2004年 ネタバレなしゲームインプレッション


 このページは、私が2004年にプレイしたゲームに関するネタバレなしのゲームインプレです。ネタバレありのゲームインプレに関してはインデックスあるいはネタバレなしのゲームインプレから飛ぶことができます。なお、直リンクから飛ばれてきた方々はトップページはこちらになります。よろしければどうぞお立ち寄りください。

※最近、インプレ整理のための時間があまり取れずにメモ書きのようになっているものもありますが、ご了承の上お読み頂ければ幸いです。

インデックス

※リンクが貼られていないものはゲームインプレを記述していないものです。また、このページ内で一部ネタバレを含むものについては白文字反転をしています。

ゲームタイトル メーカ ハード インプレ お気に入り度
沙耶の唄 NitroPlus Windows ネタバレなし ★★★
Project Gotham Racing 2 Microsoft XBOX   ★★★★
Fate/stay night TYPE-MOON Windows ネタバレあり ★★★★
Remember 11 〜 the age of infinity 〜 KID PS2 ネタバレなし / ネタバレ妄想ページ ★★★
Canvas 2 〜茜色のパレット〜 F&C FC01 Windows ネタバレなし ★★
CLANNAD Key Windows ネタバレあり(未完成) ★★★★★
CARNIVAL SML Windows   ★★
モエカす ケロ Q Windows  
君が望む永遠 Fan Disk age Windows    
3days -満ちてゆく刻の彼方で- Lass Windows   ★★★★
グラディウス V Konami PS2 ネタバレなし ★★★★★
東方永夜抄 上海アリス幻樂団 Windows ネタバレなし ★★★★★
ギャラクシーエンジェル Eternal Lovers ブロッコリー Windows ネタバレなし ★★
DUEL SAVIOR 戯画 Windows ネタバレなし ★★★
エースコンバット 5 ジ・アンサング・ウォー ナムコ PS2   ★★★★
Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 Key Windows ネタバレなし ★★
RIDGE RACERS ナムコ  PSP ネタバレなし ★★★★
みんなの GOLF ポータブル SCE PSP ネタバレなし ★★★★
アカイイト SUCCESS PS2 ネタバレややあり(^^;) ★★★★

沙耶の唄

 交通事故によって認識障害に陥ってしまった主人公、匂坂郁紀。事故によって、彼の五感で感じられる世界のすべては、吐き気を催しそうなグロテスクなものに一変してしまった。何もかもが歪み、爛れて(ただれて)いく世界。かつて親しかった友人たちから向けられる救いの手すらも、郁紀にとっては憎悪を感じずにはいられないもの。そんな彼にとっての唯一の救いは、ただ一人、『彼の五感で』普通の少女に見える沙耶という存在があることだった……。

 メカとロボットの萌え燃えから離れられない Nitro+。さすがに食傷気味になってきたのでちょっともうご勘弁かな……と思っていたのですが、プレイ時間も短く、設定にも興味を引かれるものがあったのでプレイしてみました。結論から言うと、(あまり好みではなかったのですが)非常に良く出来た素晴らしいホラー作品でした。「サスペンスホラーADV」という看板に偽りなし、といったところでしょうか。

 認識障害によってある日突然に崩壊する日常、徐々に心を侵食していく狂気とモラルハザード。そうした絶望の中に唯一存在する、沙耶という異形の存在、そしてそこにある恋愛という名の共同幻想の世界。しかしその救いの世界すらも、実は狂気の世界への入り口でしかない。郁紀の『人としての心』がどんどんと狂気に冒されていく様子は、見ていて背筋に寒さを覚えること間違いなし。しかもその狂気の世界を、内側と外側の両方の視点から描いているため、なお一層、郁紀の見る世界の『異常さ』が際立ちます。この圧倒的な虚無感や絶望感、その恐ろしさに引き込まれるのは、やはり人間の持つ「恐いもの見たさ」の習性によるものなのでしょうが、かくいう私も、作品の気持ち悪さや圧倒的な虚無感にぐいぐいと引きずり込まれ、プレイ中はかなり楽しみました。優秀なホラー作品はかくあるべし、というお手本のような作品ではないでしょうか。尺の短さ(5 〜 6 時間程度)にもかかわらず内容は充実しており、非常に密度の濃い作品であることも間違いありません。

 ただ、極めて優秀な作品であることは認めつつも、自分の好みかどうかと言われると微妙なところです。というのも、例えば Phantom of Inferno のように「絶望のどん底に叩き落されながらも、最後には(人間の一般的な感覚での)それなりの幸せに至る」ような作品とは異なり、本作品はどこまで行っても本当に救いがありません。例えば、本作品には 3 つのエンディングがありますが、どの一つを取っても救いがありません。(※ ネタバレのため反転)

  1. 病院送り ED は「人間」という枠にとらわれた結果、社会生活は取り戻せるが愛を得ることはできない。
  2. 耕司勝利 ED は狂気の世界を「人間」という名の理性が押しつぶす話だが、最後には理性の世界にいたはずの耕司が狂気の世界に囚われてしまう。
  3. 沙耶 ED は外敵を排除してハッピーエンド……になるはずが、結局愛するものを失ってしまい、郁紀は虚無の世界に生きることになる。

 おそらくこうした『とことん救いがない』ことをも楽しめるかどうか(=完全なホラー作品を楽しめるかどうか)、がこの作品を楽しめるかどうかの一つの分水嶺になるのではないでしょうか。表面的な意味でのグロテスクさなどもあり、かなり人を選ぶ作品のように思います。

 私の場合には、どちらかというと螺旋回廊 2 のような「なんちゃってホラー」作品が好きで、ここまで徹底したホラーだとなかなか楽しめない、というのが本音なところです(いや、作品に罪はなくて単なる好みの問題なんですが(^^;))。一貫性がある優秀な作品であり、作品世界に引き込まれたことは間違いないものの、好みかと問われるとやや困ってしまう一作でした。

Fate/stay night

※ Fate/stay night のインプレはネタバレありのみです。申し訳ありませんが、プレイ終了後にお読みいただければ幸いです。

Remember 11 〜 the age of infinity 〜

 2011年1月11日、日本列島の最北端「稚内」を目指して飛んでいた小型旅客機 HAL18 便は、原因不明のトラブルに巻き込まれて雪深い山脈へと墜落してしまう。九死に一生を得て生き残った 4 人の人たちは、たまたまあった近くの山小屋へと非難する。しかし一向にやってこない救助、減っていく食料、薪、生じてゆく心の亀裂。さらにそこにあった 7 月 4 日付けの未来の新聞、さらには謎の現象が、ますます彼らを混乱の渦へと陥れていく。果たして彼らの行く末は……?

