オタクのためのプロジェクター導入ノウハウ

Original Created 2004/06/15 ver 0.01
Update 2005/01/29 ver 0.07


はじめに

 このページは、アニメ好きな方、あるいはゲーマーな方、すなわちオタクな方々向けのプロジェクターの設置&導入ノウハウをまとめたページです。一般的なプロジェクター導入ノウハウのページは多数あるのですが、アニオタ・ゲーオタ向けに特化したノウハウページがなく、苦戦したのでまとめてみました。

 大画面でさくらちゃんとはにゃ〜んしたい方々、大画面で大空を駆け回りたい方々、実物大で一部のゲームを楽しみたい方(汗)は、是非このページを参考にしてプロジェクターを導入してみてください。ご予算約 30 万円で、至福の時が待っています

大画面テレビの選択肢

 2004 年現在、大画面でアニメやゲームを楽しもうとする場合、以下の 4 つの選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

 特に重要な点を以下に補足します。

■ 画面サイズについて

 現在のほとんどの大型テレビはワイドテレビ(16:9)になっていますが、4:3 ソースを映した場合には、左右に黒帯が出来るため、かなりサイズが小さくなります。以下が大まかな変換表です。(ワイド : NTSC = 1.223 : 1 となり、約 2 割近くサイズが小さくなる)

ワイドテレビとしてのサイズ 25 33 37 42 50 60 80 98
そこに 4:3 ソースを映した場合のサイズ 21 27 30 34 41 49 65 80

 この表からも分かるように、50 インチの大型プラズマテレビを買っても、NTSC ソースでは 40 型相当のサイズにしかなりません。リビングならともかく、ほとんどの部屋では縦方向のスペースよりも横方向のスペースが設置時のボトルネックになるため、オタクにとってワイドテレビは値段の割に画面がかなり小さくなるという、不利な選択になります。

 一方、プロジェクターの場合は 4:3 スクリーンを導入しておけば、画面の拡大・縮小により、横幅めいいっぱいを利用して画面を映すことができます。

■ TV チューナーと録画機について

 プロジェクターには当然のことながら TV チューナーがついていません。このため、単体ではテレビを見ることができず、ビデオデッキなどの併用が必須になります。一方のプラズマや液晶テレビには確かに BS/CS デジタルチューナー標準搭載機が多いですが、単体では録画が出来ないため、おそらく外部録画機(RecPOT や D-VHS など)の追加購入が必要になるでしょう。

 ある程度予算がある場合には、プロジェクターに加えて、デジタル BS/CS/地上波向けの HDD レコーダを追加購入することをお薦めします。プラズマや液晶テレビに後から録画機を追加することに比べれば、かえって安上がりになります。

■ テレビとしての常用について

 特にこの点は一人暮らしの方などに注意して頂きたいのですが、プロジェクターは「暗くして」使うのが基本であり、ブラウン管テレビのような気軽な常用は難しいと考えた方がよいです。画面も大きすぎるため、アニメやゲームを楽しむならともかく、日常的な利用は結構疲れます。ここ一番のときに大画面を楽しむためのツール、と考えた方がいいです。

 このため、普段ニュースや天気予報などを見るために利用できる、15 インチ程度の小さなテレビを併用し、プロジェクターはアニメ、ゲーム、PC の 3 つに絞って利用することをお薦めします。(プラズマテレビや液晶テレビであれば、このような問題はないでしょう。)

 ちなみに私がプロジェクターの導入を決意したのは、以下のような理由からでした。

実際に購入した物品 & 金額

機材 種別 価格
EPSON EMP-TW200 720p 液晶プロジェクター 約 19 万円(今はもう少し安め)
キクチ MTSR-80AM 80型 NTSC スクリーン 約 4 万円
ルミナスプラス PH7618-5 + α スチールワイヤラック オプション含めて 約 2 万円
M4 ネジ類 プロジェクター取り付け金具類 全部で 1000 円ぐらい
D 端子ケーブル 10m
S 端子ケーブル 10m
D-Sub ケーブル 10m
コンポーネントケーブル 10m
D 端子セレクタ
ケーブル・アクセサリー類 全部で 2 万円強
(うち D 端子ケーブル 10m が約 \13k ぐらい)
RADEON 9600XT 256MB + HDTV コンポーネントケーブルアダプタ 1280 x 720p ネイティブ出力をするための VGA カードとアダプタ カード 約 2 万円 + アダプタ 約 1 万円
SHARP DV-HRD10 BS/CS デジタル HDD レコーダ すでに持っていた
NEC AX-300H 地上波向け HDD レコーダ すでに持っていた
PS2, XBOX, DC, etc. ゲーム機器 すでに持っていた

