックス観に対してプレイヤーが共感できない可能性が少なからずあります(実際、Web上でもそのような意見はかなり見受けられる)。LeafやKeyが定式化した、無着色な主人公(自意識が希薄で、感情起伏の少ない主人公)と比べると良くも悪くもプレイヤーと主人公の思考との間でギャップが起こりやすく、このため、万人に手放しに薦められるゲームではないと思います。少なくとも、比較的我が強く、物事を一刀両断しがちな人にはお薦めしません。おそらく、鬱気味の主人公のふがいなさにキレると思います。
ところで昨今のビジュアルノベルゲーム、仲間内では「ノスタルジー需要」と称しています。20〜30歳前後の世代が、無味乾燥だった高校時代や中学時代にありもしない恋愛幻想を求めてしまうという需要ですね。この需要はコンシューマギャルゲー(ときメモの存在は外せないでしょう)で発見され、LeafやKeyがこれを18禁ギャルゲーに持ち込み、今ではほとんどのギャルゲーがこの文脈に従っています。しかし翻ってこのゲームは、ノスタルジー需要の皮を最初は被りながらも、そこから一歩踏み込んだテーマを扱っています。この点に関してはギャルゲー界における明確な前進と言え、高く評価できるでしょう。
しかしシナリオの結末は強いファンタジー色に満ちています。果たしてプレイヤーは、主人公のように自省的になりつつも、自分の汚いところ、嫌な自分からは都合よく目を逸らすのでしょうか。それとも、主人公の行動を見て、自らの汚さを実感するのでしょうか。このゲームの表シナリオ(遥・水月・茜トゥルールート)では、主人公はほとんど自分の本当の汚さを自覚しません。しかし裏シナリオではそのことでプレイヤーをちくちくと刺してきます。プレイヤーが表シナリオで何を感じ取るのか。シナリオテキストレベルではなく、そこから一歩さらに踏み込んだところに真実があり、そこまで踏み込むかどうかでこのゲームの評価もまた大きく変わってくるようにも思います。私自身はこのゲームを高く評価したいと思っていますが、それはこのゲームが自分自身の持つ醜さを実感させるに足るほど自分に食い込んできたからであり、主人公に感情移入できたためではありません。いくつか、致命的にシンクロできない部分もありました。
そのためか、最後の最後まで釈然としない偽善的な「何か」が残るシナリオだったように思えてなりません。後一歩の踏み込みが出来ながらも、プレイヤーに引かれることを恐れて敢えてそれをしなかったような印象もあり、永遠の名作になり損ねた未完の大器、という気がしてなりません。
このゲームに関しては何かとネタバレ情報が多いです。ゲームについて語ろうとすれば、常にネタバレになってしまう、そんなゲームです。ですが、攻略法なども一切見ず、すべて情報を遮断した上でプレイすることをお薦めします。出来ればファーストプレイでは特定キャラ狙いではなく、まずは心の赴くままに選択肢を選んでいくことも併せてお薦めしたいと思います。
このゲームに関してはまだまだ語りたいことがありますが、ネタバレはどうしても避けられないため、別ページに分けてあります。こちらをご参照ください。
かつて月からこぼれ落ちた雫を集めて作られたと言われた銀。そんな銀色に輝く不思議な銀糸は、どんな願いでも叶えてくれるという。それは時代を超えて人から人へと受け継がれ、人の想いと交錯してゆく。4つの時代を通して語られる、様々な人模様。いつしか銀糸の伝説は美しい夢物語として伝わり、お伽話として消えていった……
いかなる願いも叶えるという、不思議な銀糸にまつわる4つの物語。一昨年に発売されたゲームが、廉価版として再発売されたものです。DVD版とCD-ROM版が同梱されてお値段は\3,600、実売では\3,000前後とまさに激安。ねこねこソフトが大ブレイクしたきっかけとなった作品でもあります。