 このサイトでも数少ない ★ × 6 つの作品の一つである、Ever 17 〜the out of infinity〜に続く、シリーズ第 3 弾として登場した作品、それが本作 Remember 11 〜the age of infinity〜 です。特に前作 Ever 17 はその圧倒的とも言える出来の良さからメーカー KID に対する評価が一変した、そんな伝説(笑)まで生み出した作品なだけに、シリーズ第 3 弾である本作には発売前からかなりの期待が寄せられていました。かくいう私も、Fate/stay night で手痛い目を見ていただけに今度こそは、と思ってプレイしたのですが、結論を先に言えば、これまたがっかりさせられる結果となってしまった、非常に残念な一作でした。

 さすがにインフィニティシリーズを語るだけのことはあって、その作品設計は見事としか言えないものがありました。至るところに仕掛けられたトリックの嵐、小刻みでありながらも理路整然と作られた情報の出し方、それを飽きることなく見せていく展開の妙、それでいながら最後の最後までアクロバティックなトリックを見せつづけてくれた本作品は、さすがとしか言いようがありませんでした。ゲームを最後まで解き終わった上でシナリオを解析してみると、とてつもなく綿密に設計されている様子もうかがえます。掛けられたトリックの大きさやその巧妙さだけを比較するのであれば、確かに前作 Ever 17 を凌ぐ内容である、と言えると思います。

 また、森永理科さんをはじめとする声優さんの熱演も見事(「ま〜るかいて、ちょん?」が耳から離れません(笑))、BGM や CG も超一流、哲学・心理学・精神医学・物理学などのギミックなども細かく作られており、数十時間のプレイ時間も飽きることなく熱中して一気に遊び倒してしまいました。

 ……が、問題はその後にありました。このゲーム、2 つの表ルートがあるのですが、それらを統合するハズの第 3 のルート、すなわち物語とゲーム全体の『解決編』となる最終ルートがまるごとごっそりと欠けているのです。おかげで、コンプリートした直後はなんのことやらさっぱり分からず、まさに文字通り「ワタシを殺す 記憶の迷路」、無限のループへとご招待、となります。おかげで、公式 BBS はもとより、様々な Web サイトでこれでもかというぐらい不満が続出。Ever 17 のようなカタルシスを期待していた人たちにとっては、これほどないショックであったことは間違いないでしょう。かくいう私も開いた口が塞がりませんでした。(^^;)

 第 3 ルートをまるごと削った理由が商業的理由であるのかどうか、またそういうやり方が正しいのかどうか、といったことを議論すると不毛になるので、その部分についてはあれこれ言いたい気持ちをぐっと堪えることにします。しかしそれをさておいても、このゲームが『完成品』と言えるのかどうかというと、やはり『未完成品』、あるいは『欠陥品』といわざるを得ないと思います。その理由は、この作品におけるトリックが、ギミックではなくテーマであるからです。

 一般論として言うのであれば、「すべての謎が解明されていない」ということは必ずしも未完成品であることを意味しません。例えばFC01の水月は、決してすべての謎が解き明かされていたわけではありませんし、人によりどこまでその核心に踏み込めたのかはまちまちでしたが、ほとんどのプレイヤーは同じテーマ性と結論を感じ取ったはずです。あるいはエヴァンゲリオン(TV版)も、当時叩かれてはいたものの、テーマ的観点から見れば一貫性があり、TV版最終話の結末も、テーマ的結末としては全くもって正しいものだったと言えます。そういう意味で、エヴァンゲリオン(TV版)も、作品としては完成されているのです。

 つまり、作品における『謎』がギミック(※)として存在していて、作品の主題(テーマ)として存在しているわけではないのであれば、すべての『謎』が解き明かされなくても構わないのです。不満は残るかもしれませんが(^^;)、作品として未完成、あるいは破綻している、ということは少なくともない、と思うのです。

※ギミック … 手品において秘密の仕掛けから目を逸らすために使われるモノや、広告などで一目を引くために行われる工夫のことを指す用語。要するに『人の気を引くんだけれども、そこは本質じゃない』というモノを指す言葉です。

 ところがこの作品の場合には、そうしたテーマがほとんど見当たりません。物語の起点や動機にしても、確かに作品を細かく紐解いていけばある程度は見えてくるものの、まるで取ってつけたようなシロモノ。まさしくエクス・デウス・マギナ以外の何者でもありません。いや、もしかしたら本当はこの作品にはまた違ったテーマがあったのかもしれませんが、少なくともこの作品の場合には、エンディングまで辿り着いてもそうしたテーマが見えてきません。

 つまりこの作品の場合、大掛かりに仕掛けられたトリックは、ギミックではなく作品のテーマそのものになってしまっている。だからこそ、トリックが解き明かされないということが、未完成の作品、という結論に繋がってしまうのだと思うのです。

 そしてまた非常に残念なことは、仮に Premium Edition などで最終ルートが補完されるとしても、それは少なくとも半年以上は先の話になるはず。熱とほとぼりが冷めた頃に最終ルートをやって、果たして十分な感動が得られるのかといえば、私には疑問があります。こういうものは、畳み掛けるように一気に見せるからこそ、そのギミックが何倍にも大きく見えるのだと思うのです。

 そういう意味で、この作品を評するのであれば、『大傑作になり損ねた大失敗作』、という表現が相応しいように思います。なぜこんな形でリリースせざるを得なかったのか? 初期構想が大きすぎたのか、制作管理が甘かったのか、いろいろ想像は尽きませんが、いずれにせよ、本当に残念な作品でした。

 もしまだ未プレイということであるのなら、今後おそらく発売されるであろう、Premium Edition の発売を待たれることをお薦めします。少なくとも、β版の段階でプレイすべきではないゲームである……私にはそう思えます。

作品設定をあれこれ妄想するページを作りました。少なくともここまでは考えた上で結論を出した、ということで....