 そんなわけで、今回の追加投資が約 30 万円弱、となりました。(※ 後述しますが、RADEON 9600XT は余分な買い物でした。通常は不要だと思います。)

購入するプロジェクターやスクリーンの選定

 薄型大画面テレビは「買ってきて置けば終わり」ですが、プロジェクターはそうはいきません。予め、設置場所や投影距離、遮蔽物有無などを設計してから導入しないと、スクリーンから映像がはみ出してしまった、といった捨て身のギャグになりかねません。以下に、設置に関する設計の注意点をまとめます。

■ プロジェクターやスクリーンの常設位置の確保

 最近のプロジェクターはかなり小型化されているため、持ち運びは容易になりましたが、そこそこ大画面に投影して日常的に使おうとすると、常設することが事実上必須です。よって、まずはスクリーンを設置する壁面と、その反対側にプロジェクターを設置する棚を確保する必要があります。

 スクリーン設置位置を決める際には、スクリーンの設置高に注意してください。自分の座る位置によっては、かなり画面を見上げるような姿勢になってしまうため、見ていて疲れてしまいます。

■ 遮蔽物の確認

 当然ですが、スクリーンまでの間に本棚などの邪魔者がいると映りませんので気をつけてください。実際にプロジェクターが設置されるであろう場所に自分の顔を置き、見通しが利くかどうかを確認します。また床に座って見る場合、膝立ちしたぐらいで光に頭がひっかかってしまうようだと辛いので、注意してください。(プロジェクターを天井釣りにすることが多い理由はこうしたこともあると思います)

 なお、プロジェクターを高い場所に引き上げる方法としては、本棚の上などに置く方法以外にも、スチールワイヤーラックに取り付ける方法や、専用金具を使う方法などがあります。これらを使うと、天井に穴を空ける必要もありません。(詳細は「プロジェクターの設置方法の決定」の項で解説しますが、プロジェクターのうまい置き場が見つからないという方は、この項を先に読んでみてください。)

■ 投射距離、スクリーンの設置可能最大サイズの測定

 実際に設置可能か否かをチェックする際には、上で決めた設置位置を元にして、投射距離とスクリーンの横幅を確認する必要があります。特に、設置位置によっては表示サイズがギリギリになることもあると思いますので、それぞれの測定はなるべく正確に行ってください。

◇ スクリーンの投影面のサイズは、物理的に取れる横幅よりも約 20 cmは小さくなる

 例えばこちらのスクリーンを見て頂きたいのですが、実際のスクリーンには白い投影面の周りに必ず黒い額縁があり、さらに上には巻き取りのためのケースが取り付けられています。このため、スクリーンの投影面のサイズは、外寸(物理的にスクリーンを設置可能な横幅)よりも約 20 cm 程度は小さくなります。

◇ 投影距離は、プロジェクターのレンズからの距離で測る

 ほとんどのメーカーでは、投影距離 vs スクリーンサイズの早見表は、設置位置からの距離ではなく、設置されたプロジェクターのレンズ面からの距離として書かれています。これを見落とすと、測定距離が 10 〜 20cm ほどブレますので気をつけてください。

 ここで測定したサイズがそもそも現実性のあるものなのかは、早めにチェックしてください。まずは普及価格帯の代表的なプロジェクターでもあり、設置自由度のかなり高い機種である、EPSON の EMP-TW200 (約 20 万円程度の機種)のホームページを使って確認することをお薦めします。このホームページには Flash を利用した設置シミュレータがあり(画面一番下の「実感!体感!投射シミュレータ」)、これを使うとおおまかな設置の感覚がつかめるはずです。

■ プロジェクター設置の詳細設計

 上記で「おおまかにはいけそう」という感覚が掴めたら、次に正確な設置可否を確認します。この確認は、スクリーンサイズと、レンズシフトの 2 面から行います。

◇ スクリーンサイズ

 まず、こちらのページこちらの PDF ファイルを使って、投影距離とスクリーンサイズの関係を調べます。通常、これらの表はスクリーンサイズに対する最短/最長投射距離で書いていますが、プロジェクターとスクリーンを常設する場合、ある特定の投射距離において表示可能な画面最大・最小サイズを計算する必要があります。……っつーか、そういう表もつけてくださいよ。(苦笑) >EPSON さん