ストーリーに触れるとネタバレになるためやや曖昧に書きますが、異なる時代、異なるキャラを使って描かれる4つの物語は、儚くもあり哀しくもあり、本作品のタイトル「銀色」の輝きと、その裏タイトルである「錆」とがうまく対比され、よく描かれていた作品でした。4つの章は徐々に現代へと近づいてくる構成を取りますが、願いや伝承などが時代背景と共に少しずつ質的に変化していく様はなかなかに見事です。十分お買い得な作品と言えるでしょう。
しかし惜しむべきは、やはり第1章、第2章の出来に比して第3章、第4章が比較的平凡な作品であるという点。第1章や第2章は時代背景ゆえの人々の感情や想いとそのちぐはぐさが切なさや哀しさを見事に演出しているのですが、これが現代に近づいてくると感覚的な目新しさもなくなり、かといって何か目新しいものがあるわけでもなく、ただ淡々と物語が進められてしまったように思われます。最後の大団円にしてもやや取ってつけたような感が否めきません(例えば篠崎あやめの母親、あんな扱いでいいのか?(^^;)とか)。
おそらく意図はしなかったのでしょうが、第1章〜第4章の全体の流れを俯瞰した際、そこにはネタ的なつながりだけでなく、歴史的な人間の価値観の変遷も併せて読み取ることができます。そしてこれもまた意図はしなかったのでしょうが、明らかに変わっていったものと、変わらずに残り続けたものがそこにはあります。しかしそれらは明示的に語られたわけではなく、ただそこにある人間ドラマから意図せずたまたま「染み出てきた」ものでした。確かに各時代に描かれたキャラクタを擬人化して生きた人間捉えるのであれば、その人々は作品テーマを意識して行動するわけでは当然ないでしょうし、そこに意味論を見出そうとするアプローチ自体が誤りであると言うことも出来るでしょう。しかしこの作品はそうしたものを語るに十分な素材「銀糸」を持ち合わせていたにもかかわらず、そこに深く立ち入ることを意図的に避けてしまった感があるだけに極めて惜しい。良く言えば人間ドラマ重視ですが、悪く言えば広げた大風呂敷を収集し切れなかったとも言えるだけに、もう少し作品の骨格を固めた上で人間ドラマを展開して貰いたかったところです。この二つは決して両立しないものではないのですから。
この作品のパッケージには「眩しかった日のこと…そんな夏の日のこと…」という、作品中の一節が書かれていますが、こうした言葉に理屈抜きで情動を感じる人にはお奨めできる作品、半面、知的好奇心のような興味の感覚を感じる人にはあまりお奨めできない作品のように思います。
描かれる人間ドラマは比較的優秀な出来栄えだけにもう少し頑張って欲しいと思うところ。ただ、この次の作品の「みずいろ」と比較すると「銀色」の世界観の方が遥かに上手く、ねこねこソフトの持ち味は「銀色」で描かれたような、「今でないとき、ここでない場所」の物語での心理描写にあるように思います。次回作に期待したいところですね。
無数の国々でその形をなす大陸“ユージア”。そのなかにはひとつの大国と、その他の国たちのあいだの『武装平和』とも呼ばれる一触即発の状態があった。そんなとき、太陽の重力に引き寄せられた小惑星がロシュ限界を突破、1000以上に砕けた岩石の礫と塵を地表へ、そしてユージア大陸へと撒き散らした……なんていう設定はどうでもいいかもしれませんが。(笑)
リッジレーサー・空版とでも言うべき、ナムコのフライトシミュレータゲーム。アメリカの大規模テロ事件の直後の発売だったため、大掛かりなCMも自粛され、非常に静かに発売されたソフトではありましたが、非常によくできた、爽快感溢れるゲームに仕上がっています。
