こちらのページはとらいあんぐるハート DVD Editionのネタバレゲームインプレッションの補足として、各シナリオについて簡単にゲームプレイ中のインプレを整理したものになっています。全キャラについて揃っているわけではありませんが、補足資料として参考にして頂ければ幸いです。
以下のキャラ別インプレが用意されています。部分的に読みたい方はこちらからどうぞ。
素性のよいストーリーと、ビシっと決まるテキストが見事な一作。ただ残念なことに、キャラクターのあまりの可愛さゆえシナリオ構造が理解されていない側面がある。知佳シナリオは二つの側面を持っており、
- 主人公耕介と知佳との間の恋愛
- 知佳の自分自身の能力に対する受容
の2つが相互作用を及ぼしあいながら進む。そしてそこに介在している要素が二つある。
- さざなみ寮という桃源郷空間(人間の負の感情がほとんど存在しない、悪意のない空間)
- リスティという知佳の影(過去の自分)
このような前提の元に、シナリオは以下のように進められている。
- 小さい頃の知佳はその能力により人から疎まれ、さらに人の心が読めるという能力によりさらに輪をかけて人の負の感情にさらされまくり、自己を閉ざす。
- 知佳はさざなみ寮という空間で、「嫌われず素直に良い子でいる」⇔「皆から好かれる」という良循環のサイクルにうまく乗り、少しずつ癒されていく。
しかし、小さい頃のトラウマは簡単に消えるものではない。たまに倒れて他人に迷惑をかけることを極度に恐れて避けようとするのもそのせい。そのすべての根源である彼女の『能力』は、彼女が何らかの原因で弱気になったときに彼女を強く苛み続けてきている。- 上記の良循環のサイクルは非常に子供じみている(子供が親に誉められたいというロジックと同じ)のだが、この点において、さざなみ寮の住人は真雪も含めて、全員が知佳のことを子供扱いしており、本当の意味において、知佳には この悩みを共有できる人が今までいなかった。
知佳ルートに入った最初での選択肢は、知佳のことを「少し尊敬している」「守りたい」「……。」の3つだが、これからも明らかで、最初、耕介は知佳を守る「(非恋愛対象の)お兄ちゃん」というスタンスを取っている。- この後、2段階を経て耕介と知佳との関係が兄弟から恋人に変質していく。
- 耕介が知佳の悩みを受け止める対象になる。
「いつも笑ってろなんていわないよ…少なくとも俺には、グチったり意地悪言ったりしてもいい。それで、知佳のこと、いやな子だなんて思わない。妹のわがままを聞いたり、グチや文句を聞くなんて…兄としては、幸せなこった。血はつながってなくたって…家族だろ?」というセリフが象徴的。- 耕介と知佳との間の関係が男女関係であることを二人が認識する。
これは偶然知佳が心を読んでしまうイベントを契機として発生する。このイベント自体も上手いのだが、ここで見事なのは最後の告白シーンである。上記2つの経緯によって確かに耕介と知佳は恋愛関係になるのだが、それは知佳の悩みを耕介が共有するという形で実現する。だからこそ、2. では耕介は知佳に自分の心を読ませる。それは、耕介がありのままの知佳を受け入れる(化け物の能力を持っていても構わない)ということを暗示している。- しかしここまでのプロセスでは、本質的な問題が解決されていない。今の知佳は他人(耕介)に許容してもらうことによって自分の居場所を見つけているのだが、自分の能力そのものを受け入れてプラス思考に転じてはいない。これを解決していくのが第三部のリスティの話である。
- リスティは知佳にとっての『影』である。つまりリスティは過去の自分であると同時に知佳が消化しきれていない自分自身の能力の象徴でもある。知佳がリスティに執着するのもそのせい。初めて自分を客観視しているのである。そしてその後のリスティの暴走は、知佳が辿ったかもしれない一つの末路を暗示している。自分の能力を疎ましく思い、自分に優しくして自分を惑わすすべてのものに対して牙を剥く。
