パカパカパッションシリーズ ゲームインプレッション

Last Update 2002/10/19

パカパカパッションとは?

 パカパカパッションというゲームをご存知でしょうか? 数年前に発売され、残念ながら今ではほとんどゲーセンで見かけることのなくなったアーケード音ゲーです。98年11月に発売された初代パカパカパッションを皮切りに、99年7月にはパカパカパッション2が、99年12月にはパカパカパッションスペシャルが発売されつつも、翌年8月にはメーカであるPRODUCEが営業停止となり、その後多くのゲームセンターからも撤去され、今では都内でも数えるほどしか見かけることのなくなったゲームです。

 私の自宅近辺にも3作すべて入っていたゲーセンがあったのですが、つい最近閉店となってしまい、残念ながら遊ぶことが出来なくなってしまいました。……ということもあって、ちょうどいい機会なのでこのゲームについて書いてみよう、というのが今回のゲームインプレッションです。(^^;)

私とパカパカパッション(笑)

 パカパカパッションは、アップライト型の筐体(http://www3.tky.3web.ne.jp/~rakusuke/ 参照)に取り付けられた4つのパッドをタイミングよく叩いていくことで各自が選択したパートを弾いていくゲームです(画面イメージなどはhttp://members.tripod.co.jp/axeman/paka.htm 参照)。選択できるパートは4つ、メロディラインのパートやドラムパート、伴奏パートなどの中から選択し、上から下に流れていく白いバーにあわせてタイミングよく4つのボタンを押していきます。ビートマニアやポップンミュージックなど多くの音ゲーでは「譜面が流れていく」形態を取るのに対して、パカパカパッションは「楽譜が置かれていて、それを弾いていく」と考えてもらえればよいでしょう。

 このゲームと初めて出会ったのは初代の頃。たまたま知人から大ハマリしているという話を聞いてせっかくだからとプレイして以来、今に至るまで足掛け5年間もプレイを続けています(いったいいくらつぎ込んだのか……は考えたくありません(笑))。ファミコンの時代からかなり長年ゲームをプレイしてきたとはいえ、5年間にも渡って一つのゲームにハマリ続けたというのは私の場合このゲームしかありませんし、ゲーセンに行ってもまずこのゲームしかやりません。なぜこれほどまでにこのゲームにハマったのだろうか……今さらながら考え直してみると、このゲームがごく当たり前の純粋な『面白さ』を持っており、なおかつその面白さに上限がないゲームデザインであるからだ、と感じられます。

ゲームデザインの巧妙性

 このゲームの面白さは、端的に言えば『曲を弾き上げる楽しさ』にあります。

 パカパカパッションは先に書いた通り置かれた譜面を4つのパッドを叩いて演奏していくというゲームなのですが、これは例えて言うなら譜面どおりにピアノを弾け、というようなものです。実際プレイを始めてみるとすぐに分かるのですが、初見の譜面を上手く弾けないのは当たり前、ところが回数をこなしてメロディラインが分かってくると、たどたどしかった音が徐々に形になっていく。上手くなればなるほどそれは華麗なメロディへと変化していき、そして他のパートと重なることで一つの『曲』になる。この楽しさは楽器(ピアノでもエレクトーンでもなんでもいいですが)を練習して上達していく楽しさと重なるのですが、その楽しさを見事にゲームという形に凝縮したのがこのパカパカパッションというゲームなのです。

 しかも上手いのは、一般的な楽器はたった一つの楽器をマスターするだけでも途方もない努力と時間を要するのですが、それをたった4つのパッドでお手軽に体験することができるようにした点にあります。多くの音ゲーは一つの曲に対して一つのパートしかありませんが、このゲームは一つの曲に対して4つの異なるパート(4つの異なる「楽器」と言った方が正しい)を演奏することができ、それぞれのパートの難易度が少しずつ異なります。まず最初は簡単な、主旋律のピアノパートを楽しむ。そして主旋律がうまく弾けるようになって曲の雰囲気を覚えたら、今度は主旋律を引き立てる伴奏パートを奏でて主旋律との調和を楽しむ。そしてさらに難易度の高いドラムスパートへと進んでリズム感を楽しむ。つまり、一つの曲に様々な側面(パート)からアプローチし、様々に楽しむ。4つのパッドはあるときはピアノになり、あるときにはギターになり、あるときにはブラスになり、あるときにはドラムになる(プレイしたことのない方は4つのパッドはパーカッションのように「叩く」イメージを想像すると思うのですが、実際にはピアノのように指で弾いたりすることもあります)。まさにこのゲームはともすれば単に音に合わせてキーを叩くだけになりがちな『音ゲー』とは一線を画した、『音楽を楽しむ音楽ゲーム』なのです。