リッジレーサーもそうですが、このゲームもまた徹底的にゲーム性と爽快感を追及し、リアルさは適度に目をつぶる、という姿勢が貫かれています。無駄なまでにかっこいいミッションブリーフィングデモ、敵機の背後に回りこんでからミサイルを打ち込む空中戦、地上すれすれを飛行して地上物を斉射していく攻撃、スターウォーズのような建物突入戦。リッジレーサーV同様、PS2ならではのポリゴン能力の高さがうまく生かされ、フライトシミュレータにありがちな「遠目で見ると綺麗な建物、近場で見ると模様がついたただの地面」ということもなく、十二分にそれらしく見えるように出来ています。正直、フライトシミュレータもここまで来たのか、と思わせるに足る出来と言えるでしょう。
ミサイル70発以上を搭載、いくらダメージを受けても機体の能力は落ちず、それも基地へ帰ればあっさり修理。操作系も極めて簡単、バラエティに富む面構成、初めてのプレイヤーでも数時間程度で楽しみながらなじんでいけるように組まれています。フライトスティックまで合わせて買うと10000円を越える結構なお値段のゲームではありますが、十分推薦するに足るゲームと言えると思います。是非一度、プレイしてみてください。
海と山に囲まれた常磐村。常磐――“永遠に変わらない”と名付けられた村で繰り広げられる、4つの物語。漫画好きな巫女さん、お気楽な先輩、元気な妹とおしとやかな恋人、そして不思議な黒服をまとった名の無い少女。一話あたり約4〜6時間程度、各話で基本的に物語が完結するため、非常にプレイしやすいゲームです。プレイするのが非常にもったいないほどよく出来ており、私は約1ヶ月をかけてプレイしました。
ゲームの特徴としてまず挙げられるのは、「一見、○○のように見えるんだけど実は○○だった」という罠が至る所に巧妙に張り巡らされている見事なシナリオ。叙述トリックと呼ばれる手法だそうですが、4時間〜6時間程度で完結する適度な分量のシナリオに、細部にまで行き渡ったトリックが仕掛けられており、各章ごとに「うはー」と唸らされること請け合いでしょう。
しかしこのゲームが素晴らしいのはそうしたトリックの巧妙さではなく、むしろその先にある作品のテーマと言えます。この作品が言外に語っているテーマは、端的に一言で言えば愛の形そのもの。ただ、それが決して美しい側面だけを持つものではなくて、いびつな面、汚い面までをも包含していること、そしてそれが人間の本質であり、素直な人間の感情なのだ(すなわちそこには通俗的な善も悪もない)ということを、ある種の美しさを伴いつつ、複数の章立てで多面的に描いたところが非常に素晴らしい傑作と言えます。
極限的なシチュエーションに追い込むことで(例えば陵辱や監禁など、現実にはあり得ない異常な状況に追い込むことで)人間の本性を剥き出しにさせて人間性を描き出す作品は比較的多いですが、あくまで表面的な美しさを保ったまま人間の本質的な部分を見事に描いた作品は非常に稀有と言えるのではないでしょうか。
情動を内面から描き出し、キャラクターに感情移入させるタイプの作品(Kanonや君が望む永遠などがこのタイプに属します)とは違い、むしろ作品構成上の工夫によって知的に考えさせる作品であり、感情的に理解しようとするとかなり痛い目に会う作品でしょう。Kanon的な萌えゲーを期待して玉砕したプレイヤーや、どこか噛みあわないレビューも数多く見かけます。このためあまり大手を振るって他人に推薦できるゲームではないかもしれませんが、切なさよりもむしろそれ以上に「何が正しいのか?」を深く考えさせられる作品であり、作品のエピローグもまた非常に示唆に富み、考えさせられる内容であると思います。
もう夏は終わってしまいましたが(^^;)、謎解き的なゲームが好きな方には是非お奨めしたい一作です。
ネタバレ要素については別ページに掲載しました。よろしければ併せてご覧ください。
パッケージに大々的に書かれる「お兄ちゃん、ボクのこと、奴隷にして☆」、挙句の果てにはご丁寧にも丸文字で「幼なじみの従妹と、いちゃいちゃごろごろするゲーム」とまで書かれた、ベタベタのラブコメ……