- そんなリスティを助ける中、知佳は初めて自分の化け物のような能力をプラスの意味を持つものとして消化し、物語はハッピーエンドを迎える。(それが可能になった一因には、耕介の存在があり、またリスティとの関係性との中で培ったものもあったのだろう)
結局、昔の知佳と今の知佳の違いは厭世的になるか否かという点にある。他人の気持ちを汲み取り相手を思いやる、そういった、もっとポジティブな発想や行き方の枠組みの中で能力というものを捉えなおした結果、と言ってもいい。
だからこのシナリオのエピローグは、最終的に「能力」をプラスのものとして受け入れることができたことを前提に、それを生かせる仕事としてリスティは警察、知佳はレスキューにつく、という形になっているのである。
大枠としての筋書きは真雪の束縛からの解放劇である。シナリオで語られる断片的な内容から真雪の過去を推測すると、以下のようにまとめられる。
- 漫画家になることを反対されて縁切り状態で道場から知佳を連れ出す。
- 知佳をなんとか育てるために、本業としての漫画家の仕事をしつつ、おそらくはアルバイトなどもかなり無茶してこなして知佳と二人でさざなみ寮で過ごす。
知佳の医療費については国から研究費が出ているため、治療だけであればおそらく無料(もしくは格安)であり、さらに遺伝子治療の研究に協力すればお金がもらえると思われる。が、真雪は少なくとも研究に関してはそれを頑なに拒んだのではないかと推測される。- 真雪は友達らしい友達がほとんどいない。それは当人の性格の問題ではなく、上記のような無茶な生活をしていたためと思われる。(真雪が耕介に語った、「あたしの周りは、なんだかいつも…時間の流れが、早いから」というセリフから推測される)
- 知佳はさざなみ寮の2階をぶっ飛ばしてしまうが、この時の修繕費は資産家である愛が捻出していると思われる。帰る家もなく、経緯もあるため、真雪はさざなみ寮の2室をローンを組んで買い取る。(ただし、このローンもおそらく保証人は愛になっていると思われる)
- そのうち真雪は漫画家として頭角を発揮。不自由なく暮らせるようになる。
このことから分かるように、真雪のここまでの人生のほとんどは妹である知佳のために費やされている。真雪にとっての精神的な強さを守る最後の砦は、知佳に苦労をかけず、笑わせつづけることである。しかし同時に知佳にとっては真雪は尊敬の対象であると共に、自分の成長の障壁でもあった。いわば「母娘」の関係がここにあるわけだが、それが知佳の成長によって突き崩されるというのがこのシナリオのポイント。知佳がプレゼントをあげるシーンのCGでは知佳がまるで娘を抱きしめるかのごとく真雪を抱いているが、この逆転現象は二人が対等にお互いを守りあうために必要な通過儀礼なのである。
このキャラが持つ優しさはさざなみ寮の持つ優しさに直結する、そんな魅力を持ったキャラではあるが、残念ながら豊富な設定を持つ割にはそれを活かしきれたシナリオにはなっていない。作品の要素としては、
- 肉親の家族(祖父との思い出、ミニ)
- さざなみ寮の家族
- 夫婦としての家族(耕介)
という3つの家族があり、その関係性の中で話が語られていくのだが、その話に上手い結論が見つけ出せていない感がある。一応の筋書きとしては、
- ミニを媒介にして、肉親である祖父との思い出が耕介との思い出に徐々に変わっていく。
- 最後にはミニが壊れ、夫婦としての二人をさざなみ寮の家族が取り囲むことで『今』を生きていく寄り合いとしての家族をうまく描写。
というところを狙っているようにも見えるのだが、ここに「昔のことを忘れるのは悲しい」という要素を盛り込んでしまったところに話としての混乱があるように思える。全体の構造は「過去から今へ」という流れなのに、過去を捨てるのは悲しい、という部分。この部分に対しては「思い出にする」という答えを提示しているものの上手く描写が出来ていない。つまり過去の記憶をうまく思い出に昇華していくプロセス、そういった部分を構造的に取り込むことができなかったのがやや残念なところと感じられる。