Canvas 2 〜茜色のパレット〜

 前作 Canvas 〜セピア色のモチーフ〜 に続く、4 年ぶりの続編。前作から 5 年後の撫子学園を舞台に繰り広げられる物語です。

 基本的なストーリーラインは前作とたいして変わっておらず、トラウマによって迷い道に入ってしまった主人公が、何らかのイベントをきっかけにして再び夢や情熱を取り戻していく、というもの。オフィシャルホームページの説明のセリフを借りれば、「本当の自分」を取り戻していく、自分探しの物語ということになるでしょうか。

 もともとコンシューマ向けも意識されているゲームでしょうから、お約束のシーンをごっそり切り落として考えれば、一応は生徒との交流を通したハートフルストーリーということになるのでしょう。が、それにしたって相変わらずなあり得ない舞台設定、だらだらと続くつまらない日常描写、本質が置き去りにされて奇麗事ばかりが並べ立てられるストーリーラインなどは、まさに F&C 節炸裂といったところ。どれを取っても佳作にすらほど遠いものばかり。

 にもかかわらず、どのシナリオも読後感は決して悪くありません。それはおそらく、中核となっているストーリーラインが、絵空事だと分かりつつも心の琴線に響くからでしょう。身近な誰かが動機になって何かをやって、それが結果的に他の誰かを喜ばせ、前向きな生き方に繋がっていく。……茶番もいいところだし、展開も突っ込みどころ満載なのですが、それでもなお、「なんかこういうのもいいよね」と思わせてしまうのが、F&C マジックなのでしょう。なんだかんだ言いながらも、こういう「前向きさ」を取り戻していく物語は、見ていてやはり心地よいものなのだろうと思います。

 こうした作り方、つまり「どこからどう見てもダメゲーなんだけど、どこかにほんのちょっとだけ良心がトッピングされている」作り方は、F&C の十八番とでも言うべきもの。魔女っ娘ア・ラ・モードなどもそうでしたが、ライトウェイトなダメゲーなんだけど、気分転換と萌え分の吸収にはちょうどよい、なんていう、すき間産業みたいなことをうまくやっているのが F&C なのかもしれません。正面切ってお勧めできるゲームでは決してありませんが、最近萌え分が不足しているという方々、なおかつ F&C 節が許容できるというおおらかな方々(?)には良いかと思います。

 個人的には可奈がお気に入り(……というか、あの高周波ボイスがたまりません(^^;))。また、OP テーマ「プラスチックスマイル (^^」はメロディラインの運びが耳に残る一曲。オフィシャルページからムービーをダウンロードできるので、興味がある方は見てみてもよいと思います。

CLANNAD

※ CLANNAD のインプレはネタバレありのみです。申し訳ありませんが、プレイ終了後にお読みいただければ幸いです。

グラディウス V

 前作グラディウス IV -復活- から約 5 年、今回はコンシューマ機のみとして登場した本作グラディウス V。その中身はといえば、期待を裏切るどころか大幅に上回る、まさに「現代に蘇ったグラディウス」と呼ぶに相応しい一作でした。

 まずはビジュアル的な美しさにとにかく惚れ惚れ。スクリーンショットなどはこちらのページなどをご覧いただけるとよいでしょうが、光の残像の使い方が冴えており、どれをとっても一枚絵として映えがある。基本的には自機から背景、敵キャラまでほぼすべてが 3D でデザインされているようなのですが、ひと昔前のゲームにありがちな「いかにもポリゴン」といったことは全くなく、まるで実写版グラディウスをプレイしているような感覚になります。そのせいもあってか、最初は G ダライアスを初めてプレイしたときのような妙な違和感があるのですが、しばらくプレイしているとまさに『病み付き』になる、そんな中毒性があります。

 ステージ構成も見事。確かに、グラディウス III の回転レーザーのように、最初にプレイしたときの衝撃は昔のグラディウスシリーズに比べるとやや劣るものの、全体的に手堅くまとまっており、豊富なギミック、多彩な攻撃パターン、手に汗握るボス戦と、飽きのこない作りになっています。ボリュームも凄まじく、1 周するのに 1 時間程度はかかってしまう。3D をこれだけフル活用した高品質なゲームを長時間楽しめるというのは、それだけ取っても脅威と言えるように思えます。

 巷では「難易度が高すぎる」という意見も数多く散見されます。確かに、最初は「Very Eeay でもこの難易度?!」と言いたくなるほど難しく感じますが、プレイするにつれて増加するクレジットや、当たり判定や爆風などの見た目の分かりづらさに慣れてくると、意外に簡単に思えてくるようになります。私も最初は「いったいどーしろと??」状態でしたが、今では Hard モードでもクリアできる程度に。……いや、コンティニューはしまくりですが。(^^;)

 ほとんどケチのつけようのない一作ですが、敢えて難点を言うのであれば、BGM に自己主張が弱い、ということでしょうか。確かにこれはこれで悪い曲ではなく、ゲームの BGM として作品に非常にマッチしているのですが、耳に残るようなメロディラインもなく、単体の曲としてはどうか?という疑問が残りました。まあ、贅沢すぎる悩みかもしれませんが。(^^;)

 ちなみにプレイしている印象としては、1 つ目の機体(オプション固定)でダブルを使って進んでいくのが最もクリアしやすそう。オプションエディットが使えるようになったら、2 Way + Tail Gun + Ripple + Freeze という組み合わせ(要するにグラディウス II の 4 機目(^^;))が最も強いんじゃないかと思います。この辺は好みが分かれそうですが。