 そんなわけで、表を作りました。EMP-TW200 用です。

投影 距離 4:3 最大サイズ 4:3 最小サイズ 16:9 最大サイズ 16:9 最小サイズ
  横幅 (W) 縦幅 (H) 横幅 (W) 縦幅 (H) 横幅 (W) 縦幅 (H) 横幅 (W) 縦幅 (H)
1000 28 566 425 19 377 282 34 754 425 23 501 282
1100 31 621 466 20 413 310 37 826 466 25 549 310
1200 33 675 507 22 449 337 41 898 507 27 598 337
1300 36 730 547 24 486 364 44 971 547 29 646 364
1400 39 784 588 26 522 392 47 1043 588 31 695 392
1500 41 839 629 27 559 419 50 1116 629 34 743 419
1600 44 893 670 29 595 446 54 1188 670 36 791 446
1700 47 948 711 31 631 473 57 1261 711 38 840 473
1800 49 1002 752 33 668 501 60 1333 752 40 888 501
1900 52 1057 793 35 704 528 64 1406 793 42 937 528
2000 55 1111 834 36 740 555 67 1478 834 45 985 555
2100 57 1166 874 38 777 583 70 1551 874 47 1033 583
2200 60 1220 915 40 813 610 73 1623 915 49 1082 610
2300 63 1275 956 42 850 637 77 1696 956 51 1130 637
2400 65 1329 997 44 886 664 80 1768 997 53 1179 664
2500 68 1384 1038 45 922 692 83 1841 1038 56 1227 692
2600 71 1438 1079 47 959 719 87 1913 1079 58 1275 719
2700 73 1493 1120 49 995 746 90 1986 1120 60 1324 746
2800 76 1547 1160 51 1032 774 93 2058 1160 62 1372 774
2900 79 1602 1201 53 1068 801 96 2131 1201 64 1421 801
3000 82 1656 1242 54 1104 828 100 2203 1242 66 1469 828
3100 84 1711 1283 56 1141 855 103 2276 1283 69 1517 855
3200 87 1765 1324 58 1177 883 106 2348 1324 71 1566 883
3300 90 1820 1365 60 1213 910 110 2421 1365 73 1614 910
3400 92 1874 1406 62 1250 937 113 2493 1406 75 1663 937
3500 95 1929 1447 63 1286 965 116 2566 1447 77 1711 965
3600 98 1983 1487 65 1323 992 119 2638 1487 80 1759 992
3700 100 2038 1528 67 1359 1019 123 2711 1528 82 1808 1019
3800 103 2092 1569 69 1395 1047 126 2783 1569 84 1856 1047
3900 106 2147 1610 70 1432 1074 129 2856 1610 86 1905 1074
4000 108 2201 1651 72 1468 1101 132 2928 1651 88 1953 1101
4100 111 2256 1692 74 1504 1128 136 3001 1692 91 2001 1128
4200 114 2310 1733 76 1541 1156 139 3073 1733 93 2050 1156
4300 116 2365 1774 78 1577 1183 142 3146 1774 95 2098 1183
4400 119 2419 1814 79 1614 1210 146 3218 1814 97 2147 1210
4500 122 2474 1855 81 1650 1238 149 3291 1855 99 2195 1238
4600 124 2528 1896 83 1686 1265 152 3363 1896 102 2243 1265
4700 127 2583 1937 85 1723 1292 155 3436 1937 104 2292 1292
4800 130 2637 1978 87 1759 1319 159 3508 1978 106 2340 1319
4900 132 2692 2019 88 1796 1347 162 3581 2019 108 2389 1347
5000 135 2746 2060 90 1832 1374 165 3653 2060 110 2437 1374

 これを元に、以下の表を埋めてください。ちなみに数値は私の部屋の場合の値ですが、この範囲に先に測定したスクリーンサイズがうまく収まっていれば OK です。

スクリーンまでの距離 4:3 ソース 16:9 ソース
最大サイズ 最小サイズ 最大サイズ 最小サイズ
3300 mm 90 型 60 型 110 型 73 型
1820(W) x 1365(H) 1213(W) x 910(H) 2421(W) x 1365(H) 1614(W) x 910(H)

 私の部屋の場合には、設置可能なスクリーンサイズの最大値が横 1600 ちょっと、縦方向は余裕あり、という状態だったので、16:9 がきちんと投影できるかどうかギリギリ、という危険な状態でした。結局見切り発車で購入してしまいましたが(^^;)、ギリギリになった場合には何度か繰り返して測定することをお薦めします。

◇ レンズシフト

 レンズシフトとは、スクリーンに対して中心位置からずらした場所にプロジェクターを設置可能とする機能です。(こちらのページの真ん中あたりの「左右レンズシフト、上下レンズシフト」の解説を読んでください。)

 特に左右方向の設置の自由度は、プロジェクターの機種によってかなり変わります。EPSON EMP-TW200 は割と設置自由度が高い方なので、これで設置不可能となると、斜めからの投影が可能な特殊な機種を選ぶ必要があります。