「子供」「友達」「初恋」(≠恋愛)の3つの要素をうまくからめたストーリー展開を持つ物語。内容面で特に補足するようなものはないが、子供の目線を保ちながら、失恋して優しさを知るという流れで美緒の成長物語をうまく纏め上げている。知佳シナリオが、「心の原風景」を元に自分自身を克服していく物語であるのに対して、美緒シナリオはその「心の原風景」を作り上げていくシナリオである、と言ってよいだろう。BGM "You're my only star"をバックに語られる美緒の理解と決意は、見守る立場に素直に心に響く、よいシナリオであったと思う。
…余談ですが、とらハ2の中ではトップクラスに特殊で魅力的なキャラですね。美緒の語り口を聞くとつい顔が綻んでしまう、子供らしい不思議な魅力が良いです。
いくら血がつながってないとはいえ那美ちゃんが彼女の妹だというのは納得がいかない……というのは全然別の話。(汗)
さてこのシナリオは、物心付く前から十六夜を握っていた薫が、再度、自分の進む道を再確認するという物語である。箇条書きでポイントを整理すると、
- 元は十六夜との触れ合いと持ち前の優しさからなんとはなしに退魔の道に入る。
- 成長したことにより、魔を祓うことが人を殺すことと等価であることに迷うようになる。この迷いは、耕介に癒されることによって軽減される。が、もちろん本質的な解決にはならない。
- 『御架月』は薫が背負うべき罪の十字架として現れる。
- 薫にとっては、今を生きること(退魔を続けること)自体が罪を重ねることであるが、その贖罪は自分を捨てることではない、ということに気付く。
「過去になにがあったのか…故郷に戻って、ちゃんと調べる…」というセリフの意味するところは、自分の天命と過去の罪に向き合う決意であり、迷いが消えなくとも自分の進む道を再確認することである。というお話である。ただ、今ひとつ煮え切らないのは主人公の耕介の役割が曖昧であること(薫の意志は薫自身が決めるもの)と、シナリオテキストが上記の筋書きに対してかなりふらついてしまっている点てある。例えばシルヴィが「なんで誰も…! 誰も僕に優しくしてくれないんだよ!」と絶叫するシーン、このセリフは単体で見ると別段悪くはないのだが、シナリオの流れの中でみるとかなり浮いているセリフである。このように、一つ一つのセリフと全体の流れが今ひとつ連動していないのが残念なところ。それを除けば決して悪くないシナリオだった。
努力で越えられない壁に当たったとき、それをどう消化するのか、という物語。
「小さい」というコンプレックス、「誰より頑張っている」というプライド。ハンデキャップを努力でカバーし、覆してきたみなみにとって、そのハンデを指摘された上に慰められるのは、何事よりも堪え難いこと。ハンデを指摘されたことに対する「怒り」と、プライドを否定されたことに対する「怒り」とを切り分けられず、前者とともに後者をもつまらないことと捨て去ろうとしたみなみに、耕介はつたない言葉ながらもプライドを捨てずに頑張るよう、前向きな励まし方をする……。というのがこの物語の前半の筋書き。
つまりみなみにとって「小さい」というハンデキャップを克服する手段は「努力」だったわけだが、その努力でもカバーしきれない壁にぶつかったときにはどうするのか? それがこのシナリオで提示された命題である。私が思うに、その解は基本的には二つある。
- より一層の努力で、その壁すらも乗り越えてしまう。さらなる力で無理矢理ねじ伏せてしまう、という解決方法。
- ハンデキャップ自身は素直に受け入れた上で、別の評価尺度を持ち込む。例えば「小さくても楽しめればよい」というような、考え方自体の転換。
しかし前者の解決は物語としてあまりに安直、後者の解決も『逃げ』の要素をはらんでいる。そこで、基本的には後者の解決を図りつつも前者の要素を盛り込んだ形で解決を図っているのがこのみなみシナリオのラストである。すなわち、
- 「そもそもバスケが純粋に好き」という基本を再確認する。
- 「背が小さい」というハンデも、自分が戦わなければならない要素の一つに過ぎないことに暗黙的に気付く。より一般化した形での問題の捉え直し。(「だから、もっともっと『強い人』と戦って…勝ちたい。」)