 要塞ステージがやたら多い、モアイがない、逆火山も妙な隕石面に変わってしまった、などなど、もしかしたら古参のグラディウスファンには許せない部分もあるかもしれません(まあ私も一作目からのファンですが……(^^;))。しかし、私としてはむしろ、『昔の風味を残しつつも、今の技術を使って最新のゲームとして生まれ変わり、そして蘇った現代のグラディウス』として高く評価したい。シューターな方には、是非ともお勧めしたい一作です。店頭などで見かけたら、是非プレイしてみてください。

東方永夜抄

 今や専門同人誌即売会まで開催されるという同人ゲーム系の超人気サークル、上海アリス幻樂団。その最新作となるのがこの「東方永夜抄 〜 Imperishable Night.」。私も前作の東方妖々夢はもとより、この東方永夜抄も体験版の頃から 20 時間近くやり込んでいたこともあり、期待を膨らませてコミケで購入しましたが、いやはやさすが期待を裏切らない素晴らしい出来栄えだったと思います。

 東方永夜抄の面白さを端的に一言で言えば、要は練り込まれたシューティングゲームが持つ独特の面白さ、だと思います。次々と襲い掛かる多種多彩な弾幕、それをある時は頭を使って回避し、ある時は微妙なレバー捌きで回避し、ある時は気合いで回避する(^^;)。一つのスペルカードをクリアするごとに次のスペルカードが見たくなる不思議な吸引力に加え、あまりにもアツい、アツすぎるラストスペルとラストワード。その凶悪すぎる弾幕美は、「こんなもんクリアできるかっ!!」と投げ出したくなること請け合い。……でも、何度も頑張っていると何故か腕が上達してクリアできてしまったりするという微妙なゲームバランスが、ますます作品の魅力を増す。総計 222 枚のスペルカードと 8 種類の多彩なキャラたちは、いくらプレイしてもプレイしきれない、底なし沼的なボリュームを持っています。

 私自身、夏コミ終了当日からサルのようにプレイし続け、ふと気付いてみれば 30 時間近くプレイしている(体験版から計算すれば 50 時間(汗))わけで、その出来の良さに関しては疑う余地もありません。前作・東方妖々夢の完成度の高さから来る期待感をものともせず、それを軽々と上回る練り込まれたゲームシステムとボリューム、そしてなによりゲームとしての『面白さ』が間違いなくここにある、そう感じさせてくれる一作です。

 ただ半面難しいのは、このゲームが例えば前作の東方妖々夢を越える作品であるか?と言われると、なかなかに微妙なものがある、という点です。ざっくり言えば、その問題点は以下の 2 つに集約されます。

■ ゲームの敷居の高さ

 一つ目として、ゲームシステム自体の敷居の高さが挙げられます。ゲーム自体の難易度はともかくとしても、2 キャラの入れ替え制システムや刻符によるラストカードシステム、妖率ゲージ、決死結界システム。前作をプレイしているプレイヤーですら、ゲームシステムを覚えるのに苦労するでしょう。確かにこれらのシステムはゲームのプレイの『幅』を広げるのに役立ってはいますが、半面、プレイヤーの間口を狭めてしまう結果に繋がっていると思います。

■ ゲームとしての総合的な演出

 もう一つの問題点は、(シューティングゲームとしてではなく)ゲームとしての総合的な演出力が、前作に比べてやや弱まってしまっている、という点のように思えます。例えば妖々夢の 4 面で空が一気に広がるところ、最終面で幽々子が扇を開く瞬間など、「おおっ?!」と言わせるような演出が少なかったように思います。

 また前作では、通常ステージ⇒ Extra ⇒ Phantasm の紫とテンションが上がっていき、シンセバリバリのネクロファンタジアを BGM にしながら、ラストは弾幕結界のガチンコ勝負。つまり、ゲームとしての明確な最終地点があり、そこへとプレイヤーのテンションを高めていくような総合的演出があったわけですが、本作品の場合にはこれがない。Extra ステージの BGM「月まで届け、不死の煙」の曲調も、前作の Phantasm ステージ BGM のネクロファンタジアなどに比べるとややテンションが低め。本作では Spell Practice の Last Word が終着地点とはいえ、プレイヤーにとっての明確な「夜明け」、つまりラストがどこにあるのか判然とせず、なんとなく間延びした印象を拭えない、というわけです。

#というか、千年幻想郷とか恋色マスタースパークとかの方がよほど全力疾走で、ラスボス的な BGM というか……(^^;)

 誤解のないように書いておきたいのですが、上記 2 点はおそらくZUN氏は百も承知の上で作っていることで、むしろ『狙いどおり』なのだろうと思います。実際、永夜抄はタイトル通り『夜』をモチーフとして一貫性のあるイメージを保っており、夜の深さを連想させる数々の演出や、禍禍しき弾幕光の演出の数々は、見事に狙いにハマっている。加えて作品テーマは「永き夜」、つまりゲームとしての明確な『終着点(ゴール)』はどこにもなくて当然。そういう意味での完成度は恐ろしく「高い」のですが、ライトなプレイヤー(例えば私(汗))がそれをどう受け止めるか、という観点で考えると、また話は変わってくる、と思うのです。

 東方妖々夢があれほどまでにブレイクした理由、それはシューティングゲームとしての面白さもさることながら、ゲームシステムの簡潔さから来る間口の広さ、プレイヤーをハイテンションに導く「熱中装置」として作用するゲームデザイン、そしてゲーム全体で語られる、楽しくも妖しい「東方」のキャラクターたちとその世界観。そういう総合力があったからこそ、ここまでの大ヒット作品に育ったのではないでしょうか。