 そしてまた、このゲームの楽しみ方には限界がありません。もちろん、一般的な楽器と比べれば自由度は狭いかもしれませんが、それでも一つのパートを正確に弾き上げていくことの追求には終わりがありませんし(ビーマニのようなヌルい判定ではない)、アレンジを加えながら弾いていくこともできる。曲数こそ1ゲームあたり9曲程度しかありませんが、各曲4パートあるので全36パート。これを通して9つの曲をじっくりと楽しんでいく。慣れてきたら慣れてきたで様々な楽しみ方があるし、極めゲーとして考えた場合にも100% Perfectを目指して際限なく究極を目指していくことができる、そういう奥深さがあるのです。

それでもやっぱり廃れてしまったパカパカパッション

 実際このような奥深さを持っているが故に、パカパカパッションというゲームはメーカが営業停止になっても今なお一部のコアなファンの間で根強い人気を誇っています(http://www17.cds.ne.jp/~nmc-y/ のリンクなどを参照)。私もまた音楽ゲームの最高峰はこのパカパカパッションである、と胸を張って断言したいものです。しかし音ゲーの代表について問われた場合、現実を直視すればやはりビートマニアに代表されるコナミのBMシリーズの方が圧倒的に人気が高いのが残念ながら実際です。

 なぜパカパカパッションはBMシリーズに圧倒されてしまったのか? それはビートマニアが『音を楽しむ』ゲームとしての側面よりも『プレイスタイル(パフォーマンス)を楽しむ』ゲームとしての側面を極めて強く重視したためだと私は考えています。派手に電飾された筐体、Good以上で連鎖するコンボ、蓄積される熱狂度ゲージ、圧倒的な速度で落下してくる譜面、そして立ったままのゲームプレイ。筐体デザイン、ゲームデザインなどどれを取っても「うまいプレイヤーがカッコよく見える」仕掛けを作りあげています。BMシリーズには「8th style」などのタイトルが付けられていますが、まさにその名の通りでゲームは「スタイル重視」なのです。実際、DDRを華麗に踊ったり、圧倒的なキーを華麗に捌いていくプレイは間違いなく「カッコいい」ものであるし、ギャラリーもそれに惹かれて当然でしょう。(この辺のコナミの手腕はいつものことながらさすがです。ゲーセンという『場』をよく理解しているが故の設計であると言えるでしょう。)

 これに比べると、パカパカパッションはあまりにもストイックすぎるほど『音楽重視』であり、そして『プレイスタイル』を軽視しすぎています。アップライト筐体に座って猫背になりながら4つのパッドボタンを叩き、かわいいポリゴンキャラを踊らせている。BPM=160でも静止しているが故にあまり凄そうに見えない譜面、演奏終了時にはPerfectだったチップの%数字のみが寂しく現れる……BMシリーズと比較してみると、傍目に見たときにカッコいいとは口が裂けても言えなさそうですし、プレイヤーとして想像されるイメージはネクラなヲタク(失礼(^^;))でしょう。どんなに曲がカッコよくても、ゲームデザインが優れていても、プレイスタイルが軽視されてしまっているが故に一般大衆を引き寄せることは出来なかったのではないでしょうか。

 しかしそれでもなおファンとして敢えて負け惜しみを言うのなら(笑)、パカパカパッションはきっと時代を超えて愛されるゲームのはずだ、と思います。なぜかというと、長い時間を経てプレイスタイルそのものが一般化し当たり前となり、カッコ良さが失われたときには『ゲーム』としての楽しさ、真価が問われるからです。なぜBMシリーズが最初のビートマニアだけで終わることなく、ドラムマニア、ギターフリークス、キーボードマニアと幅を広げていったのか。それは一つには『プレイスタイルの価値』を損なわないようにするための多角化戦略だったと捉えることができると思います(ビートマニアのキーボード&スクラッチによるパフォーマンスが「当たり前」になってしまうと人気が落ちて客足が引くということ)。パカパカパッションは初代から基本的なゲームシステムは一切変えていないわけですが、今に至ってもなおファンはファンであり続け、プレイを続けているという事実。それはパカパカパッションには純粋に『ゲーム』としての楽しさがあったからだ……ファンとしてのひいき目もあるのでしょうが、それでも私はそう思うのです。

 純粋に『曲』を弾く快感をそのままゲームにしたようなパカパカパッション。本当の意味での長寿ゲームは、パカパカパッションのようにプリミティブな快感をそのままゲームデザインに落とし込んだゲームなのではないか、そんなことを考えさせられました。身近なゲーセンにはなくなりましたけれど、それでも私はなおパカパカパッションを捜し求めてゲーセンを回るのでしょう。まだまだしばらくはパカパカパッションへの熱は冷めそうにはありません。

 みなさんも、もしゲーセンで見かけたらぜひ何回かプレイしてみてください。ダサいですけれど(笑)、きっと楽しんでもらえると思います。


※mailto:akane@pasteltown.sakura.ne.jp (まちばりあかね☆)