- 「前に進むこと」「より強くなること」を目標として努力を続けていく。
- 最後に自分の背丈の壁(裕子)に対峙したときの最優先事項が、「自分のコンプレックス」との戦いではなく、「バスケをプレイすること」になっている。
といったように、視点を変えつつうまく解決を図っていっている。この辺はすべてはみなみの実直さでカバーされており、シナリオとしてはよく一貫している。
ただ残念なのは、シナリオテキストがあまり上手くないことである。みなみは最後に「…あのー…逃げた、って…思います?」と語るが、実際そう見えてしまう危険性を残念ながらはらんでいたように思う。それは、上述したポイントの中にある、『より一般化した形での問題の捉え直し』、そして壁の有無は関係なく、『努力を続けていくこと』が最重要課題になっていく、この部分のプロセスの描写が不完全だったためであるように思える。
背が小さいというハンデキャップをみなみが自分自身で「消化」できていないことが問題だと見る方もいるかもしれないが、私はその点については別段問題とは思わない。『そもそも「消化」する必要などなかったのだ』ということに気付く、そこのプロセスの描写が非常に甘いために納得感の薄いシナリオになっている気がする。結局みなみが最初から最後まで持っていた「努力と自己研鑽を続けられること」がスペシャリストとして最も重要な資質なのではないかと私は思うが、それが『怒り』といったマイナス要因から出てくるものでは長続きせず、バスケが『好き』といったプラス要因から出てくるものであるからこそ長続きする、という部分であるとか、その転換のプロセスの練り込みや描写が甘かったのがやや残念に思われる。
とらハ2の中ではかなり異色な、ベタベタな少女漫画ちっく初恋ストーリー。
一言でまとめるのなら、初恋に溺れる少女ゆうひが、初恋の男と人生の目標とをうまく両立させられずに悩むというお話。ネタ自体は典型的なものの、ゆうひと耕介の関係が実に絶妙すぎるバランスであり、トラウマもなく対等な関係での純粋な恋愛物語でここまでのものが書けるというのは極めて突出した実力であると思える。二人の間柄は全く着飾っておらず、じゃれあいながらもその根底に互いへの思いやりがあるという関係になっており、実に見事な描写である。確かにこのシナリオはゆうひのキャラ魅力(外面的にはとにかく明るく、その実は気遣いの塊、でも恋愛になると戸惑いの嵐)だけで魅せている感もあるが、立ち回り的には初恋に戸惑うゆうひを暖かく見守る耕介もかなり美味しい役回りになっている。二人の関係で言うと、恋愛関係についてはスキル的に全く対等でない(^^;)という部分があり、耕介の方は最後までゆうひへの思いやりをきちんと貫いていくわけだが、それでいながら耕介の立ち回りに余裕な物腰だとかイヤミな感じが全くない。相手を思いやるというところをベースに据えることで最後まで対等を貫いているのである。
ただ、とらハ2の全シナリオ中でこのゆうひシナリオだけが他者との関係性に弱い点、これは非常に興味深い。他のほとんどのキャラはさざなみ寮というバックボーンをベースにしてストーリーが進むのだが、ゆうひのシナリオに限っては基本的には主人公とゆうひの二人だけの世界という側面が強い。キャラとしては最も人情味があふれるキャラでありながらも、意外に最も一般的なギャルゲの文法に従っているのがゆうひ、というのは、偶然のことなのだろうが面白い。
忍にとって「守りたいもの」はノエルであり、ノエルにとって「守りたいもの」は忍。その支えあう二人の生活を壊す外敵が月村安次郎とイレイン。そして物語を彩るために、そこに「二人の感情の確立」という要素を盛り込んでいる。
要素の設定自体は悪くないのだが、物語としての起承転結の流れが上手く構築出来ておらず、非常に散文的に作られてしまっている。また、このシナリオでは暴力に対して立ち向かうのはノエルであって主人公ではない。物語としての主役、忍に対する恭也の立ち位置、ラストの収束位置が曖昧になってしまったことが主な敗因。主人公の物語としては恭也が剣士の道を逸れていくというのが一つのテーマにはなっているが、忍とノエルの物語とは完全に遊離してしまっており、主人公が物語に対して果たす役割が非常に小さく、プレイ後の充実感には欠けている。
