過去ログを整理してたら昔に書いたKanonの解釈が出てきました。せっかくなので掲載。
 といっても今となってはいろいろな説が出てきてるので、あんまり役には立たないかもしれませんが。
 (というか、あゆシナリオ解釈は結構間違ってますねー、多分。当時は秋子さんまわりが今ひとつ掴みにくかったんですが、今から思えば秋子さんは全部分かってたんでしょうね。(^^;))

月宮あゆシナリオ

[書き込みその1]

細かい解釈まで含めるといろいろな説があるのでざっくり書きます。(といいつつ長文(^^;)) 鍵になるトピックスは、

・エピローグにある「この四角い部屋の中で、季節のない時間の中で」というセリフ。
・7年前の事故の際に、祐一はあゆにカチューシャを渡せていない。
・実年齢に比べてあゆは見た目が幼く、昔の面影を留めている。
 (名雪とは対照的であり、またエピローグで出てくるあゆがかなり変わっているのもポイント)
・雪の降るバックで流れるテロップはあゆのセリフ。
 これがあゆの記憶であるのなら、なぜ祐一の前に現れたあゆは事故の記憶を持たないのか。

といったところでしょうか。これらを統合すると、以下のようなことになるでしょう。

・あゆは、7年前の事故に遭ったときに、意識(魂)が二つに分裂してしまった。
 一方は病床に伏せるあゆ。夜明けを待ち、明日を求めるあゆ。
 もう一つは祐一と遊びたい、この街に居続けたいという想い。
・あゆの意識が7年間戻らなかったのは、あゆの魂の半身である「あゆ」が街に居続けたから。
 いわば幽体離脱のような状態と考えればよいでしょう。

以下、

あゆ  … 今現在、病床に伏せて意識不明の状態にいる、あゆ本人。
「あゆ」… 祐一が街で出会った、赤いカチューシャをして羽根付きかばんを背負ったあゆ。

と書き分けることにします。

問題なのは、祐一の前に現れた(羽根つきの)「あゆ」が、単純にあゆ本人の魂だけではない点です。
あゆ本人は、自分が赤いカチューシャをプレゼントされたことを知らないからです。
このことは、エピローグ最初の(夢の中で)駅前で祐一を待つあゆが赤いカチューシャをしていないことからも分かります。
実はあゆシナリオでは「奇跡」という言葉が使われているのはたったの2個所だけです。
一つは1/30のモノローグの「あゆは、確かに存在していた。たとえそれが、どんな奇跡の上にあったとしても、俺はこの街であゆと再会した。」というところ、そしてもう一つはEDのエピローグの最後だけ。このことから考えれば、「あゆ」はあゆ本人が街に残した想い(=ボクも、この街に住みたかった…)と、祐一の想いとが重なり合って起こした「奇跡」だと考えてよいと思います。

※この奇跡がどうして起こったのか、についてはいわばファンタジーの世界なのでいろいろな解釈があると思います。その一つに、「あゆ」と天使のぬいぐるみの共通事項が極めて多い(羽根やローブ、左利きなど)ことからぬいぐるみが媒介となったとする解釈があり、非常にいい説だと思っています。

あゆが意識を取り戻すための条件は幽体離脱している「あゆ」が自分の体に戻ることなので、あゆが意識を取り戻したことを「奇跡」と呼んでいるわけではないのもポイントですね。

[書き込みその2]

◇願いを叶える天使の人形
あゆとの思い出の中で、あゆはこんなふうに語ります。
「大丈夫。きっと見つかるよ。この人形を必要とする人がいれば、必ず…」
名雪、栞のシナリオではあゆがこの人形を見つけて、そしてあゆは最後の願いを祐一の幸せを叶えるために使っています。(それは結果としてあゆの魂の消滅、「夢の終わる日」を意味していますが) これに対して、あゆのシナリオの中では「あゆ」が探しても『見つからなかった』のがちょっと暗示的な気がします。祐一がこれを見つけて、「あゆ」との再会を願う....きっと、「あゆ」があゆ本人の魂の半身だけから出来ているのではないから、つまり祐一の想いが合わさっているからこそ、「あゆ」と再会できたのでは? と思います。
ただ本当の意味での最後の願いについては、祐一が「あゆ」の本当の願い(「もう1回…祐一君と、たい焼き食べたいよ…」)を「あゆ」に強く思わせることで、祐一が少女の3つ目の願いを叶えた(「あゆ」を元の肉体に戻らせた)と考える方がいいような気もします。

あゆのシナリオにおいて、「あゆ」があゆの願いを叶えた、と考えるのはさすがにどうか、という気が私はします。もしそうだとすると、人間は想いさえ強ければ生き返れる、ということになってしまうからです。他のキャラ(名雪、栞のシナリオ)で奇跡を起こす対価としてあゆの自己犠牲がある以上、「あゆ」の願いが叶うためにも何らかの対価が必要になるはず。
でも、あゆのシナリオでそれがないのは、きっと「あゆ」があゆの元に戻るだけであゆは意識を取り戻せるから、だったのではないかと思うのです。つまり、「あゆ」の願いを叶えたのは「あゆ」の持つ力ではなく、祐一だったのではないでしょうか。

[書き込みその3]

名雪のシナリオとあゆのシナリオを見比べてみると、おそらく7年前の事故の日の一日はこうなっていたのではないでしょうか?