 これに比べると、東方永夜抄の間口の狭さ、敷居の高さ、そして半面としてのシューティングゲームとしての驚異的な練り込み具合とその面白さは東方妖々夢とは対照的です。おそらく、永夜抄からプレイしても、ゲームシステムはもとより、その世界観についていくことなど到底できそうにない。端的に言えば、東方永夜抄は東方妖々夢の成功という前提なくしては成立し得ない作品である、ということ。そういう意味で、永夜抄は最強最良のファンディスク、「やり込み東方シューティング」的な位置付けと解釈するのが妥当でしょうし、そしてそれはまたおそらくはZUN氏の狙い通りであり、その狙いは見事に成功している、と言えるのではないかと思うのです。

 まとめれば、シューティングゲームとしての出来の高さはピカイチであるものの、それを最大限に楽しむためには、まずは東方妖々夢が前提条件。そこをクリアしてこのゲームに臨めば、まさしく「終わらぬ夜」を楽しむことが出来る……そんなゲームと言えるのではないでしょうか。いずれにせよ、睡眠時間を削られることは間違いなし。東方妖々夢(加えて紅魔郷も(^^;))と併せれば、まさに天下一品の作品と呼ぶに相応しい作品群と言えます。是非一度は体験して頂きたいシューティングゲームです。

 作品のおまけのあとがきを読んでみると、次回作はいったんリセット的な作品になる様子。ある意味、究極的な進化を遂げるに至ったとすら思える本作の後続として果たしてどんな作品が出てくるのか。期待を裏切らず、常に進歩し続ける上海アリス幻樂団(というかZUN氏)の次回作が今から待ち遠しいところです。

こちらにいくつかリプレイファイルを置いておきました。へっぽこプレイですが、よろしければどうぞ。

ギャラクシーエンジェル Eternal Lovers

 アニメ版とは全く正反対、硬派一直線のゲーム版ギャラクシーエンジェルの完結編が本作 Eternal Lovers。2 作目 Moonlit Lovers 用の烏丸ちとせシナリオ追加パッチまで添付された、3 部作の完結編というだけあって、全般すればかなり気合いの入った一作だったように思います。

 すでにご存知の方も多いと思いますが、本シリーズ最大の特徴は、フル 3D リアルシミュレーションゲームである SLG パート。本作ではこの SLG パートがさらに大幅な進化を遂げており、十分なスペックを持つマシンであれば感動できること間違いなし。私は P4-3.06GHz + RADEON 9600XT + プロジェクターの大画面、で楽しみましたが、その高精彩な画面はまるでプラネタリウムのような感覚。Moonlit Lovers の Ultra モードを初めて見たときにはその美しさに驚いたものですが、本作を見てしまうと二度と見られない、というぐらい、非常に美しい仕上がりになっています。

 また SLG パートのゲームバランスも前作に比べてかなり改善されており、きちんと指示を出して計画的にコマを動かしていかないとあっさりゲームオーバーになること間違いなし。いやはや何度リプレイを食らったことか分かりません(苦笑)。本格的 SLG としてはかなりヌルめですが、そこそこマジメにやらないとクリアできない、というちょうどいい按配に設計されているのが good です。

 そんな高クォリティの SLG パートに助けられた、とよく言われる AVG パートですが、確かに不評を買うのも無理はありません。前作のランファルートを軽く上回る電波っぷりの痴話喧嘩を延々と見せ付けられ、話のインフレっぷりに比べるとあまりにチャチな最終決戦。SLG パートによってなんとかボリュームを水増しして乗り切っている印象も強く受けます。

 確かに、作数を重ねるごとに話のスケールは大きくせざるを得ない半面、SLG パートが紋章機戦である以上、本当の意味での「大戦争」はできない。また、SLG パートとの構成比を考えると、日常描写を丁寧にしてシナリオテキストのキツさを排除することも難しい。そうした「大人の事情(笑)」的な各種の制約条件を加味した上でシナリオを再考すれば、非常に良く頑張って考えたのだろう、というところは様々なところに窺えます。また 6 キャラ 6 通りの各ルートもそれぞれに工夫があり、各シナリオのカギとなるセリフではセンスのよいものも数多くありました。

 ただ、やはり総じて言えば、「ゲームのストーリーとしては 1 作目が一番面白かった」、と言わざるを得ません。

 例えば、話の『舞台』のスケールは 2 作目、3 作目となるにつれて大きくなっていくのですが、『話の舞台のスケールを大きくすること』に拘りすぎて、『物語としての作り込み』はかえって乱暴になっているようにも思います。ふと振り返って考えてみると、話の舞台を広げる必要性が本当にあったのでしょうか? 例えば宇宙戦艦ヤマトがどこまでいっても地球を守るための物語として構成されていたように、ギャラクシーエンジェルもまた、むやみにトランスバールから離れるべきではなかったのではないか、そんな気がしてなりません。

 あるいは、2 作目、3 作目では個別キャラルート× 6 本のゲームとして構成されているのですが、結果的には力が分散してしまった感があります。もっとキャラ間の絡みや「チーム」としてのギャラクシーエンジェルの魅力を描出した方が、より魅力的な物語になったのではないでしょうか? ……いや、好きなキャラと延々といちゃいちゃするためのファンディスクなんだからこれが正しい、と言われればその通りですが。(苦笑)

 総評としては、お手軽 SLG としてはよく出来ていると思える半面、2 作目・3 作目ともに、AVG としてはやはりファンディスクの域を越えられなかった、といったところに落ち着くのでしょう。もちろん、それは狙い通りなのだろうとは思いますが、なまじアニメ版とは違った魅力のある世界があるので、少し惜しい気がします。GA シリーズはこれで完結?なのかもしれませんが、出来れば番外編といった形で挿入ストーリーなどを作って欲しいところですね。

 ちなみに、主題歌「Angelic Symphony」はかなりの名曲です。オフィシャルサイトのプロモムービーの曲としても利用されているので、一度聴いてみるとよいかと思います。

DUEL SAVIOR

 歴代屈指の名作 BALDR FORCE を生み出した TEAM BALDR HEAD の最新作として発売された本作 DUEL SAVIOR。私は初回特典のサントラ目当てで購入したのですが、ゲーム本編もプレイしてみるとこれがなかなか面白いものでした。手放しで褒められる作品というわけでもなく、いろいろと問題もあるのですが、このぐらいのレベルが一般的な平均レベルになってくれたらなぁ……という印象を受けた一作でした。