レンとのコンビはとらハ全シリーズ中でも屈指の出来。レンの心臓病のエピソードのあたりはレンの話の回し方の上手さと、気遣いが絶妙にバランスしていて見事。こうした「思いやり」「気遣い」をキャラの行動として表すことにかけてはとらハ2以来の見事さである。
ラストの師匠(恭也)との戦いも要素として見る分にはとにかく舌を巻く上手さである。卑怯なことが大嫌いな実直な晶が、ただ一度だけ『卑怯な手』(=恭也の右膝を狙った上に鋼糸を奪って使う=御神流そのもの)を使うことによって、憧れていた師匠の恭也を破る。それは、晶が進む道を自ら選択する上での通過儀礼そのものであり、自分の進む道の再確認なのである。
ただ残念なのは、『強さ』と『実直さ』というキーワード、そして未熟な少女としての『自分探し』という物語がプレイヤーに伝わりにくかったという点である。特にボーイッシュな晶の場合には、むしろ女性をどのように獲得していくか?というところにプレイヤーの視点が行きがちであるし、なおかつ師匠と肉体関係を持ち始めたところがさらに話を分かりづらくしている。作品フォーマットに縛られた部分を取り除いて(例えば肉体関係の部分をすべて殺ぎ落として)筋書きのみを見れば、極めて分かりやすく、上手い物語だったと思える。
レンと晶シナリオは二つで一つであり、レンルートが晶ルートを包含している。
レンシナリオのポイントは、周囲へのコミットメントを二段階で取得していくプロセスにあり、まず大人として恭也が、次に同世代の晶が、という流れでレンに唯一無二の絆を与える。『対等』性がレンの絆にとって重要な点であり、(少なくともゲームの時点において)恭也がレンの『救い』にはなれても『いちばん』になれないのはそれが理由である。レンと晶の最後の対決では、一度も勝ったことのない晶、一本勝負、漫才ケンカ、晶の実直さなど、張り巡らせた伏線を使って見事に収束しており、シチュエーションも夜明けから朝焼けというのは綺麗過ぎるほど美しく、見事である。
ただ、やはりこのシナリオも晶とレンの友情物語に収束してしまうのは、物語としては上手くてもゲームとしてはやはり疑問が残る。ことラストにおいて主人公へのフォローの一つすらないというのは酷い。見守る立場としてのセリフを入れるなど、やり方は何かあったようにも思う。
恋愛ゲームのシナリオとしてはお手本的な展開。過去の思い出を元に、桜の木の元で再会させる構図は教科書的ながらも王道ならではの強みがある。が、それはすでに那美の魅力として様々なレビューで語り尽くされていると思われるので、ここでは神咲姉妹について少し書いてみたいと思う。
罪を背負っても悲しみを減らそうという薫と、悲しみを増やさないために最後まで粘ろうとする那美。二人に関しては様々な側面で対比ができ、そこからシナリオを見てみるといくつか面白い側面が見えてくる。
例えば、悟っているが故の強さと若さ故の強さという違い。那美シナリオではその若さ故の強さを「従来概念に拠らない新しい発想」として「依代と祟りの分離方法の発見」という形に落とし込んで話にケリをつけている。このやり方は那美シナリオ単体として見た場合には非常に上手い話の展開である。
ただ、これをやってしまうと薫に立場がなくなってしまうし、また実世界ではたいてい若さ故の強さが新しい解決には結びつかないのが現実の厳しさである。そうした現実の厳しさやuncontrollableなものに立ち向かうのが美由希などのシナリオであるのに比べると、この那美シナリオは砂糖菓子のように甘い。この点は戯言と言われても仕方ないだろう。また、二人の視点の広さの違いもまた特徴的である。薫は自分の仕事に対する誇りを持ち、世の中全体に視点が向いているのに対して、那美の場合はそうした一般的な観点からのアプローチを行うことはなく、那美自身の主体性が極めて高い。薫と違って、那美が求めているのは(自分にとっての)『平和な日常』であって、(世の中のみんなの)『世界の平和』ではない。そしてそれを求めるために彼女は強く、一歩を踏み込んで久遠に取り付いた祟りを祓うのである。