 なお、レンズシフトが出来るといっても、しないで済むならそれに越したことはありません。こちらのホームページの方がレンズシフトによる映像のズレを検証していますが、実際このような映像のズレが出ます。(普通の映像を見る分には気になりませんが)

 また、上下方向のレンズシフト範囲にも注意してください。例えば EMP-TW200 の場合、投影画面はプロジェクターに対して上方向には大きくズラせますが、下方向には大きくズラせません。このため、下図のように天井めいいっぱいの高さまでプロジェクターを持ち上げて画面を下げたい場合には、プロジェクターを逆さ釣りにする必要があります。(また、天地逆さにすると、レンズの位置や排気口の位置も逆になりますので注意してください。)

■ プロジェクターの機種選定

 この辺まで決まったら、実際にプロジェクターの機種を選定することになると思います。

◇ 方式

 プロジェクターには液晶方式、DLP 方式、三管式などのいくつかの種類があります。最近の安いプロジェクターはほとんど液晶プロジェクターであり、+ 10 〜 20 万円程度の価格帯のところに DLP プロジェクターがあります。

 DLP プロジェクターは色の再現力、寿命の点で大幅に有利といわれ、画面の焼き付きを起こさないというメリットがあります(詳細はこちらのページこちらのページを参照)。半面、720p 出力に対応したものとなると 30 万円前後となり、あまり安くないという問題があります。

 私の場合は、液晶プロジェクターである EPSON EMP-TW200 にしましたが、これは以下のような判断からです。

◇ 輝度

※ この項目は非常に重要ですので、必ずチェックしてください。

 プロジェクターの場合、画面のメリハリを決めるのは、コントラスト比ではなく輝度です。通常の事務所の明るさは約 400 ルクスといわれていますが、この明るさに負けないぐらいの明るさが確保できないと、部屋の明かりをつけた状態ではコントラストのはっきりしない、「薄い色」の絵になってしまいます。

 画面の明るさは、投影する画面サイズによって変わり、プロジェクターの輝度(ANSI ルーメン)を、投影する画面の m^2 サイズで割り算することによって算出できます。例えば私の部屋の場合、先に書いた通り、16:9 の投影サイズは 1614(W) x 910(H) であり、EMP-TW200 の輝度は 1,300 ANSI ルーメンなので、

1,300 (ANSI ルーメン) ÷ ( 1.614(m) × 0.910(m)) = 879 ルクス

が投影時の画面の明るさということになります。また、4:3 の投影サイズでめいいっぱい引き伸ばした場合(すなわち画面サイズとして 1614(W) x 1210(H) )を利用した場合には、

1,300 (ANSI ルーメン) ÷ ( (2.151(m) × 1.210(m) ) = 499 ルクス

となります。(この計算はミスしやすいので注意してください。下図参照。)

 計算式からも分かるように、画面サイズを絞れば絞るほど、画面の輝度は上がります。ですので、スクリーンまでの距離に対して『最も画面を小さくしたとき』の輝度を必ず計算しておいてください。

 十分に見やすい画面を得るためには、おおよその目安として、約 5 〜 10 倍程度が必要と言われますので、私の場合(879 ルクス)には部屋の明るさを 100 ルクス程度に落とす、つまり部屋の明るさを 1/4 程度にすれば見られる画面になる、ということになります。実際には、光源の位置やスクリーンへの光の当たり方によっても異なるため、上記の数値は目安にしかなりませんが、少なくとも私の部屋のように 3m 近くの距離を取らなければならない場合、どう頑張っても「部屋の明かりをすべてつけたまま使えるようなシロモノではない」ということは明らかです。

 最近は「リビングモード」といった名前がついたプロジェクターが多々ありますが、普通に蛍光灯のついたリビングで何の問題もなく使えるようなプロジェクターはホームシアター向け製品では存在しない、と考えた方がよいでしょう。(EMP-TW200 は、ホームユースのプロジェクターの輝度としては高い方です。)(ちなみにビジネスプロジェクター製品の中には非常に輝度の高い製品が存在しますが、こちらについては価格帯も割と高く、D 端子入力なども出来ないため、手が出しづらいと思います。)

 ちなみに私の部屋の場合、普段はスクリーン面に直接当たる蛍光灯の明かりを落とし、最大輝度+多少のコントラスト強化を行って利用しており、さらに綺麗な映像を楽しみたい場合には、机の上の蛍光灯のみをつけるようにしています。(EMP-TW200 に限りませんが、ほとんどのプロジェクターでは輝度を高くすると色の表現力が落ちるため、白飛びが起こります。このため、綺麗な映像を楽しみたければ、やはり部屋を暗くすることがどうしても必要です。)