 ネタバレにならない程度の範囲でざっくりと書くと、良い点と悪い点は概ね以下のようなポイントになります。

■ 良かった点

 まずはアクションゲームとしての面白さは筆頭に挙げるべきでしょうが、加えてエンターテイメントに徹したシナリオ、そしてそれを支えるキャラクターの魅力がよく出ているところが挙げられるかと思います。特にサブヒロインのリリィ・シアフィールドは典型的なツンデレですが(^^;)、思わず「ツンデレ万歳」と叫びたくなるほどの魅力っぷり。リリィの魅力があってこその最終ルート、ではあるのですが、それでもこの可愛さは特筆すべきものと言えるでしょう。……いや、ベタなんですけどね。(汗)

 アクションパートに関してはさすがというべきもので、操作系はさして難しくなく、見た目はかっこ悪い二頭身キャラが駆け回る割には派手な技も多く、剣で敵を切り刻んでいく爽快感は見事。BGM もかつての Ys のボス戦を彷彿とさせるような良い曲が多かったです。個人的には「Traitor!」がお気に入り。

■ 悪かった点

 逆に難点としては、まずプレイ時間に対するネタ(伏線)の少なさ。確かにネタを明かしていく順序自体は正しいのですが、物理的にネタが少ない。少しでも先を早く見たいから、という期待感が全体的に薄いため、後半(4 ループ目あたり)に差し掛かってくるとプレイ自体がかなりダレてきます。アクションパートがいくら面白いといっても、さすがに数十時間もプレイを強制されると辛いものがあります。

 また、世界観や設定を生かした本作品ならではの練り込みも甘かったように思います。もちろん、演出的な弱さ(例えば危機感、切迫感、悲壮感のなさといった作品の温度の低さ)もあるのですが、例えば、DUEL SAVIOR (二人の救世主)という設定は果たしてどういう形で生かされていたのか、あるいは赤と白の対立の構図を多層的に描けていたかどうか、そしてラストのオチはどうか。どれを取ってみても、正直なところ、最終ルートのあの状況を作るため『だけ』にしか使われていないように思えます。本編のエピローグでリリィが「世界を巻き込んだ二人の痴話喧嘩」などと称しますが、いやホントにそれだけの話になっちゃダメでしょう、という。(^^;)

 全体として手堅い作りであるのは確かですし、プレイしていて普通に楽しいのも事実。ちょっとした気の効いたセリフもそれなりに見られるし、ストーリーの山谷の作り方も悪くありません。前作 BALDR FORCE が歴代屈指の名作であったが故のプレッシャーの中、(満点には程遠いにせよ)及第点の作品をきちんと作ってきたことは評価すべきことだと思います。アクションゲームが好きな方であれば、それなりにお薦めできる一作と言えそうです。

 以下、ネタバレです。(反転してご覧ください。)

 「悪かった点」の中に、世界観や設定を生かした練り込みが出来ておらず、結局は二人の痴話喧嘩を越えるものがなかった、ということを問題として取り上げましたが、加えて言うなら、痴話喧嘩としてみても作品としては中途半端だったのではないか、という気もします。仮に二人の痴話喧嘩を中核とするのであれば、以下のあたりはかなり不満と言えます。

 未亜ルートでは未亜の病的な兄への依存っぷりに辟易した方も多いと思いますが、あれはどちらかというと大河というキャラクターの造形に失敗したせいのように思えます。リリィは単独でも魅力を発揮できるキャラですが、未亜はそれを受け止めるべき存在がいないと輝きづらい。本作の場合、未亜ルートにおける大河が未亜のことをどのように考えているのかが読みにくく、他ルートとの差異がはっきりしていません。未亜を受け止める想いや覚悟が中途半端だと、未亜の依存ぶりも空転してしまいます。(これが結果的には未亜の気持ち悪さ、という評価に繋がる。)

 また、本作は結局のところ、大河と未亜がお互いをどう捉え、どう行動するのか、というのが、異世界への冒険を通して解消される、という、冒険活劇的な構図を持っています。そして最後には、すべての罪を大河が背負う、と言うわけですが、だとするとそこには大河なりの決意があるはずで、彼がどういう想いで妹と共に送還を受けたのか、という部分について、もう少し精細に描写する必要があったでしょう。結局彼自身が、この物語を通して、本質的な部分でどう変わったのか、それが一切感じられないあたりは、エンターテイメント作品であったとしてもさすがに淡白すぎる、という印象を受けます。

 これら以外でも、ギミックとしてしか使われていない「神」の設定、赤(感情や想い)と白(理性や因果)への分離と衝突とその融合、死への恐怖感、同門対決など、ネタとしては使えそうなおいしいものがゴロゴロしているようにも見えるのですが、結局それらが生かされることはなかったのではないでしょうか。作品の方向性と力点の置き方がはっきりしていれば、もう少しやりようがあり、評価も上向いたのではないか、という気がします。そう言う意味で、良い作品ではありましたが、ちょっと惜しい作品でもあったように思います……というのは、期待しすぎなんでしょうかね?(^^;)

Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜

 今年前半の大作 CLANNAD に続いて Key からリリースされた、小さなサウンドノベル。世界大戦によって崩壊した世界の中で、生き残るためにかつて封印された都市を回る主人公、そしてそこに居続けた無垢なままの機械の少女の物語。\1,050 という手軽な価格と、2 時間程度でプレイできる手軽な分量でありながらも、非常に綺麗にまとまった、お手本のような SF 作品でした。