確かに那美の考え方は極めて個人依存であり、ある種の安っぽさはあるのだが、この構図は非常に分かりやすく、プレイヤーの心理ともシンクロしやすく、より現実感がある。キャラクターの造詣として前面に出ている「優しさ」と「平和な日常」への渇望、それを求めるために強くなるという一連の流れは上手い。那美のキャラ造詣=平和な日常の象徴=守りたいもの、という構図が出来上がっている点も見逃せない。ただやはりこのシナリオもプレイヤーの立ち位置がなく、ストーリー展開からは排除されてしまっている。展開上の構成(=魔物とは戦えない)が原因というよりは、那美の物語になってしまっていることが原因であり、二人で幸せな日常を築き上げていくというゲーム構成ではない。この物語の主人公はプレイヤーではなく那美なのである。
※表はメモ程度に使っていたものであるため不完全です。また、年についてはとらハ3のスタートを2006年と仮定して振っています。
リリちゃ桃子エピソード | とらハ2 第二部開始時点 | とらハ1 | ラブちゃ | ナツノカケラ | デンタル・パニック | とらハ3開始時点 | リリちゃ | 海鳴横断ハイパークイズ | お正月全員集合 | リリちゃエピローグ | |
不明 | 1999年4月 | 2000年 | 2001年5月 | 2001年8月 | 2002年 | 2006年4月 | 2007年 | 2008年春 | 2008年年末〜2009年年始 | さらに数年後 | |
相川 真一郎 | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2-A | 風芽丘 3年 | → | 大学1年 | ||||||
鷹城 唯子 | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2-A | 風芽丘 3年 | → | 大学1年 | 海鳴中 体育教師・1-3担任 | → | ||||
野々村 小鳥 | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2-F | 風芽丘 3年 | → | 大学1年 | ||||||
千堂 瞳 | 風芽丘 2年 | 風芽丘 3-G | |||||||||
御剣 いずみ | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2-A | 風芽丘 3年 | → | |||||||
綺堂 さくら | 風芽丘 1-B | 風芽丘 2年 | → | ||||||||
菟 弓華 | 風芽丘 2-A (※三学期以降) | 風芽丘 3年 | → | 香港国際警備隊 | |||||||
春原 七瀬 | 風芽丘 自縛霊 | 風芽丘 自縛霊 | → | ||||||||
端島 大輔 | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2-A | 風芽丘 3年 | ||||||||
井上 ななか | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2年 | → | テレビ関東ディレクター | テレビ関東ディレクター | ||||||
水村 遊 | 風芽丘 3年(※三学期以降) | ||||||||||
御剣 火影 | |||||||||||
稲原 真琴 | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2年 | → | ||||||||
槙原 耕介 | さざなみ寮管理人 | ||||||||||
槙原 愛 | 唐沢医科大学 | 槙原動物医院・院長 | |||||||||
椎名 ゆうひ | 天神音楽大学 1年 | クリステラソングスクール | → | SEENA | |||||||