◇ 入力端子

 基本的には、D 端子、コンポーネント、S 端子、D-Sub 入力が付いていれば十分でしょう。

 なお、EMP-TW200 の場合には PC のデジタル入力端子(DVI-D)がついていませんが、XGA (1024x768) 程度の入力であれば 10m 近くケーブルを引き回してもゴーストは出ないので、問題にはならないと思います。また、そもそも EMP-TW200 のような現在の 720p ワイド液晶プロジェクターのパネルの画素数は 1280 x 720 であるため、XGA は疑似対応になります(要するに細かい文字がややボケる)。このことから考えても、DVI-D 接続にこだわるのはナンセンスだと思います。

 ちなみに、PC の文字も綺麗に映したい場合には RADEON のビデオカードと HDTV アダプターを利用すると PC から直接コンポーネント出力(1280x720 での出力)をすることができます。これを使うと上記のようなドットボケがなくなるのですが、ちょいと難点があります。これについては後述。

 私は以上のようなことを元にして EMP-TW200 を最終的に選定しました。決め手になったのは輝度の高さと評判の良さ、値ごろ感、加えてEPSON のプロジェクターは色作りがアニメに向いているらしい、という噂を聞いたためです(爆)。逆にひっかかった点としては、DVI-D がないこと(→ たかが XGA なのでゴーストは出ないと踏んだ(実際のところ問題なし))、本体サイズがやや大きいこと(→ 下の写真にあるように専用の設置位置を確保するので問題なしと踏んだ)、でした。

 20 万円前後のプロジェクターとしては非常に評判の良い機種のようですが、実際にはいくつかのサイトで評価を見たり確認したりするとよいと思います。私の場合、外れくじを引いたというほどではないにせよ、厳しくチェックすると 2 点ほど問題がありました。

 どちらも通常の映像を見る分には実質的に問題にはなりませんが、RADEON の HDTV 出力などだと多少気になります。この辺、個体差の問題もあると思いますのでなんとも言えませんが。

■ プロジェクターの設置方法の決定

 具体的なプロジェクターの機種が決まったら、設置方法も決定します。ちょうどよい高さの本棚があり、その上に置けば済むのであれば簡単ですが、そうでない場合にはラックの買い替えなども検討しなければなりません。ここでは 2 つほど設置の Tips をご紹介します。

◇ プロジェクター設置専用器具を使う

 天井と床の間に支え棒のようなパイプを置き、その間にプロジェクター設置用の棚を置く方法で、ニッシャ技研から販売されている DREAM/SQUARE という製品を利用します。写真イメージと解説を見れば分かるとおり、天井などに穴を空けたりする必要がなく、部屋のレイアウト変更が簡単に出来るというメリットがあります。

◇ スチールワイヤーラックを使う

 最近流行り(?)のワイヤーラックを使う方法です。私はこの方法を使っていますが、これは写真を見せた方が早いので掲載。(^^;)

 この方法の良いところは、天井釣りが比較的簡単(しかも安価)に実現できることです。例えば EMP-TW200 の場合には、背面に M4 のネジ穴が 4 つ開いています。東急ハンズあたりで M4 の蝶ネジとワッシャ(場合によっては2枚重ね)と微調整のためのスプリングワッシャを購入すれば、10 分とかからず天井釣りが実現できます。

 この方法を使う場合の注意点についても、以下に簡単に書いておきます。

 なお、プロジェクターの設置位置を決める際にはプロジェクターの排気口の位置にも注意してください。プロジェクターはかなり排熱しますので、排気口を塞がないようにする必要があります。

■ スクリーンの選定

 スクリーンについては、@ 設置方法と、A 生地の種類、の 2 つを考える必要があり、モノによって値段がピンキリです。ある店で聞いたところ、売れ線は 1 万円ちょっとの超安物と、10 万円以上の電動式のしっかりしたもののどちらかが多いのだとか。

 とはいえ予算が潤沢にある方ならともかく、そうでない方の場合にはそこそこのお値段のもので手を打つことになるだろうと思います。有名どころだと、キクチOS などがあるようです。

◇ 設置方法

 単純な壁掛けタイプ、手動引き降ろしタイプ、床からの立ち上げタイプ、電動タイプなどがありますが、モノによってかなり値段が変わります。スクリーンがホコリをかぶると可哀想なことになるので簡単に収容できること、そしてそこそこ安いもの、という 2 つの条件を考えると、事実上、手動引き降ろしタイプのものになるのではないかと思います。