 細かい内容に触れるとネタバレになるので避けますが、プレイ直後の感想を一言で言えば、「確かによく出来ているけれど、それ以上でもそれ以下でもない作品」といったところでしょうか。確かに、そもそも 2 時間少々でプレイできるお手軽作品にそこまでの過大な期待を寄せること自体が間違っている、と言われればその通りなのですが(^^;)、私がひっかかったのはその「風呂敷の広げ方」の部分。舞台設定、キャラクターの動作、物語の展開など、どれ一つを取っても確かに抜かりがないのですが、半面、そこに篭められた『意味』がミエミエで、そしてプレイヤーがどういう方向に想像を膨らませるべきなのかについても予定調和的。掲げられているテーマもある意味教科書通りで、そこには目新しさや斬新さはない。端的に言えば、センス・オブ・ワンダーには欠ける作品だったように私には思えます。

 教科書通りの作りであるが故の安定感もあるし、安心して楽しめる一作であるのも確か。そういう意味では間違いなく良作ですし、もっとこの水準の作品が増えて欲しいとも思うのですが、Key の涼元氏や麻枝氏には、こんな『ありきたり』のレベルで止まって欲しくない、とも思うのです。

 次回作へ向けての間つなぎと当面のコスト確保のため、といった面もあると思うのですが(という意味を篭めて私は敢えて 2 本購入しましたが(^^;))、次回の大作では是非、CLANNAD を上回るような、プレイヤーを『圧倒』する物語を見せて欲しい、そんなふうに思う一作でした。

RIDGE RACES - リッジレーサーズ -

 ついに発売された PSP、そのキラーソフトの一本と言えるのが本作 RIDGE RACES でしょう。初代 RIDGE RACER から PS2 版 RIDGE RACER V までの中から厳選された 約 10 個のコースを、あのインチキドリフトで爽快に駆けずり回るという一作。その面白さたるや、これぞリッジレーサーと呼ぶに相応しいものでした。

 詳しいゲーム概要などはこちらのページを見ていただければよいと思うのですが、初代リッジレーサーから最終作(?)のリッジ―レーサー V までの中から選りすぐりの BGM とコースを抜粋。これに新曲といくつかの新コースを加えて携帯ゲームに仕立て上げた、というもの。なんといってもリッジレーサーファンにとって嬉しいのは、旧作のコースがリッジ V と同等の解像度でリニューアルされている、という点でしょう。私は REVOLUTION の Crystal Coast Highway (起伏の多い海岸沿いを疾走していくコース)と R4 の Crimsonrock Pass (峠〜山頂の天文台コース)の 2 つが非常に好きだったのですが、これらを美しい画面で再び遊べる、というだけでも涙が出そうなほど嬉しい話。Crimsonrock Pass を Movin' in Circle の BGM でひたすら駆け抜けていくと、初代 PS でハマっていたあの頃を思い出させてくれます。(個人的には、リッジ V からのコース選択をもう少し工夫して欲しかったところですが....)

 携帯ゲーム機向けということもあって、全体的に難易度は低め。特に壁面やライバルカーに衝突したときのペナルティ(減速)が小さくなっていたり、ドリフト時の中央向き G (※ リッジではドリフトするとコースライン中央方向に向かって G がかかる)がかなり強めに設定されているので、いいかげんにプレイしていても割と簡単にクリアできてしまうでしょう。少なくとも、リッジ V の Extreme Class のような凶悪さはさすがになし。コース数はやや少なめ(とはいっても全 12 コース、ミラーはないが逆方向はあり)ですが、これらをうまく組み合わせた全 39 戦のコースが用意されており、携帯ゲーム機の割にはやりこみ度もかなり高め。各レースツアーの 1 回あたりのプレイ時間が 15 分程度で済むため、気軽にプレイすることができます。

 「携帯ゲーム機でそんな高解像度のゲームをやっても仕方ないだろう」と思われている方も多いでしょうが、まさに「大は小を兼ねる」の世界(笑)。旧作からコースを持ってきていることもあり、多数のコースのバランスの良さはシリーズ最高といってもいいでしょう。リッジが好きな方(特に R2 〜 R4 あたりが好きな方)には間違いなくお勧めできる一作。是非プレイしてみてください。

みんなの GOLF ポータブル

 PSP はもともとリッジレーサーズのために購入したのですが、せっかくだからということでついでにみん GOL ポータブルも購入。以前から噂は聞いていたもののプレイするのは初めてだったのですが、これが実はリッジに負けず劣らずのハマりゲー。実はまだシニアクラス、みんごる将軍レベルというわけで、やりこみ度という意味ではまだまだ序の口なのですが、ここまでのプレイだけでも素晴らしい一作であることが十分に実感できるものでした。

 みん GOL ポータブルの良さを端的に言うなら、以下の 3 つに集約されるのでは、と思います。

■ シンプルなゲームデザイン

 これは傑作であるための必須条件、と言ってもよいのですが、「単純でありながらも奥深い」ゲームデザインをきちっと作り込んでいます。確かにこの手のゴルフゲームのインパクト方式は基本的に昔から変わっておらず、みん GOL でもそれが踏襲されてはいるものの、コースの斜度や形状、起伏などが様々な方法で示されるため、『こんなふうに打ちたい』という狙いを簡単につけることができるようになっています。

■ ゲームプレイの手軽さ

 「みんなの GOLF」という名に恥じず、『誰でも手軽に』遊べるような工夫が随所になされているのが見事。ガイダンス類の充実ももちろんですが、ゲームのテンポが非常に早く、ストレスなくサクサクと進めていくことが可能。1 プレイもだいたい 10 〜 15 分程度なので、ちょっとした移動時間や就寝前などにちょろっとプレイできる、そんな気軽さが非常に good です。また、パラメータ類もかなり細かく出てはくるものの、ビギナーはとりあえず全部無視しても OK だし、ベテランは全部を細かく考えながらプレイしてもよい。まさに「みんなの GOLF」。間口の広い設計になっているあたりはさすがです。

■ 爽快感あふれるプレイ

 そして、なんといってもナイスショットの爽快感が最高。軽快なショット音と共にジャストミートが決まったときの爽快感が手軽に味わえます。プレイしている印象としては、内部でかなり「インチキ」計算をしているような印象を受けるものの(そうでもなければホールインワンできるとは思えず(笑))、そのバランスが見事で、『なんとなく自分がスーパープレイヤーになったような錯覚』を味あわせてくれること請け合いです。