神咲 薫 | 風芽丘 2年 | 風芽丘 3年 | 海鳴大 1年 | → | 海鳴大 2年 | ||||||
仁村 知佳 | 聖祥女子 1年 | 聖祥女子 2年 | 聖祥女子 3年 | → | 大学 1年(※さざなみ寮) | ||||||
岡本 みなみ | 風芽丘 1年 | 風芽丘 2-F | 風芽丘 3年 | → | 海鳴大 1年 | ※すでにさざなみを出ている | 大阪親日生命バスケ部 | ||||
陣内 美緒 | 山野瀬学院 3年 | 山野瀬学院 4年 | 山野瀬学院 5年 | → | 県立城西 1年、ペットショップでバイト | 県立城西 2年 | |||||
仁村 真雪 | 海鳴大 国文科専攻 5年 | (卒業、漫画家) | |||||||||
十六夜 | |||||||||||
リスティ・槙原 | |||||||||||
藤田 望 | 山野瀬学院 3年 | 山野瀬学院 4年 | 山野瀬学院 5年 | → | ドラッグストアふじたでバイト | ||||||
桂木さとみ | アメリカ留学 | 阪南大(九州) 1年 | |||||||||
御架月 | |||||||||||
景浦 裕子 | 県立城西 2年(バスケ部主将) | 県立城西 3年 | 海鳴大 1年 | ||||||||
陣内 啓吾 | さざなみ寮管理人 | 香港国際警防部隊副隊長、樺一号 | → | → | → | ||||||
槙原 神奈 | |||||||||||
雪 | |||||||||||
我那覇 舞 | |||||||||||
神咲 楓 | 学校の休み中にさざなみ寮へ | ||||||||||
佐伯 理恵 | 聖祥女子 1年 | 聖祥女子 2年 | 聖祥女子 3年 | ||||||||
小暮 奈緒 | さざなみ寮住人、美大生 | ||||||||||
高町 恭也 | 篠尾にて生活 | 風芽丘 3-G | 大学 1年 | 大学卒業 | |||||||
高町 美由希 | 篠尾にて生活 | 小学5年生 | 風芽丘 1-A | 風芽丘 2年 | 免許皆伝 | ||||||
城島 晶 | 海鳴第三小 4年 | 海鳴中 2-5 | 海鳴中 3年 | ||||||||
鳳 蓮飛 | 海鳴中 1-3 | 海鳴中 2年 | 両親帰国、高町家を離れる | ||||||||
フィアッセ・クリステラ | 翠屋チーフウェイトレス | 歌手復帰、日本と海外を行き来 | 海外在住 | ||||||||
神咲 那美 | 風芽丘 2-E | 風芽丘 3年 | お祓いのため全国を回る | ||||||||
月村 忍 | 私立海映 | 風芽丘 3-G | 大学 1年 | ||||||||
ノエル・綺堂・エーアリヒカイト | 月村家メイド | 月村家メイド | → | ||||||||
久遠 | |||||||||||
高町 なのは | 聖祥付属小 2年 | 聖祥付属小 3年 | |||||||||
高町 桃子 | ホテルグランシール東京 チーフパティシエ | 翠屋 経営者・店長 | → | ||||||||
不破 士郎 | |||||||||||
フィリス・矢沢 | 海鳴病院・医師 | ||||||||||
アリサ・ローウェル | |||||||||||
赤星 勇吾 | 風芽丘 3-G | 大学 1年 | |||||||||
西島 瑞乃 | 風芽丘第二小 4年 | 海鳴中 2年 | 海鳴中 3年 | ||||||||
不破 美沙斗 | 香港国際警備隊 | ||||||||||
クロノ・ハーヴェイ | 議長 | ||||||||||
リンディ・ハラオウン | ミッド・チルダ 最高行政官 | ||||||||||
リリちゃ桃子エピソード | とらハ2 第二部開始時点 | とらハ1 | ラブちゃ | ナツノカケラ | デンタル・パニック | とらハ3開始時点 | リリちゃ | 海鳴横断ハイパークイズ | お正月全員集合 | リリちゃエピローグ |
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