などとパッケージに騙されてこのソフトを買う人はおそらくいないでしょう。前作sense off、さらには13cm時代の作品フロレアールなどでその名を馳せた元長氏。そう単純なシナリオではあるまい、と。確かによーく見ると、パッケージの裏面には「幼馴染みを首輪でつなぐ奇妙な生活の果てに遭遇するのは−恋愛の最終形」の文字が。ゲームを最後までクリアすれば、この言葉の意味するところがわかるでしょう。
前半4つの章、そのうち1つの章(霞シナリオ)につながるラストエピソードの合計5本のシナリオで構成されるストーリー。前半はエロエロ、後半は一気に思考の世界へとまくし立てていくという構成。sense offの珠季シナリオに代表される絶品な日常描写とキャラ造詣は影を潜め、何やら煮え切らない話が進みます。どのシナリオをクリアしても妙に残る違和感。不完全な物語の解決。すべてが丸く収まるEDがなぜかない。半面、不必要にエロエロ(いや分量的にはたかがしれてるんですが、このタイプのシナリオゲーム系としては異色)。otherwiseも凡百のギャルゲーメーカーに成り下がってしまったのか……そんな違和感や不安感を残して語られるラストエピソードはそれらの原因をうまく説明してくれます。ああ、このために前半はこういうシナリオにしたのか、と。
ただ、そのラストはある意味、非常に救いがありません。いや別に死にゲーとかそういうんじゃないですし、巷で言われるように「難解すぎて分からない」わけでもありません。今回はsense offなどに比べれば饒舌すぎるほど丁寧に、シナリオの意味付けまで書かれており、よく読めば意味は十分掴めるでしょう。ですが、このラストを受け入れられるか否か。作者の意図が強烈な皮肉にあったのか、それとも本物のキ○ガイさんなのかと言われれば少なくとも後者ではないのでしょうが、これを「受け入れる」「受け入れない」という観点ではなく、事実描写と受け止め、客観的に「あはは」と笑い流せるか否かがこの作品の評価の大きな分かれ目と言えるのではないでしょうか。
考えてみれば、sense offのときはこれを笑い流すどころか「何言ってんだろ、この作者?」という解釈に陥ったが故に作品を勘違いしていたということを本作で痛感しましたが、sense offにセンス・オブ・ワンダーを感じるのだと言う人や、小難しい議論が大嫌いだという人、純粋に萌えゲーが好きな人には本作はお奨めできないです。下手をすれば、sense offの評価すらひっくり返ってしまう可能性すらあるように思います。
sense offの結末に納得できず、もう一作品だけ様子を見ようと買った作品ではありましたが、予想以上の拾い物。ただそうはいっても本作品もsense offも、現実と虚構の絶妙なバランスとはいかにあるべきかという答えの出にくい難しいテーマを敢えて避け、今の世界の異常性を語るに留まっています。この点、ある意味では詰めの甘さが残っていると言えなくもありません(まあ十二分な出来ではありますが)。また、今後の作品の方向性になると思われる『圧倒的な楽園』は、数多のメーカがひしめく激戦区。斜に構えた作品作りはおそらく許されないであろうその中で今とは違った形の『プロの仕事』をいかに見せるのか。それはそれで非常に楽しみでもあります。
※『未来にキスを』に関しては、ネタバレゲームインプレ、及び Sense Off も踏まえた後日談の 2 つを別ページに掲載しています。ご興味のある方はお読みください。
Piaキャロット本店でバイトをする受験生、神無月明彦。本店のオーナーに呼び出され、8月に新規オープンする海岸沿いのPiaキャロット4号店の夏季限定ヘルプをすることとなった。普段住む街から遠く離れたこの4号店で、彼を待ち受けているのはどんな出会いだろうか?