 しかし、賃貸マンションなどで壁面に工事が出来ない場合には、床からの立ち上げタイプや単純な壁掛けタイプを使う必要があります。

 なお手動引き降ろしタイプのものを使う場合には、壁面への取付工事が必要ですが、取付金具の位置が左右にずらせないものもあるようです。カタログなどには取り付けに関する寸法情報などが必ず掲載されていますので、購入前には必ず確認することをお薦めします。また、ドリルの穴あけなどに慣れていない場合には注意が必要です。私の場合は幸いにして(?)父が DIY に強いので、取り付け工事を頼んでしまうことにしました。

※ 2004/06/30 追記

 先日、ハンズを物色しているときにハタと気付いたのですが、テンションラックと壁掛けスクリーンを使うことで、完全に工事なしでスクリーンを設置できるかもしれません。

 テンションラックとは、主に台所などで天井との間につっかえ棒を配置することで棚を設置するものですが(ここのテンションシェルフを参照)、意外に耐荷重があるようで、おそらくスクリーン程度であればラクにかけることができると思います。これと壁掛けスクリーンを使えば、全く工事なしでスクリーンを壁面にインストールできるかもしれません。

※ 2005/01/04 追記

 さらに先日知ったのですが、実は AV ラックなどの上に簡単にスクリーンを設置できるような専用スタンドが存在します。ハヤミのスクリーンスタンドという器具がそれ。価格的には多少高めなのですが(実売で \35k 程度)、引き出し式のスクリーンなども難なく設置可能。スクリーンは別売りになりますが、引き出し式でなく単純な壁掛けタイプのもの(比較的安価)を利用できるので、トータルとしてはそれほど割高にはならないはず。また、60 〜 100 インチスクリーンに対応できるので、これがあればたいていの場所には導入できるでしょう。

◇ 生地の種類

 メーカーにより分類方法がいろいろ違っていますが、ホワイト系/グレー系、あるいは生地の種類などによって分類されています。グレー系はマットの色味を少し暗めにすることで、画面のコントラストを稼ごうとするものです。これらはショールームなどで、実際に同じプロジェクターで異なるスクリーンに投影すると確かに違いが分かるのですが、そうでない限りは素人目にはよく分からない……というのが本音です。

 なお黒浮きを避ける方法としては、グレー系のスクリーンを使う他に、ND フィルター(減光フィルター)を使う方法もあるようです。

※ 2005/01/04 追記

 ややイレギュラーですが、安価に 16:9 スクリーンを導入したいのなら最近発売されたペーパースクリーンを使うという選択肢もあります。スクリーンの平面性についてはまだやや難もあるようですが、なんといっても安価なこと、廃棄がラクなこと、そして軽いために設置の柔軟性が高いというメリットがあります。引き出しタイプのスクリーンだと 5 kg 程度の重さはあるため頑丈な設置が必要ですが、この重さなら比較的簡素な止め具でも十分耐えられるはず。また、可燃ゴミとして廃棄できるため、とりあえずこのペーパースクリーンを導入してみて、不満に思えてきたらきちんとしたスクリーンを導入する、という方法もアリだと思います。(※ 2005/01/29 追記 : ペーパースクリーンも導入しました。詳しくは後述。)

 サイズに関しては基本的に「大は小を兼ねる」です。インストール可能な最大サイズのスクリーンを購入してしまってください。後から買い換えとなると、スクリーンをまるごと一本捨てることになります。

 で、結局私はどうしたかというと、「そこそこ手の届く値段(5 万以下)で、グレー系のもの」という基準で、キクチの MTSR-80AM を選びました。2004/06/15 現在、まだ届いてませんけど。(涙)

 なお、スクリーンはプロジェクターとは別に、後から購入するという方法もあります。特に私のように、映るかどうかギリギリの状態でインストールをしようとする場合には、実際に投影して現物サイズを測った方がよいです。プロジェクター購入後、本物のスクリーンが来るまでは下図のような仮設スクリーンで凌ぎます。作り方は簡単で、世界堂や東急ハンズなどで画材用の B全サイズの 1m 厚スチレン板を 2 枚買ってきて、横につないでガムテープなどで壁面に固定するだけです。(実は困ったことに、これでも結構きれいに写ってしまいます。周囲からは「スクリーンなんか買う必要ないじゃん」と言われる始末。(^^;))