・当初、祐一が自分の街に帰る予定だった日の午前中に、あゆの事故が起こる。
 1/27祐一「それにだ、まだ今日と明日があるだろ?」
 1/28あゆ「明日…まだ、会えるよね?」祐一「そうだな、午前中だったら大丈夫だ」
 1/29「でも…。そんな時間も、今日で終わる。」
   「だから、少しでもたくさんの思い出を、残しておきたかった。」
 などの台詞から、祐一はこの日の午後に帰る予定であったことが分かります。

・あゆの事故が起こり、祐一はあゆをおぶって山を降り、病院へと運ぶ。
 このあと、病院に名雪と秋子さんや祐一の家族が駆けつけますが、意識不明の重体になっているあゆのことに耐え切れなくなり、祐一は病院から飛び出してしまう。この時点で、この日のうちに帰ることは不可能になり、帰るのは翌日に延期されます。

・このあと、祐一は夜中まで駅のベンチで泣きつづけ、そこに名雪が雪うさぎを持ってなぐさめに来てくれる。名雪が祐一にここで告白したのは、名雪がずっと好きだった祐一を、悲しみの底から何とか救いたかった、その想いの一点に尽きると思います。
 (1/23名雪「…家に帰ってなかったから…ずっと探してたんだよ…」
      「…祐一……さっきの言葉、どうしてももう一度言いたいから……明日、会ってくれる?」
  そして、約束の日…。ひとりぼっちで佇む少女の元に、俺は最後まで姿を見せることはなかった…。)
 この背景があることを考えると、名雪の告白の台詞ってめちゃめちゃ重たいです。

・そしてその翌日、祐一はあゆの記憶を幻で上書きし、記憶の底に閉ざしたのだと思います。
 これだけのことがあれば、祐一の普段の行動は急激に暗くなったはずで、祐一に非がない(というか、不幸の事故であったことを知っていた)家族も秋子さんも名雪も、事故の日の出来事に関する一切の話題を封印したのではないでしょうか。名雪は7年前のことを知っているにもかかわらず、祐一に質問をぶつけられたときにとぼけます(1/22)。とはいえ、秋子さんはまさか祐一が7年前の事故を忘れてしまっているとは思っておらず、そこで祐一に「7年前の冬に、この街で何があったか…ご存じですか?」(1/21)という質問をぶつけてみたのだと思います。

川澄 舞シナリオ

 舞が最後に葬り去ろうとした少女は、10年前に舞と祐一が別れるときに舞が作り出した5体の魔物の最後の一体です。

 舞は幼い頃、母親を亡くしかけ、そのときの強い想いで舞は超能力を持つことになります。超能力によって舞は母親を蘇らせ、母親と再び暮らせるようになったものの、この超能力のために舞と母親は周りの人たちから疎まれ、迫害にあってこの街へと越してきました。ところがこの街でもやはり疎まれることになり、結果として舞は一人ぼっちで過ごすことになります。

 そして10年前、舞は麦畑で祐一と出会う。自分の超能力を疎まなかった初めての人。ところが夏休みの最後に祐一が実家に帰ることを、舞は自分の超能力が怖くなったからだと勘違いし、舞は祐一にウソをつきます。
 「ねぇ、助けてほしいのっ」「…魔物がくるのっ」「いつもの遊び場所にっ…」
 「だから守らなくちゃっ…ふたりで守ろうよっ」
 舞は魔物が本当に現れてくれたら祐一があの場所に居続けると信じて。そして現れた魔物は、あの日の境遇(舞を一人ぼっちにする)を生み出した忌まわしき己の力、そのものだった。
 ところが祐一は舞を放ってそのまま帰ってしまいます。舞はそれから10年間、たった一人でその魔物との戦いを続けることになります。自分が生み出した魔物を消し去るため。ところが、魔物は舞の己そのものでもあったため、魔物を討つことはすなわち自分の体を傷つけていくことに等しかった....

 というのが概略です。これでシナリオは理解できるのではと思います。あとはラストをもう一度プレイして、是非とも感動を味わってください。(^^;)

 舞のシナリオに関しては、奇跡を起こしたのがシナリオ中で明確に「まい」の力であることが書かれているので、主人公が奇跡を起こす余地がないのでは、と思います。確か、「まい」(=10年前に舞が解き放った舞の力の一部)が未来の舞のことをよろしく、という発言をしていたはずです。これを素直に解釈すれば、舞は「まい」のせいで不幸な人生を送ることになってしまったけれども、「まい」が自分の力をすべて使って舞を蘇らせてあげるから、あとはよろしく、って読めますよね。今の舞が「まい」の力を取り込んでいるかどうか、についてはどちらとも書かれておらず、考え方によっては舞を幸福にすると共に不幸にも陥れた超能力が、最後に奇跡を起こして、なくなることですべてが解決した、とも解釈できます。


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