Piaキャロットへようこそ!と言えば、PC-98時代のギャルゲ全盛期から延々と続く、名実ともにF&Cの代表作。中でも前作の2は甘露樹さんやCharmさんといった有名原画家さんによる超一流のフルカラーCGによって一躍名を馳せたゲームでした。そうした原画家さんがLeafに移籍?したあとはもはや3が出ることはあるまいと思っていた私などは、実に4年ぶりになる新作登場(ちなみに2は97年)に、期待と同時に諦めにも似た失望をしていた、というのが本音なところ。ところがフタを開けてみたところどうかと言えば、予想外に良く出来た作品で驚きました。簡単に、トピックをまとめてみたいと思います。
前作2のときもそうでしたが、Piaキャロットというゲームは昨今の多くのノベルタイプのゲームとは随分性質が異なります。ノベルゲームの多くはその状況やプレイヤーの心理描写にテキストで深く切り込んでいくことにより、プレイヤーの思考そのものをテキストでなぞらせて矯正していくもの。しかしPiaキャロットはそうした深い心理描写を楽しむゲームではないでしょう。
バイトの従業員に住み込みのアパートをつけ、引越し費用も会社持ち。バイト君まで含めて北海道やら沖縄まで社員旅行。加えてお盆休みの日曜日に休業するファミレスなどあってたまるか!というところですが、そんな些細なことなどおかまいなし。夏に溢れる開放感、新しい出会いの予感、一夏の恋、そういう青臭いシチュエーションが盛り沢山。そうした『雰囲気』に自分のチャネルを合わせられるかどうか、それが"Pia キャロット"というゲームを楽しめるか否かの一つの鍵になります。
前作2もかなり人を選ぶゲームでしたが本作3もやはりその傾向は強く、良くも悪くも前作の雰囲気を色濃く残しています。Pia 1,2からのネタも比較的多く含まれており、前作を楽しめた人には楽しめる一作と思います。
Piaキャロットには3作品を通じて、真夏の開放感の中であり得もしない出会いの物語を『お手軽に』楽しもう、というようなコンセプトが存在しています。キャラ配置も年下、同世代、年上すべてをバランスよく取り揃え(今回は設定はともかく見た目は全体的に若めにされていますが)、年上シナリオはちょっと背伸びっぽく、同世代は恋愛ドラマっぽく、年下については妹ゲームっぽく、と割と綺麗に色づけされています。そうした様々なシナリオを試食モードよろしくお手軽に食い荒らせる、というのがPiaキャロット2で強く打ち出された方向性であり、それを継承したのが今回の3である、と思います。
そんな試食的なシナリオは昨今の重たいノベルゲームに慣れたユーザからするとあまりに軽すぎ、満腹感を得られないと文句も出るようですが、雰囲気だけ楽しみながらさらりと流せるお手軽さは私からするとむしろ長所に感じます。単に尺を稼ぐだけの無駄に長いシナリオ、意味不明の展開、トラウマゲー、鬱ゲー、そんなゲームばかりが氾濫する昨今において、数時間の枠内で起承転結を無理なくさらりと見せるシナリオというのは、軽いながらもよく練り込まれているシナリオなのです。もちろん全部のシナリオが良いとは言いませんし、ましてやシナリオゲーとして超一流だと言うつもりは全くないですが、いつも重たいフランス料理でなく、たまにはこんなジャンクフードも食べたくなる、それがこのゲームの特徴でもあるでしょう。ジャンクフードにしては高すぎる、というご意見はさておき、ですが。
ゲームの面白さに直結するわけではありませんが、今回のPia 3のユーザインタフェース(画面)のデザインは非常にセンスの良さが光る逸品でした。見やすいアイコン配置、アニメーションONでも不快感なくプレイできる速度、ワンポイントアクセント的な画面効果、一画面にまとめられたコンフィグなど枚挙に暇がありません。基本的な画面デザインはPia 2から継承しているとはいえ、よく作りこまれています。見事です。