■ 周辺機器の購入

 プロジェクターの購入時には、おそらくケーブルやセレクタ類も同時に購入することになると思いますが、まともに買うと結構値が張ります。

◇ D 端子セレクタ

 通常の AV 機器向けのセレクタは結構高かったり、切替数が少なかったりするので、ゲーム機用の安物セレクタを買うのも一つの手です。

◇ D 端子ケーブル / S 端子ケーブル / VGA ケーブル

 10 m 近くのものになるとかなり値が張りますが、秋葉原のパーツ屋やインターネット通販などを利用すると、比較的安く揃えることができるはずです。

 ただし、D 端子ケーブルの長距離の引き回しについては注意してください。特に 720p の D3 映像などを迂闊に 10m 近く引き回すと、簡単にゴーストが発生します。安物の D 端子ケーブルの中にはシールドの甘いものも多く、私は買いなおすハメに陥りました。(購入しなおしたのはこれの 10m 品で、ヨドバシで \13k 程度でした。)

 おおよそこの程度の作業で購入機器が決定できると思います。あとは発注 & 設置を行って、幸せな世界へと旅立つことになります。こんな感じ。(汗)

 クリックで拡大可。画面の横幅は 1.2m ほどありますが、いやもー気分はゲーセン状態です。(汗)

実際に映してみて気付いたこと

 さて、使ってみるといろいろ導入検討時には気付かなかった/気付けなかったことも出てきます。いくつか Tips 的にまとめておきます。

■ 騒音と排熱について

 これはプロジェクターである以上やむを得ないのでしょうが、割とやかましい & 結構排熱します。騒音も排熱も、一般的な PC よりも遥かに大きいです。プラズマなどでもかなり熱が篭もるようなので、多少注意が必要かもしれません。

■ 画面サイズについて

 基本的にプロジェクターは「大きく投影する」ために導入するものではありますが、以下のようなソースでは、画面が大きいことがかえって不利になることもあります。

 また輝度の観点でも、小さく映すのは有利です。例えば投射距離 2m で最小サイズで表示した場合、1300 ÷ (0.985 x 0.555) = 2,378 ルクスとなりますので、部屋の明かりが付いていても普通に利用できる可能性が高い、ということになります。このことから、プロジェクター設置設計の際には「どの程度小さく映せるのか」についても調べておく方がよいです。

■ 映像のソースについて

 画面が大きければ画像のアラも当然目立つようになりますが、汚いソースを大画面で見るのはかなりつらいです。このため、いかに画質のよいソースを利用するのか、というのも重要になります。

 人により感覚は違うと思いますが、私の場合は「DVD ソースでも 16:9 70 インチあたりまで引き伸ばすと美しいとは言えない」という印象を持ちました。S 端子入力、安物 S-VHS ソースといったものを利用している場合、60〜70 インチあたりまで引き伸ばすとかなり見づらくなる、というふうに考えておいた方がいいかもしれません。少なくとも、通常時のソースは S 端子ではなく、D 端子あるいは D-Sub PC 入力あたりを念頭に置くことをおすすめします。

■ RADEON ビデオカードによる HDTV 出力

 先に書いたように、EMP-TW200 のような 720p プロジェクターの場合、XGA (1024x768) をネイティブ表示できるだけの縦方向のドット数を持っていません。このため、細かい文字はフォーカスがボケたような感じのものになります。

 RADEON の最近のカード(9600 など)は、DVI-I 端子にアダプタをつけると HDTV 出力が可能になるものがあり、これを利用すると、プロジェクターのドットに完全に合わせた出力(1280x720)が可能になり、文字も鮮明に映ります。……というわけで、RADEON 9600XT + コンポーネントアダプタを買ってきてテストしました。が、かなりいろいろと問題があります。他のページでも触れられていますが致命的なものは以下の 2 つ。

 また BIOS 画面なども表示されなくなります。結局、RADEON の出力のうち、DVI-I 端子をコンポーネント入力につなぎ、さらに D-Sub の通常の PC ケーブルもつないでおき、640x480 画面のゲームなどをするときには D-Sub 入力に切り替える、という使い方をせざるを得ません。特にゲームやアニメなどの映像関係の場合には、D-Sub から XGA で入力して表示したときと画質は全く変わらない、と思ってよいと思います。

 とはいえ、1280x720 のコンポーネント出力画面を使って Windows Media Video などの高解像度ソースを投影した場合にはとんでもなく美しいです。さすが HD ソース。早く日本のアニメもこの解像度が標準になって欲しいものですが、まぁまだまだ無理でしょうね。(^^;)

 結論としては、以下の通りです。

 なお、HDTV 出力に関してはいろいろとノウハウがまとまっているページも多数あります。以下のページも参考にしてください。

■ スクリーンについて(2004/06/23 追記)

 さて、ようやく工事ができて、06/23 に無事スクリーン導入。こんな感じです。AV ラックより下側までスクリーンが引き出されているあたりはご愛嬌。(←きちんと設計してから導入しましょう(笑))