 正直なところ、わざわざ据え置き機でプレイしたいゲームか?といわれるとちょっと疑問ではあるのですが、携帯ゲーム機で出先でちょっと遊ぶ分には最高の一作、と言えるように思います。かつて PC-8801 シリーズであの傑作ワールドゴルフにハマりまくっていた私としては……と思ってちょっと調べてみたら、なんとみん GOL の作者の方(守村氏)はまさにそのワールドゴルフを作られた方だったとは!(^^;;;) いやはやどうりでなるほど納得、ゲームデザインに共通点が多いのも頷けます。

 適度な「ヌルさ」が、プレイしていて『楽しい』と思わせてくれる、そんな一作。エンターテイメントとしてのゲームという原点を忘れずに作り込まれた本作は、きっと「みんな」が楽しめるゲームであるに違いない、と思います。敷居も低いゲームなので、PSP を購入したなら是非併せて購入してプレイしてみて欲しい一作です。かな〜りおすすめかも。

アカイイト

※ このインプレは若干ネタバレがあります。本編の素晴らしさの本質を奪うものではないと思いますが、念のためご注意ください。

 たったひとりの家族だった母親を亡くし、遺産として残された父親の実家を見るために生まれ故郷に戻った羽藤 桂。彼女はそこで誰かと出会い、そして誰かと別れる。封じられた過去と彼女の血、縁(えにし)の糸が絡まりあい、寄り合わさってひとつの絵を成し、運命の輪が廻りだす……

 公式サイトによれば、主人公 羽藤 桂から描かれる『和風伝奇物』、外見的には百合もの、キャラクター的には松来 未祐さんのめっちゃかわいい最強のラブリーヘタレヴォイス。公式サイトから Windows 用の体験版がダウンロードできるので是非トライしてみて頂きたいのですが、オプション画面でいちいち萌え声で「お箸とお茶碗、両方持てるよね?」とか言われようものなら打ちのめされることうけあい。その上、PS2 の倫理規定の制限に挑戦したというちょっとお色気な吸血シーンに期待……する人はさすがにいないと思いますが(汗)、その中身はといえば、宣伝文句とは『まるっきり』といってもいいほど違う、素直に心に響く、非常に丁寧な良作でした。

 多少出遅れたため、Web サイトのレビューも少し見てみたのですが、いくつかのサイトで言われているように、全体的に非常にあっさりしており、もっと色々やりようがあるのではないか? と感じるかもしれません。確かに、一見するといくらでも深堀りできそうな要素はバラまかれているにもかかわらず、昨今の過剰演出が当たり前の泣きゲーの水準からするとあまりにも薄味。また、構成もストーリーも手堅さはあるものの目新しさはないですし、作りこみは丁寧ですが、奇抜な展開もなければ不思議な謎もあっと驚くトリックもなく、斬新な概念を提示するわけでもありません。公式サイトで謳われているような伝奇もの、あるいは百合ものとして見るのであれば、それらの方向に先鋭化した他作品と比べて大幅に見劣りする B 級〜 C 級作品、と言わざるを得ません。

 にもかかわらず、この作品には他作にはない、不思議なカリスマ性が備わっています。特にラスト近辺では、その一瞬一瞬がとても大切で、かけがえないものに思えてくる。そういう『魂』が入っていると感じさせてくれる作品はなかなか類を見ません。

 そのカリスマ性の中核にあるのが、主人公である羽藤 桂というキャラクターの見事な造形。このキャラは先に書いたようにとにかくヘタレヴォイスがめっちゃかわいい超天然ボケキャラ……のように見えますが、その内面はこの上なく空虚。外見的には、とても母親を失った直後の娘とは思えないほどに明るく振る舞うのですが、それが「無理に気丈に振る舞おうとしている」わけではないからこそ、その内面的なカラッポさが逆に際立つ。(実際、羽藤 桂というキャラクターのモノローグは常に第三者的で、その内面的な思考が前面に出てくることが決してない) 周りが心配になるほど桂の足元はおぼつかなく、いつその心が砕けて手折られてしまうかわからないような危うさがあります。

 しかし幼き日を過ごした村への帰郷、自分の過去との邂逅、人とのめぐり遭いによって、そんな桂の中に確かな魂が宿っていく。それはたった 3 日〜 4 日程度の、旅と呼ぶのもおこがましいある夏の出来事かもしれませんが、それによって桂の中に人としての魂、つまり「いのち」が吹き込まれていく。桂だけでなく、周囲のキャラクターたちも多かれ少なかれ「自分」というものを失っているのですが、物静かではありながらもそれが確かに形作られていく。BGM 「泡沫」をバックに展開されるラストのカタルシスはかなり強烈なのですが、それはまさに『魂が宿っていく』様子にリンクするからこそ生まれるものだと思うのです。

 作品全体を通して、何かしらのテーマが声高に叫ばれるわけでもないですし、また何か大きなイベントがあるわけでもなく、ある意味では最後まで『淡々と』進む物語。おそらく受身で何かを見せて&魅せてくれることを期待すると、肩透かしを食う作品だろうと思います。しかし、ほんのちょっとしたイベントを通して、不安定でからっぽだった各キャラに、暖かい血が巡っていき、魂が吹き込まれていくその様子は、この上なく切なくて暖かい。彼女たちが旅路の果てに得たものは、それぞれの『いのち』だったように思えてなりません。

 中毒性のあるゲームではないため、振り返ってみればコンプリートするまでかなり時間のかかってしまいましたが、読了後に残る暖かさはなかなか良かったです。BGM や OP/ED も作品と見事にマッチしたものばかりで洗脳度は割と高め。大作というより良作という言葉が相応しいゲームとはいえ、これだけ筋のいい作品がろくに売れていないというのは少し寂しいところ。機会があれば是非プレイして欲しい一作でした。


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