また、作品を影から支えるBGMもまた、おおくまけんいち氏のセンスの光る逸品でした。おおくまけんいち氏は最近ではきゃんバニ6 i-mailのBGMも手がけられていますが、楽曲としてきちんと成立しうる曲を書ける数少ない作曲家と思います。ゲーム中では違和感なく流れ、しかし単体として聞いても十分聞けるBGMというのは昨今では非常に少なくなってきています。曲調は随分違いますが、Keyの折戸さん、アリスソフトのShadeさんなどと並べるに足る作曲家として推奨したいところ。BGMについては是非とも音楽モードでフルコーラスを聞いてみてください。
私としては非常に気に入った本作Pia3ですが、しかし巷のレビューや掲示板などを見ていると好評とは言えない状況のようです。不満事項を大きく分ければ、(1) ヒロインさやかシナリオについて、(2) シナリオの起伏の少なさ、(3) ヒロインの心理が分からない、(4) F&Cのゲームの売り方、などに集約されるように思います。批判も玉石混合で、ユーザが悪い、またはメーカーが悪いと一刀両断に出来る話ではないでしょうが、ただ、今のF&Cにかつての勢いがなくなっているということだけは確かだろうと思います。もともとF&Cは原画力を主な原動力としてユーザに対して圧倒的な売り手市場に立っていたメーカです。例えばここ1〜2年間に行われた売上拡大施策(F&Cカードや95/98系ゲームの2000移植、コンシューマ機からの逆移植など)もメーカ優位でこそ成立し得たはずのもの。しかし今や脚本力、原画力などは低下もしくは横ばい(この市場で横ばいであることは衰退を意味する)であり、パッケージそのものの魅力が低下してきてしまっている。いわゆるその拠り所を失いつつあります。
またそれに加えて大きな問題は、ここ最近の売上拡大策のほとんどが長期的な戦略や展望に基づいているようには見えないことです。F&Cカードにしろ今回の通販にしろ、ユーザを騙せるのは数回が限度というものです。数万人の会員を有し、コンスタントに通販デフォルト買いという上質なファン層を抱えるアリスソフトと比べれば、その戦略性の弱さは言うに及ばず。極めて安定性の乏しい、危険性の高い運営であると感じずにはいられません。特に昨今の短絡的な戦略は追い詰められて既存資産を食いつぶしている状況にも見えるだけに、転落一辺倒となってしまったLeafの二の舞にならないことを祈るばかりです。
多方面でかなりの顰蹙を買っているゲームではありますが、シナリオの出来の『悪さ』もひっくるめて、個人的な好みとして★×5をつけたい作品です。シナリオの粗さもまた魅力に思えるだけのカリスマ性がPiaキャロットという作品にはあります。とはいえそうしたカリスマ性というのが単純に本作だけから発生しているものではなく、1、2の既存資産があるが故に成立しているというのも確かであり、一歩引いて★×4としておきたいと思います。
とはいえ社会人だからこそ11,000円でこの程度でも「ま、呑み会2回分ぐらいだし、たまに高いジャンクフード食ったと思えばいいか」で済ませてしまうところですが(もともとPiaキャロットシリーズに内容面など期待していないというのもあります)、大悪司を諦めてこっち買ったのに、みたいな人であれば笑って済ませられる作品でないのも確かでしょう。万人にお奨めできる内容・クォリティでないことは確かです。
私にとっては、少なくともこのゲームをプレイしている間だけは昔に戻って楽しめた、そんな感じにさせてくれたというだけでも十二分すきるほどの価値がありました。ある意味、安心して「バカ」になって楽しめるゲーム、こんなゲームもたまにはあってよいのではないでしょうか。