 実際に投影してみると、確かにただのスチレンパネルとは明らかに映りが違います。(汗) 特に以下のような点は大きく違いました。やはりスクリーン導入は必須ですね。

 下の写真はスクリーンに投影したものを写真で取ったものです。写真だと分かりにくいかもしれませんが、先の写真と比べてみると黒が随分引き締まって見えます。実際、周囲の壁面とスクリーンの白地部分の明るさを比べてみると、先に示した仮設スチレン板とは違って、周囲の壁面と同程度には暗くなっていることが分かると思います。(それだけ黒が沈んでいる、というわけです。)

■ 明かりのついた部屋での利用について(2004/07/18 追記)

 先に、「プロジェクターは明かりの付いた部屋での利用は困難」と書きましたが、実際にいろいろ試してみると、『蛍光灯の光が直接、スクリーン面に入らなければ、それなりに見られる』ということも分かってきました。このため、私の場合は部屋の天井に遮光性のロールスクリーン(東急ハンズなどで入手可能)を設置しました。これを利用すると、完全に明かりを消さずともなんとか実用に耐え得るスクリーン輝度になりました。

 とはいえ、環境光(周囲の壁面反射などによってスクリーンに入ってしまう光)については、部屋の作りによってかなり変化するので、一概にはなんとも言えませんが。

■ 最終的な設置結果(2004/07/18 追記)

 結局、AV ラックもワイヤーラックに置き換えて、スクリーン全面を利用できるようにしました。設置結果はこんな感じです。ラックの高さが 10 cm 以上下がったので機器類はかなり詰め込み気味ですが、ワイヤーラックは設置柔軟性が高いので、こういう用途には便利ですね。

 ちなみに、下のゲーム画面は EMP-TW200 の輝度を最大にした上で(ダイナミックモードを利用)、ロールスクリーンを用いて蛍光灯からの光を遮った状態で撮影したものです。(クリックすると拡大できます)

 また、最終的には以下のように機器を接続して使っています。

端子 接続機器 用途
D 端子 DV-HRD10 BS デジタルと CS 110 度放送の観賞。1150i 固定出力にして利用。
XBOX プログレッシブの DVD 再生用。
PlayStation 2 ゲーム用。
コンポ―ネント端子 PC (RADEON 9600XT HDTV 出力) PC の画面出力用。
S 端子 X5 (SVHS デッキ) ビデオ出力。
DreamCast ゲーム用。
D-Sub PC (RADEON 9600XT アナログ出力) PC の画面出力用。4:3 ゲームをやる場合に利用。
コンポジット端子 (利用せず)  

■ ペーパースクリーン導入(2005/01/29 追記)

 さて、約半年間の常用で分かってきたのですが、確かにアニオタ的に 4:3 スクリーンの重要性は言うまでもないとはいえ、最近では 16:9 ソースも増えてきているため、いちいち EMP-TW200 のズームサイズを変更するのが面倒くさくなってきました。結果的に、

という使い方をするようになってきました。……となると、ちょっとでも大きな 16:9 スクリーンを入れておきたいというのが心情というもの。そんなわけで、ウワサのペーパースクリーンを導入してみました。

 このペーパースクリーンは 80 インチタイプでも高々 1.5kg 程度しかないため、恐ろしく設置が容易です。ちょっとしたカーテンレールでも十分支えられますし、私の場合は引き出しスクリーンの取り付けのために壁面に打ち付けた板にフックを取り付けてぶら下げました。設置結果はこんな感じ。

 気付いた点をざっくりまとめると、こんな感じです。

 ただ、送料込みでも \7,000 (80 インチの場合)という超安価、また 1.4kg という極めて高い設置性を考えると、超本格的なホームシアターを作るつもりでないのなら十分すぎると言ってもよい性能です。例えば 10 万円ちょっとの 480p 液晶プロジェクターを使おうというのであれば、おそらくこのペーパースクリーンでも十分でしょう。まず本格的なスクリーンを導入する前に、まずこのペーパースクリーンを導入してみて『試してみる』のはかなり良い選択ではないでしょうか?

最後に

 そんなわけで、設置はとにかく大変ではありますが、一度味わってしまうと二度と戻れなくなる世界です。自分で言うのもなんですが、「あーあ、ついにやっちまったよ、おい」みたいな感じ。っつーか、我ながらアホな子としか……

 夏のボーナスも出たことですし、是非皆さんもご一緒に廃人になりましょう。(汗)

参考リンク

 またこれ以外にも、スクリーンメーカーのカタログ(例えば OS のカタログなど)も見てみるとよいです。プロジェクターメーカーとは違って営業的なトーンが少なめで、堅めの情報が書かれているようです。


※mailto:akane@pasteltown.sakura.ne.jp (まちばりあかね☆)