二重影-Shadow and Shadow-を題材にした、ポップでキュートでキャッチーなアクセサリー集……だそうですが、どの辺がポップでキュートでキャッチーなのかは理解に苦しむところ。コンテンツは大きく分けて3つで、ショートストーリー2本、クイズ、デスクトップアクセサリ。これに二重影のBGMアレンジCDが添付されています。
ショートストーリー「イルとスイの日常」は軟禁された二人の少女が性に目覚めていくというベタベタなファンディスクもの。もう一方の「砦に帰す」は二重影より五年ほど前の彩のシナリオを描いたもの。後者の方は前者に比べるとベタさは少なく、割と二重影に近い軽めのショートエピソード。クイズの方はミニシナリオ仕立てとはいえ、取ってつけたようなシナリオが苦しいところ。全般して本編よりも確かにHの密度は濃いのでしょうが、CGの質はともかくも作りに関してはいかにも同人誌的であり、ファンディスク的。同人誌を買うような感覚で買うのならそこそこお奨めできる、といったところかと思います。
私としては終ノ空、二重影といった重たい作品を作れるメーカなだけに次回作に全力を注いで欲しいと思う部分もありますが、たまにこういう息抜き的なファンディスクを作ってガス抜きをするのも良いのかもしれませんね。
シャドー・モセス島事件の後、闇市場に流出したメタルギアの技術情報によりメタルギアの亜種が世界中に拡散。核武装国にとってメタルギアが一般的な兵器になりつつある中、ソリッド・スネークは、新型メタルギアが極秘裏に輸送されるという情報を掴む……。
Metal Gear Solid 2(MGS2)、PS2の発売後ほどなくして発表されたタイトルの一つで、それから発売まで約2年近くの開発を経ていよいよ満を持して登場。PS版Metal Gear Solidの緊迫の潜入の臨場感をPS2のハード性能をフル活用してさらにグレードアップ、といった感じで、アクションゲームながらその戦闘はさながらムービーを見ているかのよう。違和感なく跳ねる水しぶきや空気の泡、飛び散るガラス。特に水の表現はもともとポリゴンであっても極めて難しい分野であるにもかかわらずここまで美しく再現しているのは脅威としか言いようがありません。同じPS2のポリゴンゲームでもここまでのCG表現を達成できているのはコナミだけで、その圧倒的とも言える技術力の高さには舌を巻きます。
などなど、とにかくCGの美しさに関しては圧倒的なMGSですが、ゲームとして見た場合にはかなりの疑問符がつくゲームだったと言わざるを得ません。問題点は2つ。一つはアクションゲームとして見た場合の新鮮味のなさ、もう一つはシナリオ自体の悪さです。
まず新鮮味のなさについて。本作もFFシリーズも鬼武者もそうですが、一度でもユーザに何らかの衝撃を与えてしまうと、次回作ではそれを超えるだけの何かの提供が求められます。この点において、前作MGSはPSのポリゴン(お世辞にもハード的には強いとは言えない)を非常に巧みに利用し、緊迫する侵入作戦や銃撃戦を上手く作り上げていました。これに比較した場合、MGS2はハードウェアの進化に伴ってのCGの表現力は確かに増したものの、本来的なMGSが持っていた面白みである、「緊迫する侵入作戦や銃撃戦」の部分について大幅な進化を遂げることができませんでした。プレイヤーはCGのクォリティに見合うだけのシチュエーションを期待するというもの。やっていることが前作と大差ないのでは失望感を否めません。
またゲームのサイズに比べてマップが狭いことや、デモムービーが多すぎるというのも、映画としてはともかくゲームとしてはどうかという気がしてなりません。
次にシナリオの悪さについて。Sofmap特典として入手したメイキングビデオの中で、小島監督は前作終了時点で本作のことは念頭になく、それで整合性を取るのに苦労した、と述べられています。確かにかなり無理のある設定の繋げ方だなとは思うものの、この点に関しては商業主義第一の世の中と思えばかなり健闘したと言って良いのでしょう。
ただ、最終的な結論としての落としどころに関してはあまりにも陳腐すぎ、くだらないとの謗りを免れないものだったと言わざるを得ません。確かにFF-X同様、国際化を念頭に置いているゲームは全般してシナリオが大味になりがちですが、考え煮詰めた上で敢えて大味にするのと、そもそも考察不足なのとでは話が違います。MGS2の場合は後者であるように私には感じられます。以下ネタバレですが、次のように考えられるはずです(文字反転)。
DNA(遺伝情報)は生物学的にいやがおうにも後世に伝えられていくものであるのに対して、文化や善悪価値基準を後世に伝えていくのは人間が意識的にしなければならないことである、というのがMGS2のテーマなのでしょうが、「文化や善悪価値基準を後世に伝えていく」ようにしなければならないと考えるのは我々の頭脳であり心であり、それをもたらしているのがDNA(いわば本能)である可能性を見落としています。例えば分かりやすい例で言うと、自分の産んだ子供を愛しいと思い、正しく育てていこうと思う親心、それもまた生物としてDNAに組み込まれた人間の特性である、ということです。いわば文化や善悪価値基準が高レベルのものであるとするなら、DNAはそれに対応する低レベルのものであり、ほぼ同一のものを別の視点から見たものとも言えます。この点においてMGS1/2の二つのメッセージは並存するものではなく、階層的に語られるべきものでしょう。
実際、遺伝子的な異常分子であるリキッドやソリダスを潰していこうとする行為、これこそまさに人間のDNAの持つ「種」の維持・存続機能です。この視点から、さらにDNAの特性を掘り下げていった方がテーマ的には濃くなったでしょう。もちろんそのような掘り下げ方は極度に難しくなるので避けるべきにせよ、こうしたことを考えた形跡がほとんど見られないように私には感じられます。
個人的にはPS2で最も期待していたゲームだっただけに、やや肩透かしの感を否めません。2プレイほどしましたし、値段相応のゲームであるとは感じられますが、やはりシナリオ面にもこれだけの重厚長大なゲーム開発に見合うだけのものが欲しい、と痛感するゲームでした。
ショートストーリー2本とユーザ投稿などを含んだCIRCUSのファンディスク第2弾。まだ小さいメーカではあるものの制作されるゲームはなかなか良く出来ており、今後が期待されるところ。そんな中で発売されたファンディスクですが、中継ぎのための小物という意味でうまく作られた作品だな、という感じの一作でした。
水夏0章は本編と同じくトリックもの、とはいえシナリオサイズが小さいので張れるトリックもたかがしれており、本編の1つの章といったイメージでプレイされると肩透かしを食うところ。また水夏外伝はテキストにして高々数ページという分量しかなく、ネタ的にもかなりハズしている気がします。
一方、D.C.〜ダ・カーポ〜 in 聖夜のアルティメットバトルの方は来年春に発売予定のゲームのpreview版。シナリオの中身という意味ではほとんどないに等しいのですが、ヒロインキャラのかわいさやシナリオの伏線・設定をうまく織り交ぜながら無理なくショートストーリーの形に仕上げられており、実質的は体験版・CMのようなものであるにもかかわらずそれなりに楽しめるように作られています。ショートヘアのヒロイン、音夢はCVの鳥居花音さんの見事な演技と相まって凶悪なまでにかわいい萌えキャラになっており、水夏第2章のさやか先輩に転げた人ならハマること請け合い、でしょう。
とはいえ全般すればやはり分量的にも内容的にもファンディスクであり、次回作「D.C.」までのつなぎの一作といったところで、安いとはいえ無理して買うほどのものでもないかな?と思います。むしろpreview版を見せられて次回作「D.C.」への期待がいやがおうにも膨らむところ。非常に楽しみです。